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第183話 ゲリラ戦へ

 カトレインの父親に『その力を皆の為に使おうと思わないのか』と怒られましたが、使う気はないと拒絶しました。

 主人公は、『皆の為』と言いつつ一部の権力者の為に使われるだけという認識なので。

 その会話で喧嘩になる事を避ける為ではないですが、現在の状況を伝えると、皆、愕然としたようです。

 カトレインの父親は、こんな時なのに『その力を皆の為に使え』とか言って来る。


 それにカチンとしながら「俺が帰ってくる時に確認した限りだと、館の門は閉められていますよ」と話題をすり替えながら、今置かれている状況を父親に伝える。


 本来、都市を守っている城壁が破られた場合、皆は館に避難すると言う手順のはずなのに、門は閉まっていたし、探ってみた領主の気配があれだけ怯えた感じだと市民を見捨てる行動に出るのだろうと推測して言ってみたのだけど。


 「ば、馬鹿な。軍団兵が発生した時は、城壁が破られる事を警戒し、門の警備を厳重にしながら都市の人が逃げ込める様にしているはずだ」


 カトレインの父親は俺の発言が信じられないらしく、怒りながら返してくるが。


 「カトレインから話を聞いた限りだと、前の領主は立派な方だった様ですけど、今の領主は違うんじゃないですか。

  俺はそういう連中の下で嫌と言うほど嫌な目にあって来た、と言う事なんですけどね」


 そう、嘘の設定と本当の事を言うと外に飛び出していく、カトレインの父親。


 「ほ。本当なんですか?」とカトレインが少し青ざめた顔で聞いて来る。


 「さあ。今頃、門が開いていると良いけどね」


 そう言うと、カトレインも外に飛び出して行った。


 近くに館の様子を確認できる場所があるのかもしれない。


 不安そうな子供達をカトレインの母親とクトリアが宥めているのを見ていると、二人が帰って来た。


 一緒に移住をしようと言っていた人達も連れて。


 「どうだった?」


 そう聞くと首を横に振るカトレイン。


 「まあ、そうだよね」


 「なら、外に出ようと思って、皆さんを連れてきたんです。だから、今の内に」とカトレインは言うけど。


 「それは、今はダメかな」


 「えっ。どうして?」


 「奴らが移動を始めるまで観察していたんだけど、魔馬に乗ったグレーターオークやハイオークが60匹程度いてね。

  そいつらが、凄いスピードで右回りと左回りに移動しながらこの都市の事を観察していたんだ。

  だから、迂闊に外に出ると、そいつらに襲撃される」


 「そ。そんな」


 「まあ、そいつらの数を減らせれば、外に逃げるのも有りだとは思うけど、子供達の足ではオークから逃げられないでしょ。

  しかも、ハイオーク以上の個体の数も多い様だし」


 そう言うと、絶句してしまうカトレイン。


 そして「わ。私がもっと早く帰って来ていたら」と泣き崩れてしまった。


 ……。


 流石に、その姿を見せられると、俺も覚悟を決めるしかない。


 隠してある力を使ってでも。


 そう心に決め、彼女に近づき小声で「諦めるのはまだ早いよ。俺もやれるだけやるから」と、俺の覚悟を伝える。


 それでも「で。でも」と、カトレインはまだ悲観的な表情をしている。


 「斥候系の力は、探すだけじゃない。それは知っているだろう」


 「やっぱり、暗殺する力が」と、俺の言いたい事が分かったようだ。


 「正直に言うと、あのオークキングには通じ無さそうだったけどね。だけど他の厄介なオークを暗殺できれば、時間は稼げる」


 「はい」


 「じゃあ」と言った処で響く爆発音。


 魔力探索によると、魔法だ。


 こんな家の中まで爆音が届くほどの魔法とは、どう考えても不味い状況だろう。


 皆で外に出て、俺は屋根の上に登って城壁を見ると上の方が崩れた城壁とそこから立ち上る煙。


 声に出さずに少知に聞く。


 『あれは何だ?』


 【爆裂魔法の爆裂です】


 少知スキルのお陰で事態が判明したので下に降りて皆に伝えておく。


 「オークに爆裂魔法を使う奴がいる。それに城壁の一部が破壊されそうだ。どうするか決めて逃げた方が良い」


 「そ。そんな」と、また絶望的な表情になるカトレイン。


 そう言っている間にも、爆裂魔法の音が響く。


 そうしている内に、鐘の音の鳴らし方が5連続に変わった。


 多分、城壁が破られそうだと言う警鐘なのだろう。


 「お。俺が館の門を空けさせる。いや。開ける筈だ。館に行くぞ」とカトレインの父親が言ったので、皆移動を始めるようだ。


 なので、二人を呼び寄せる。


 「俺はゲリラ戦を仕掛ける。だから、二人にこれを渡しておく」と錬金効果の付いた指輪を幾つか渡す。


 「複数の指輪の使い方は覚えているよね」


 そう聞くと頷いている二人。


 「持っているのがバレたら取ろうとする奴がいるだろうから、出来るだけバレない様に使って。

  ああ。だから手袋の上からするのではなく、手袋の下にしておいた方が良い」


 そう言うと、魔獣(魔大熊)の革手袋を外し直接指に指輪をして手袋をはめ直してくれる。


 「攻撃魔法は、自分から離れた場所に発生させて撃つことも出来るんだけど。

  ああ。練習させておけばよかった。

  風魔法と魔力魔法なら、イメージで他人に見えにくく出来るかもしれない。

  これも試しておけば」と頭を抱えていると。


 「ダイスケさんは、大丈夫なんですか?」とカトレインが聞いて来る。


 クトリアも不安そうだ。


 「さあ。正直、ヤバイと思うけど、まあ死なない程度にやってくる」


 「で。でも」とカトレインが心配そうに言うので。


 「正直、俺一人なら逃げられるから、そんなに心配しないで自分達の事を考えて」


 そう。俺一人なら。


 いや。数十人程度でも亜空間魔法の転移で逃げられるはずだ。


 だけど、多分真面目な彼女達は、それに納得しないだろう。


 だから、転移で逃げるにしても、やれる事をやった後じゃないと。


 そう決断してカトレインを見ると、少し冷静になったようで「はい」と頷いている。


 「じゃあ、行ってくる。

  くれぐれも注意して。

  注意するのはオークだけじゃないから。

  人もだからね」


 そう言って二人の元を離れ、オーク達に向かう事に。



 子供達をなだめている母の元に行くと「あいつは逃げたのか?」と父が話しかけてきた。


 「いえ。ゲリラ戦を仕掛けて時間稼ぎをしてくれるそうです」


 「そ、そんな事が」


 「でも、オークキングは倒せないだろうって言っていました。早く逃げないと」


 「あ。ああ」そう言って父は皆を誘導して都市の中心の館に向かい始めたけど。


 ダイスケさんは大丈夫なのだろうか。


 私は強くなりたかった。


 家族を守る為に。


 そして、少しは強くなれたのに。


 でも、間に合わなかった。


 なら、ダイスケさんと出会えた事に期待するしかない。

 主人公は、オークの軍団にゲリラ戦を仕掛けるようです。

 まあ、何時もの様に隠れながら魔法による奇襲なのでしょうが。

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