第181話 軍団兵発生
防衛都市を出て亜空間部屋をつくり、そこでスキル上げと武器造りを行い、一休みしました。
感知系のスキルの警鐘が気になったからですが、無事に都市からの移住を終えられるでしょうか。
さて、目が覚めたけど、まだ外は暗い。
一応、外に出て状況を確認し軍団兵はまだ発生していない事を確認。
亜空間収納に取り置きしてある果物を食べながら、昨日のスキル上げ成果を確認する。
目標としていた、偽装と秘匿スキルはLV16に出来た。
格納箱や回復魔法や生活魔法も目標には達した。
流石、一時間だけとは言え取得経験値が10倍になる成長の雫だ。
経験値増加スキルのレベル上げは意識していなかったので、残念ながらそれは上がらなかったが。
他にも、切り札である魔力魔法はLV20に。
レベル上限を解放しないとレベル21にはならないので途中でスキル上げを止める程順調だったかな。
火魔法も水魔法もレベルが1上がり18になった。
レベルが上がる程、魔法の力や制御力は上がるし有効射程も延びる。
だから、もっと集中してレベルを上げればよかったのかもしれないが。
時空間魔法もレベルが上がり19となったし強化は順調だけど、不安の方が大きい。
と言うのも、何となく俺達がこの都市に居る間に軍団兵が発生するような気がするから。
でなければ、これ程各種スキルの警鐘はならない筈だ。
まあ弱い敵なら大量に発生したとしても経験値になるから良いのだけど、守らなければならない子供とかが居るからな。
やはり安心できる状況ではないと、亜空間部屋から出て、全力で隠れたままMPの残量に注意しながらスキル上げを続ける事にする。
職業が鍛冶師なのが心配なので、転職出来るだけの職業経験値も欲しいのだけど、それは諦めた方が良いだろう。
いや、居た。とジャイアント3匹の群れへ狩る為に向かった。
ジャイアントの経験値で魔法戦士に転職して、更にレベルを上げてから都市へと向かう。
こんな事なら星4の職業になり、星4になると貯められる10億の職業経験値を使って魔力魔法のレベル上限を開放して新しい魔法が欲しかった。
魔力刃だったかな。
多分数日あればできる事なんだけど。
いや。成長の雫を使えば一日でも可能かもしれないのに。
もちろん、その後星4の職業で転職まで持って行くのは大変だろうけど、そう言う強化方法もあった。
そう準備不足を悔やみ、強化方法の選択を間違えたかも等と考えながら都市に入りカトレインの家に向かう。
勿論、今日も門の使用料を1万GAU取られてしまったが。
カトレインの家に向かい、家の敷地に入るとクトリアが出てきて中に入る様に。
もう既に話し合いは始まっているそうだ。
居間に入ると、皆真剣な顔をしている。
人数を数えると、俺とクトリアを除くと36人だからこれで全員か。
「彼は何だね」と農夫っぽい人族の中年男性が聞いてくる。
「今回の移住の護衛を頼んでいる冒険者です」とカトレインが紹介すると。
「強いのかね」と少し心配そうに聞かれたのだけど。
「はい。私が知る限り、かなり」とカトレインは自信をもって答えている。
う~ん。期待が痛いかも。
そんな説明が終わると、また話し合いが始まる。
う~ん。
やっぱり、故郷と言える場所を離れるのは嫌なようだな。
この世界だと食料生産に手間を掛けずに済む理にしてあるそうだから、土を農業向けにする必要は無いらしいけど、それでもよりよい作物を作ろうと努力したり、畑から石を取り除いたり等、何かしらしているだろうし愛着もあるだろう。
「お金は私が用意してあります」
そうカトレインが言うと、皆ビックリしている。
「少なくとも、家族ごとに白金貨が移住に使えますから、しばらく生活は出来ますから」と言うと皆顔を見合わせている。
そんな中、カトレインはふと俺の方を見て視線が止まった。
そう。俺は顔をゆがめていた。
これが軍団兵発生か。
元々、地中から噴き出すマナにより空間中のマナが濃くなっていた場所に、更に周りのマナが吸い寄せられていく。
これじゃあ、どんな魔物が発生するか。
「どうしたのですか。ダイスケさん」とカトレインは俺に声を掛けて来るけど。
「なんか気配がまた変わった。どうもおかしい」と魔力探索や危機探索で分かった内容を隠しながら伝える。
「えっ。でも、次の発生までは未だ5年以上ある筈だし」とカトレインは言うけど。
「もし、過去のそのデータが魔物の討伐をした上での期間なら、魔物の討伐をしていない場合の期間の参考にはならないかもしれない」
「どういうことですか」と、カトレインは恐る恐る聞いて来る。
その答えが良くない事と分っているのだろう。
「本当かどうかは知らない。だけど、俺は魔物の討伐をしていないと、次の発生までの期間が数分の一から数十分の一の期間になると聞いた事もある」
「えっ。それって」
ああ。俺とカトレインでフラグを立ててしまったな。
いや。探索系でもう異常事態が発生している事は分かっていたのだから、フラグなんて関係ないのだけど。
集中したマナが魔物を大量に発生させる様を、俺は魔力探索、危機探索、気配探索と察知で感知しながら、どうすべきなのか考えてみたのだけど、答えは出ないよな。
「ここだと、軍団兵発生時にはどこに避難するの?」
「とりあえず、外の城壁があるので、各自の家で待機ですけど」と、カトレインはまだ事態を把握できていない。
「その城壁が破られたら?」
「都市の中心にある館に収容してもらうのですけど」と、俺の様子を怪訝そうに見ているが。
「そう。なら準備しておいた方が良い。俺はちょっと見て来る」と、俺は二人を死なせない為の行動を開始する事にする。
「えっ?」
カトレインの困惑と同時に、鐘がなり始めた。
時代劇の火事の時の鐘に近いかな。
3回鐘を鳴らして間をあけて、また3回鳴らす。
それが多分軍団兵発生の時の鐘の鳴らし方なのだろう。
「そ。そんな。軍団兵が発生するなんて」と呟くように言うカトレイン。
周りの人達も騒ぎ始めた。
「カトレイン。これを」
そう言って、愕然としているカトレインに格納箱から用意した物を出す。
鋼鉄の槌(+1、軽量化*1、硬化*1)を一つ。
大人用の魔獣(魔熊)のコート(+1、温度調整*1、サイズ調整*1)8着と(+1、温度調整*1)18着。
子供用の魔獣(魔熊)のコート(+1、温度調整*1、サイズ調整*1)11着、(+1、温度調整*1)16着を、無理やりカトレインに持たせる。
「槌は軽量化が掛かっているから、所有者であるカトレインが持つと軽く感じる筈。
だから、前より使いやすい。
でも敵に対して軽量化の効果はないから、そのつもりでいて。
コートは、襟の内側に丸の印が付いている物が、温度調整以外にもサイズ調整が付いているから、サイズが合わなさそうな人に支給して」
そう言っても混乱している感じのカトレイン。
でも、現状ではそれは許されない。
「全部、君に譲ったから、君が配るんだ」
そう言うと「はい」とカトレインは少し混乱から抜け出したようだ。
「クトリアは、カトレインと一緒に居て」
「はい」と不安そうだけど、クトリアも返事をしてくれた。
「じゃあ、行ってくる」
そう言って、家を飛び出した。
ついに恐れていた事態が発生してしまったようです。
主人公は、無事に依頼を達成できるでしょうか。