第163話 冒険者達と魔牛
ニクロス市へ向かう途中のハイリッヒ市でも、魔牛を50頭売りました。
料理スキルを使っていない分、安くなりそうですが、幾らになるのでしょう。
魔牛を50頭ほど売りに出したら、買取価格を決めるのに少し時間が掛かるそうだ。
なので、バレない様に時空間魔法等のスキル上げをしていると、十数分で明細を持った店主らしき人が来た。
「今回はありがとうございます。
全て買い取らせていただける良い状態で、一頭42万Gで、50頭分と言う事でよろしいでしょうか?」
そうニッコリと笑いながら言ってきた。
値段交渉をした方が良かったかなと思いつつ「ああ」と了承する。
すると袋に入れて渡される21枚の白金貨。
「また、機会があればお願いいたします」と丁寧にお辞儀をされ言われるが。
「なかなか、街道沿いに魔牛は出ないから難しいけどね」と、簡単ではない事にしておく。
それに「当然でございます」とニッコリ応じてくる店主。
そして「本日はありがとうございました」との挨拶を受けて商店を後に。
そのまま都市も出たけど、追跡してくるような気配はなかった。
流石、比較的良心的な商店。
今日の売買の前哨戦としては、どうだったのだろう。
これで2100万GAU。
2億1千万円相当。
武器とか防具とかアクセサリーの値段が、前世で言う銃器程度の値段なら良いのだけど、戦車や戦闘機と言った兵器並みの値段だと全然足りないんだよな。
まあ、買える範囲内で良い物を買って帰るか、自分で造る参考にしよう。
ハイリッヒ市から更にニクロス市を目指す。
もう、今日は街道上に居る魔物を除き、魔牛以外は狩らない事にする。
と言うか、街道沿いには殆ど魔物がいない事に、改めて驚いたかな。
前の時は、お金になりそうな魔物を街道から外れて狩りに行っていたので、街道を移動した訳ではなく気が付かなかったのだけど、これ程戦闘が無いとは。
と言うか、転生してきた時に護衛二人だけで荷馬車が移動していた位だから、その程度なのか?
そう言う理なのかな?
まあ、魔物を発生せるマナの薄い場所に街道は造られているとは聞いているけど、そんなに都合よくマナの弱い場所が続くとも思えないんだけどな。
そんな事も考えながら、更に魔牛61頭の群れを見つけて狩り、更にニクロス市に向かっていると、また魔牛を見つけた。
でも、冒険者と戦闘中の様だ。
う~ん。他人がどう戦っているのか見ておいた方が良いのかな。
そう思ったので、上空からの奇襲に気を付けながら少し小高い丘に登って見てみたのだけど、あれヤバいんじゃないかな。
47頭の魔牛の群れに25人の冒険者が挑んでいるのだけど。
あれって、魔法で倒さないと集団闘牛状態だからな。
Eランクだからそれなりに動きは早いし、重いし力は強いし、角は防具も貫きそうな強さだし。
皮もそれなりに堅いし筋肉の塊でもあるから、ある程度の武器でないと弾かれたりするし。
弱い冒険者が、買取価格の魅力に負けて無理している感じだよな。
彼らの叫んでいる内容からすると、一頭は倒さないと帰れないって感じか。
だったら、罠くらいは用意しておいて、それで倒せよ。
隠れたまま、魔牛達に翻弄され逃げ回っている冒険者達に近づく。
すると、一人の冒険者が転んでしまった。
ああ。パターンだ。
それに突っ込んでいく魔牛達。
全力で動くと隠形等は解除される。
なので、解除されない程度の動きで魔牛の前で絶望の表情をしている冒険者の首根っこを掴み柔らかそうな地面の方へ投げる。
そして、魔牛達とすれ違いざまに一頭の魔牛の後ろ足2本をミスリルの剣の鞘に魔法障壁を付与し、その剣の鞘で叩き折る。
俺が倒してしまうと、俺の所有物になってしまい彼らが売ると犯罪者になる恐れがあるから、これで良い筈だ。
魔牛達は、強者が居る事に気が付いたようで、俺が逃げられなくした牛を残して集団で逃げていく。
前は、それでも向かって来ていたのだけど、この群れは逃げるタイプの様だ。
周りの探索では、今すぐに血の匂いに引かれて来そうな魔物も居ない。
ならば、とその場をそのまま離れる。
こう言う情けが良い方向に向かうとは限らないのだけどね。
見殺しにはしたくなかったので、問題ない程度の事はした。
後は、血の匂いで魔物が寄って来ない様に素早く処理して都市に逃げ込めよ。
そう思いつつ、その場を離れた。
危なかった冒険者を助けました。
弱い冒険者達は、皆お金に困っているのでしょう。