第159話 注意不足
また、死にかけました。
なので、反省しながら、どう強化するか考え、明日の買い物についても何を買うべきか考えています。
対グリフォン戦を反省し、攻撃力アップ、防御力アップについて考えた。
次は、感知能力アップについてだけど。
これは、新しいスキルを取得すれば良いと言う話でもない。
気配探索も、危機探索も、魔力探索も、察知も、どれもグリフォンの奇襲に反応していなかった。
だから、熱探索とか悪意探索を身に付けたとしても、今回の事態は避けられなかった。
ならば、地味に感知系スキルのレベル上げを繰り返しておく。
それとも優先して上げる感知系スキルを決めた方が良いのだろうか。
あ。時空間魔法に結界があったな。
結界は防御に特化していない分、色々と便利に使えるけど、魔法障壁に比べると防御力は弱いし設定が面倒と思っていたのだけど。
でも、敵以外は通すと言う設定にして弱めに張っていれば、結界が破壊された事で危機が感知できるか。
うん。結界を使った感知能力アップを実施してみよう。
まあ、敵に接近するたびに張り直す手間とかありそうだけどね。
設定が細かい分、直ぐに張り直す設定とかもできるかもしれなし、敵を感知するだけの結界とかも出来るかもしれないから、試してみよう。
次は隠密力アップだけど、これも現状一気に向上させる手段は無さそうだ。
まあ、先ほど検討した結界に遮音とか匂い洩れ防止とか付けておけば、多少は隠密力も上がるのかもしれないが。
でも、今回検討するのは、魔力障壁の事。
グリフォンは、魔力障壁を認識していたはずだ。
でなければ、魔力障壁破壊後にあれほどスムーズに俺を攻撃できない。
つまり、グリフォンが魔力障壁を認識できていなかったのであれば、今迄散々倒してきた魔鷹の様に無防備な状態で魔力障壁にぶつかって地上に落ちていたはず。
だけど、魔力障壁の存在に気が付いていたから、おそらく嘴で魔力障壁を破壊し俺を爪で組み敷いた。
なら、隠形、偽装、秘匿で、魔力障壁を張っている事を隠したらどうなるだろう。
魔力障壁は、そもそも無色透明に出来るので、他のスキルで隠すような事はしていなかったのだけど、魔力を感知できる者には見えている、と言うのは俺自身が魔力探索で知っている。
だから魔力障壁の存在を、隠し、偽り、認識できなくしていたら、ひょっとしたらグリフォンも魔鷹と同じ様に処理出来ていたかもしれない。
まあ、どうなるかは分からないけど、それぐらいはしておくべき、と気が付いた。
先ほども確認したけど、MPの回復力が上がったから、MPを使う隠蔽等を追加で出来る様になったと言う事でもあるのだけど。
まあ、全力で動くと解除される隠形等のスキルだから、思った通りにならない可能性もあるか。
ちなみに、自分の使っている魔法について隠す事は、隠形等のスキルLV6から可能だったのだけど、隠れながらの攻撃魔法使用時くらいしか、やっていなかった。
明日からは、攻撃以外の魔法である魔法障壁にもそれもしておこうと言うか、今そう設定をしておくか。
これで、今日より明日からの方が安全になる筈だけど。
そう考えながら居間へと向かった。
居間には勉強中のカトレインが一人いる。
「今日は、来られないのかと」と一応確認と言う感じで聞いて来る。
「ああ。待たせてしまって御免ね。
色々と反省と言うか対策を検討していたから」
そう言って、彼女を抱き上げて寝室へ。
今日もとりあえず、後ろから撫でたりキスしたりしながらの魔力操作。
心を弾ませながらカトレインを感じていると「本当に危険なんですね」と話したいと言う合図があったので、愛撫を中止。
「本当にそうだね。嫌になるよ」と言いつつカトレインを抱きしめる。
「冒険者が、こんなに危険だなんて」とカトレインは俯きながら呟く。
その様子に、あまり怖い真実を伝えない方が良いのかなと思いつつも、死なせたくないので忠告をする事にした。
「う~ん。今日の敵は都市に居ても危なかったかもね。
空を飛ぶ上にあんなに強いんだから」
「そうなんですか?」と、カトレインは俺の顔を覗き込んでくる。
そのカトレインに「この辺の都市では、空を飛ぶ魔物の被害が都市内部で出ないの?」と質問をすると。
「見張り台で警戒している騎士団、衛兵団が監視して、空飛ぶ魔物が居たら警告の鐘を鳴らしますから」と、几帳面に教えてくれる。
「そっか。でも、全然気が付かなかったんだよね。
あんな魔物だと、監視していても気が付かない危険がありそうだったけど」
「人数を使って目視と言うのが、静かに襲ってくる魔物に対しては有効だと言われていますけど、それも通じない魔物も居るそうです。
幸い、この辺にはあまり居ないようですけど」
ああ。そんなのに狙われたんだ。
「まあ、そんなに簡単に魔物達を討伐できれば苦労はしないか」
「はい。でも、昨日も今日も、自分の認識が甘すぎたって嫌になります」と言いつつ、また俯いてしまうカトレイン。
「まあ、国単位で鍛えられている人になると、あんなの何でもないのかもしれないけどね」
「それは、そうなのでしょうけど」
「でも、今日も生き残れた。愛しいカトレインを抱きしめる事が出来る」と言いつつ、本当に抱きしめる。
そんな俺に対し「……。そんな価値があるのでしょうか」とカトレインは呟くように答える。
「ん。あると思ったから一緒に生活しているのだけどね」
そう言うと、話題を変えて来るカトレイン。
「父に冒険者になると言った時、叱られたんです。
そんなに甘くないって」
その時の事を思い出したようで、カトレインが少し険しい表情にかわる。
「お父さんは冒険者だったの?」
「いえ。騎士団に居て、魔物の討伐や都市の防衛をしていたのですけど、負傷して退役したんです」
「そっか。なら余計に娘を冒険者にはしたくなかっただろうね」
「ええ。大喧嘩して出てきたのですけど、私が浅はかだったと今では理解してしまいました」と、また俯いてしまう。
なので、励ます意味を込めて「まあね。でも、その先に行くのでしょ」と聞くと。
「はい。強くなります。絶対に」と、強い意思が込められた瞳で俺を見て来る。
その様子が気になったので「ちなみに、どうして強くなりたいの?」と、聞くと黙り込むカトレイン。
前はお金が必要とか聞いたような気がしたけど、それは違うのか。
ああ。俺が勝手にそう思い込んでいたのか。
でも、それ程的外れでもなさそうだけど。
何か理由があってお金が必要なのか。
まあ、言いたくないなら言わないだろうし聞いてみるか。
「お金が必要とか言っていたけど、それが理由とも思えないし」
「どうして、そう思うのですか?」
「お金目的なら、とっくに心が折れるような状況でも戦い続けるって感じだからね。二人とも」
「守りたいものがあるんです。でも、守る為の力が無い」と、カトレインが強めの口調になる。
俺が知らない処でも、悔しい思いをしているのだろう。
でも「そっか。力と守りたいモノか。難しいな。今日も、キリがないって思ったし」と俺の認識も伝えておく。
「キリがない?」
「俺レベルでは、幾ら強くなろうと、どうしようもない魔物が多すぎるって実感した感じかな。
今日は何とか生きて帰って来られたけどね」
「ダイスケさんレベルでも、そうなんですよね」
「まあ、何とかしていくしかないさ」
「はい」
その返事を合図に、彼女への愛撫を始める。
ちゃんと、スキルを取得する為の訓練も忘れずに。
性技スキルのレベル上げも忘れずに。
あ。『やり過ぎには注意』を忘れていたかも。
主人公は注意不足の様です。
まあ、調子に乗り易いのでしょう。