第113話 ゴブリンとの死闘
冒険者ギルドでハリーさんと会い、魔熊の異常発生は終わったと確認出来ました。
となると、二人の希望通り狩りに行く事になるのでしょう。
買い取ってもらう魔物の戦利品を倉庫に出し、ハリーさんとの会話を終えて冒険者ギルドの受付近くに行くと、クトリアとカトレインが男の冒険者達に囲まれている。
それを横目に受付嬢の処に行き、昨日の買取の代金1320850GAUと今日の分の受け取り証を受け取っていると二人がやって来た。
二人と合流して冒険者ギルドから出ようとすると、舌打ちとかが聞こえて来る。
察知スキルも、嫉妬や妬みの感情を伝えて来る。
まあ、いい女だからな。
しかも最近は、前あった刺々しさとか消えているし。
ギルドから出た処で「知り合いなの?」と、確認すると。
「前からイヤラシイ目で見て来ていた連中です」
と、少し嫌そうなカトレイン。
「そっか。冒険者ギルドで二人っきりにしない方がよかったね」
そう少しホッとしながら言うと。
「いえ。そこまで酷い訳でも」
と、クトリアはそこまで気にしていない感じだけど。
「男の妬みも怖いからな。
何もして来なければ良いけどね」
と注意を促しておく。
目をつけられ、探索系スキルで監視されると、俺の力がバレルかもしれないし。
「そ。そうなのですか」
と、そう言う事は考えもしていなかった感じのクトリア。
「まあ、正確には人族が怖いと言った方が良いのかもしれないけどね」
と、言うと二人は黙り込んだ。
俺が裏切られて故郷を出てきたって言ってあるしね。
冒険者ギルドに居た連中が、後を付けていない事を確認し、
「さて。警報が出ていない処を見ると、狩りに行って大丈夫そうだ。
今日は狩りに行くんだよね」
「はい」
そう声を合わせて言う二人を連れて、東側の門へと向かった。
今日は、東門の方から狩りへ行く。
と言うのも、俺よりハリーさんの方が索敵能力は高いと推測しているから。
4級職の忍びの能力は、高い筈だ。
しかも、実戦経験では比べ物にならないだろうし。
なので、昨日ハリーさん達が魔物を討伐したこちらが安全だろうと、こちらを選んだ。
都市から3キロ程離れてから南へ降りてもらう。
何時もより都市に近いのは、やっぱり異常発生しているらしい魔熊の事が気になるからだ。
だけど、流石にこの程度の距離だとそれなりに強い冒険者に会いそうになるので、それを避けながら南へ。
結局、都市から7~8キロ程度離れた位置から南に下りる感じになった。
最初の敵は、ゴブリン12匹。
それが目視できるところまで来た時にカトレインが、
「私達も戦ってはダメでしょうか?」
と厳しい表情で言ってくる。
「前みたいに上位種は居ないみたいだし、1対1になる様に数を減らしても良いなら、やる方が良いとは思うけど」
そう、俺が心配だなと言う心情を感じてもらえる様に意識しながら言ったのだけど。
「やっぱり、実際に戦った方が、剣技とかは手に入り易いのですよね」
と、俺の心配はクトリアには伝わらない様だ。
いや。気が付いていても、自分の望みの方を優先したのか。
そう思いつつも、
「ああ。実戦の方が得られる経験値は多いからそうだろうね。怖いけど」
と、更に心配だと直接は言わずに伝えたのだけど。
「やらせてください」
と、強い意志を込めた目の二人に見られる。
その様子に諦めて、
「ああ。気を付けて」
と、言いつつ近づいて来ていたゴブリン10匹の頭を鋼鉄の槍で跳ねる。
その様子から逃げ出そうとしたゴブリンの前に立ち逃亡を封じた上で鑑定し、毒とか呪とかが付いた装備が無い事も確認。
二人が戦うに任せる。
俺は、その様子を見ているだけで、恐怖で体がすくんでしまう。
だけど、二人の意思を尊重するしかない。
前の毒に麻痺させられた失敗があるので、先読みスキルの効果範囲に彼女達も入れる。
それで、恐怖心は減ったので、冷静に見る事が可能になった。
二人に出会った頃の彼女達のレベルは、12とか13とかだった。
それが、今はLV20か。
ゴブリンはFランクの魔物の中でも弱い方だ。
鑑定スキルはLV17だから未だ戦闘中の相手の詳細を鑑定することは出来ない。
でも、簡易鑑定相当となり、レベルは分かるようになっているのでレベルの低い奴を選んだ。
それでも都市の周りに湧くゴブリンよりレベルは高い。
そう思いつつ様子を見ているのだけど、星1の村人LV20のクトリアとは互角程度か。
星2の信者LV20のカトレインは、ステータスで上回っているから押し気味だ。
クトリアが、押し負けて武器を飛ばされる。
そして、彼女自身も倒され、座り込んだ状態に。
そのクトリアに武器を掲げ襲い掛かるゴブリン。
クトリアが押し倒され、上乗りになったゴブリンが武器を振り落とそうとしたところで俺が頭を真っ二つに。
「諦めたら駄目だ。
目を守る為でも無いのに目をつぶるのも。
噛みついたって良いし、目に指を差し込むのでも良いし。
あすこを握りつぶすのでも良い」
と、男にとっては怖い事も伝えておく。
「あ。はい」
血塗れになったクトリアに生活魔法の洗浄を掛けて、カトレインの方へ集中する。
すると、カトレインの方はステータスで勝っていたのもあり、彼女の方がゴブリンの武器を弾き飛ばした。
そこで、止めのはずなのだけど、脅えるゴブリンに躊躇して動きが止まるカトレイン。
まあ、そう言うパターンもあるよね。
躊躇したカトレインに体当たりをし、首の辺りに噛みつくゴブリン。
そのまま、カトレインは押し倒されてしまった。
石を拾い、それを打ち下ろそうとするゴブリン。
それに抵抗しているけど。
石が打ちおろされようとするところで、ゴブリンの首をはねた。
同じく、血塗れになったカトレインに生活魔法の洗浄を。
血が毒となるらしいからね。
二人に、回復魔法の治療と回復も使っておく。
二人とも、ゴブリンに敗北してしまうとは。
Fランクでも弱い方のゴブリンに負けてしまう二人。
二人を強くすると言う約束が叶うまで、先は長そうです。