第109話 魔雷牙熊
魔熊が多い気がする。
それに注意をしながら狩りをしていたのですが、厄介そうな魔物に見つかってしまった。
主人公は、逃げながら戦う準備をするようです。
気配探索スキルによる感知と現状から推測すると、俺と同程度か上の索敵能力を持った魔熊。
しかも、魔熊より強い気配を纏っている。
ああ。
ハリーさんとの会話がフラグなったんだ。
やばいと、魔物を探しながら奴から逃げる為に駆けだした。
全力で逃げると偽装等が解除され、他の魔物からも襲われる危険がある為、全力では走れない。
だから、そう遠くないタイミングで奴に捕まる。
それでも、ゴブリン14匹、オーク8匹の集団を見つけ、一方的に魔法で倒し戦利品を亜空間収納に回収。
2級職だし、経験値増加スキルのお陰でゴブリン14匹で転職が可能。
3級職の魔法戦士に転職し、オーク8匹を倒してLV24だ。
行けるか。
と言うか、周りの状況からすると、それで戦わないと駄目な状況だ。
亜空間収納から鋼鉄の槍を出し、開けた魔物の居ない場所で奴を迎え撃つ。
奴は、直ぐにやって来た。
戦闘中だし距離も有るので、鑑定では名前しか分からないけど、魔雷牙熊?
なんだ、そりゃ?
2つランクが上がっている魔熊だとすると、Bランクかよ。
やばい。
その危機感から並列思考スキルを起動し、LV18となり18発起動できるようになった魔力矢18個を2セット起動、必中撃と念じ奴に打ち込む。
距離があり過ぎるので様子見の攻撃だけど、奴は熊のくせに機敏に動き、半分以上避けられ、当たった魔力矢もダメージを与えていない感じだ。
それでも、もう一度魔力矢2セットを撃ち込むと、同じ様に機敏に動き避ける。
名前に『大』が付いていないからか、異常な大きさでは無いけど、それなりに大きいのにあの機敏さか。
それでも接近した分、避け難くなったようで半分程度は当たったがダメージを与えているのだろうか。
いや。ダメージが無いなら避けないはずだ。
もっと魔力を込めてと思ったところで、奴が咆哮した。
いや。咆哮したように見えたけど、口から雷を放ってきた。
その雷は、魔力障壁を破壊し、焦って目の前に掲げた俺の持っていた鋼鉄の槍に直撃し槍と俺の体を伝わり地面に逃げる。
痛い。
俺は痛みと麻痺で座り込んでしまう。
回復、回復、回復、回復。
なんとか意識が残っていたので回復魔法を唱え、動けるようになった時には、奴が目の前に。
全力で避けると、奴は驚いたようにこっちを見ている。
ああ。俺の俊敏はステータスアップ、各種スキルで結構な数値だろうからね。
いや。
短時間で動けるようになったのを驚いたのか。
奴は、もう一度雷の咆哮ではなく雷のブレスで攻撃してきたが、その挙動を確認し目の前の地面に鋼鉄の槍を刺して避雷針にして距離を取る。
それと同時に、魔力矢18発を2セット打ち込む。
当然、必中撃も唱えた。
奴は咆哮途中で、避ける事もできず、36発の魔力矢を首の周りで受ける事に。
首の周りに負傷して、雷のブレスはもう出来ないかもしれないとも思ったが、油断してはダメだろう。
案の定、奴は手の爪に雷をまとい接近戦を仕掛けて来る。
奴の目の前に無色透明の魔力壁を張り、その魔力壁にぶつかり勢いが弱まった奴に、また魔力矢の2セットを撃ち込むが、素早く避けられ首以外にしか命中させられない。
もう、首廻りの皮は傷だらけで十分な守りではないはずなのに、それでも個体の強さか、大量に血を流しながら俺に接近しようとしてくる。
俺は、後ろ向きに走りったり、斜めに走ったり、魔力壁で奴の移動の邪魔をしながら、多弾頭化している火弾や水弾を撃ち込み、接近させない様に。
時空間魔法LV16で覚えた結界も無色透明で奴の目の前に張り、奴の接近を阻みながら逃げ回る。
待てよ、結界か。
今のレベルだと1つしか作れないが、並列思考で2つ同時に作れる。
ならばと、結界を俺にだけ見える様に、滑らない様に設定し、空中に足場となる結界を作る。
その結界は斜めに板状に作り、その結界の上に乗り結界の上を走り地上50メートルほど上に移動した後、結界を解除し足元に新たな結界を。
真下くらいに来た奴を空中から見下ろしていると、悔しそうに睨んでいたかと思ったら、凄い勢いで飛び上がってきた。
俺は、それを冷静によけて足場の結界を解除。
もう一つの思考で新たな足場となる結界を作りそれに乗る。
奴は俺の数十メートル上まで飛び上がり、まだ上昇している。
でも、空中を移動は出来そうにない。
いや。油断はダメだ。
空を飛んだり空を移動出来たりするスキルがあった。
と、一つの思考を警戒に残し、魔力矢に魔力を込め無防備に飛び上がった奴の首を目掛けて打ち込む。
魔力矢が着弾し消えるまでは次の魔力矢が打てないので、一発ずつだけど火矢も水矢も同じ場所に連続して撃ち込む。
奴が、引力に魅かれ落ち始めたのを確認し、警戒に使っていた思考も使って同じ場所を魔力矢で攻撃しようとしたところで、奴が体をひねり雷のブレスを。
しまったと思いつつ、逃げる途中に考えていた結界を目の前に張る。
電気を流れやすくし地面に刺さった状態の避雷針とする結界だ。
念の為に水魔法の水壁も地面から地上50メートルまで上に伸ばし、もう一つの避雷針も。
避雷針にと思った結界も破壊されず、雷を地面に逃がしてくれる。
正直、電気を流れやすくした程度の結界は破壊され、水の壁は蒸発させられるかも、とも思っていたのだけど、威力不足の様だ。
そうか。
もう瀕死の状態だからか、MP不足か、喉の怪我が原因かは分からないが、全力の雷攻撃は出来なかったようだ。
こちらを睨んでいる奴に、並列思考で36発の魔力矢を何度も首に撃ち込む。
轟音を立てて地面に落ちた時は、首はほぼ千切れて息絶えていた。
「はあ。何とかなったけど」
思わず、そう呟いた。
すると、奴は突然掻き消えて宝箱に。
ああ。Bランクだから、それなりの確率で宝箱が出るのか。
まあ、戦利品向上スキルがないと、それでも滅多に手に入らないだろうけど。
大きくて横長の宝箱には、魔雷牙熊の魔石B、魔雷牙熊の皮、大銀貨10枚、銀貨20枚、中級エリクサー1個、中級万能薬1個、下級エリクサー1個、成長の宝珠、成長の雫、スキルの雫、ミスリルの剣、ミスリルの槍、ミスリルのインゴット4個、魔法の袋(中)が。
ああ。成長の雫どころか成長の宝珠まである。
高ランクの魔物の戦利品はありがたいけど、死んだら意味がないんだよな。
平原での戦いは、魔物の強さが一定ではない為、本当ならダンジョンでレベル上げすべきっていう話だったか。
はあ。
神官技スキルに聞いた処、回復スキルでの治療だけでは後遺症が残る様な体の傷みはないそうなので、エリクサーは使わなくて良さそうか。
その事に安堵しながら、次の魔物狩りに思考を移す事にした。
魔雷牙熊に勝てたようです。
でも、運が良かった点もありそうで。