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第103話 約束と責任

 主人公がスキルを十個以上持っていると言うと、二人は落ち込んでしまいました。

 となると、それを慰め、好意を持ってもらいたいところですが。

 二人を落ち込ませてしまった夕食の後、まだ訂正と削除を終えていなかったスキルを得る為の指導書の訂正を終えた。


 おかげで、何時ものスキル上げは出来ない。


 代わりに、今朝やった一年保存薬包紙の大量作成による経験値獲得だ。


 朝と同じく良い物をMPの残量を見ながら200枚づつ作製。


 ステータスウィンドウを見ると、若干朝よりMPの減りが少ないかな、程度だ。


 量産スキルがLV11を超えたので期待したのだけど、レベルアップによる大量作成時の消費MP減少効果はたいした事はなさそうかな。


 作成の方の消費MPまで減少させる事を期待したのだけど、LV11程度ではそうでは無いのだろう。


 いや、最初からそう言う理ではないのかもしれない。


 まあ、MPの残量は生死を分ける可能性もあるから、これでも消費MP減少効果は無いより全然良いのかな。


 しかし、短時間で出来るこのスキル上げ。


 時間が無い時のスキル上げは、これで良いのかもしれない。


 薬包紙は兎も角、他の生産だと材料の確保が大変そうだけどね。



 さて、今日のスキル上げも終わった処で、落ち込んだ女性に優しくして、愛して、その心をゲットだ。


 なんて、馬鹿で下種で普通の事を考えながら居間に行くとクトリアが居る。


 やっぱり、まだ落ち込んだ感じだ。


 そのクトリアの手を引き寝室へ。


 彼女を膝の上に横向きに座らせて彼女を抱きしめる。


 「なんで落ち込んでいるの?」


 そう聞いても、落ち込んだ感じのまま何も答えてくれないクトリア。


 「『私達とは違う』とか言って、また俺に怒られるとでも思っている?」


 そう言うと、表情が動いた。


 と言う事は図星かな。


 表情分析スキルのお陰で、スキルを使っていなくても他人の表情を読む能力は上がって来ているのか、それとも彼女の事をより深く理解した結果、感情が読めるようになったのか。


 「まあ、何か一つでも力を手に入れるべきだね。

  クトリアは」


 「本当に、可能なんですか?」


 そう言って悲しげな眼で俺を見て来るクトリア。


 「はあ……。

  出来ないのを騙して、俺が君を抱いていると」


 「ち、違います。

  でも、自信が持てなくて」


 そう言って、また俯いてしまうクトリア。


 「とりあえずは転職か。

  戦士技なんかが手に入れば、近接戦闘に関しては多少自信が持てるだろうし」


 「あ。今日だけで、経験値が28万も手に入りましたから、それは遠くないうちに可能なんですね」


 そう俺に縋りつく感じで聞いて来る。


 「何で疑問形なのかが良く解からないけどね」


 そう言うと「あ。はい」と少し落ち着いたようだけど。


 「でも、どうすれば貴方の様に強くなれるのですか」と結局聞いて来る。


 「は~。さっきも言ったし、もう気が付いていると思ったんだけどな」


 「えっ」


 「今現在、俺が強いのは、俺の力じゃない」


 「そ、それは」と、まだ意味が分からないと言う表情で俺を見ているクトリア。


 「俺だって村人から始まったんだよ」


 「はい」


 「それを弱いとか使えないとか言わずに、将来を考え、複数の星3の職業すら転職出来るだけの経験値をくれた人達が居たんだ。

  足手まといでしかなかった俺にね。

  しかも、多分取得経験値を増やす成長の雫とか成長の宝珠すら、使ってくれている」


 俺については嘘だけど、この世界の普通であるべき事を話す。


 「……。だから、私達に優しくしてくれるのですか?」


 「いや、まあ、君達が欲しいからだけどさ。

  だけど、それだけでは無いと言う意味だとそうだね」


 その言葉に複雑そうなクトリア。


 なので、別の事も言っておく事に。


 「こんな事は言わない方が良いのかもしれないけど、君の故郷は酷いんじゃないかな。

  誰だって最初は弱い。

  それを皆が生き残れるように、協力して皆で強くなるって考えられないんだから」


 「そ。それは」と何かを言いたそうにするクトリア。


 でも、言い辛そうだ。


 彼女とより関係を深める為には聞くべきと判断し質問を続ける。


 「違うの?」


 「はい。男性だと私程度にレベル上限が高くても、諦めずに転職出来るまで鍛えてもらえます。

  勿論、その途中で亡くなる人は多いのですけど、少なくとも戦士程度になるまでは……」


 「ああ。そっちか」


 「はい。レベル上限が高い女性は、皆の足手まといだから黙って家庭に入れって」


 嫌な事を思い出しているのだろう。


 俯き夜着を握りしめながら言うクトリア。


 人族が滅びない為には、長い期間が必要な、子供宿し、体内で育み、産むと言う行為が出来る女性を守ると言うのは必要な事なのだと思うけど、それが歪んで来ていると言う事なのかな。


 そう結論付けて、この世界に対する嫌味を言う。


 「で、横暴な男が割り当てられるって感じか」


 クトリアの体が一瞬硬直し何も返事をしない処からすると、肯定と言う事なのだろう。


 「なる程ね。

  その為に無能とか色々と洗脳されているのか。

  可愛そうに」


 そう言って頭を撫でてあげる。


 すると、驚いた顔でこちらを見て来るクトリア。


 やっぱり、あまり異性に優しくされた事が無いのかな。


 その様子が可愛くて、


 「まあ、こんなにいい女なら、騙してでも囲い込みたいか」


 と思わず本心を言ってしまう。


 「そんなの酷いです」


 そう強い口調で言いつつ潤んだ目で俺を軽くにらむクトリア。


 「でも、欲しいんだもの」


 そう言ってクトリアの目を見つけ返すと、彼女の方が目をそらした。


 「絶望するのも、諦めるのも、まだ早いからね。

  クトリア」


 「はい」


 「俺も頑張るから」


 「はい」


 改めて、クトリアを強くすると約束してしまった。


 本気でした約束には責任が生ずる。


 それに、約束を破れば俺が多分転生者だ等と密告され、どうなるか分からない。


 約束を守っても、力を見せる以上、密告される可能性はあるか。


 そんな風に考えていても、落ち込む彼女に希望がある事を伝えずにはいられなかった。


 約束を交わした唇と唇を重ねる。


 今日も、クトリアと一つに。


 は~。落ち込んでいる女性も色っぽい。


 体は兎も角、精神の年齢は中年なのに、会話が終わるまで我慢するのは大変でした。


 真面目にやれ。オッサン。

 愁いを帯び、色っぽい女性。

 主人公は、何とか我慢し、事に至った様です。

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