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第1話 強制転生

 異世界転生モノです。

 両親の住む田舎から離れ、就職先の首都で働き始めて10数年。


 結婚も出来ず、出世も出来ず、明るい未来も感じられないまま働く毎日。


 今日も残業代無しで午後9時まで働いて、やっと借りているアパートに帰って来た。


 はあ。


 高校・大学時代にもっと頑張っていればな。


 それは勉強ではなく女性関係だけど。


 女好きなのに、女性に興味が無いなんて感じで行くんじゃなかった。


 学生時代に結婚相手を捕まえておけば。


 いや。合コンを頼める人材をいっぱい作っておくだけでも全然違ったかもしれないし。


 まあ、所詮後の祭り。


 モテなさそうな男しかいないブラック気味な企業で働く毎日じゃ、接待関係の女性以外と出会えないんだよ。


 まあ、俺に責任がない訳じゃない。


 もちろん、給料が絶対的に少ないと言うのが前提であるのだけどさ。


 風俗に通う金やゲーム・漫画・小説と言った趣味に使うお金の一部を貯金に回していれば、婚活アプリとかで結ばれる事だってあったのかもしれないけど。


 貯金80万だぜ。


 アラフォー(40歳前後)なのに。


 ああ。可愛くて優しい彼女が欲しい。


 それも無条件で俺を愛してくれる。


 でも、それはもう諦める時期が来たな。


 いや。俺の外見・性格・能力では、そんな事は最初からあり得ないのか。


 赤ちゃんとか小さな子供を見ると、可愛いじゃなくて切ないって感じるようになったし、もう末期なのかもな。


 そんな事を考えながら風呂に入り、数少ない楽しみの一つである寝酒を飲んで寝ようと目をつぶったら、見知らぬ光だけの場所に居た。


 「あれ?」


 「やあ、大野倉大輔君」


 と、男性とも女性とも言える人間離れした美貌の人が、ギリシャ神話に出て来るような衣装を着て、光の上に浮いた神殿みたいな場所の中心で光を放ちながらこちらを見下ろしている。


 俺は、と言うと普段なら見える筈の手とか足とかすら見えないし、宙に浮いている感じだ。


 なんだこれ?


 そう混乱していると。


 「君の知識に合わせて言うと、君には死んでもらったんだ。

  物質である体を持ったままだと、ここに来てもらえないから」


 「えっ」と俺は状況が分からず声を出してしまう。


 しかし、俺の驚きは無視され、


 「君は、今は魂だけの状態でこれからある世界に行ってもらう。

  そこで、新たな体を得て生き抜いてもらう」


 そう冷徹に告げられたので、


 「ちょっと待ってください。貴方に殺されたって事ですか」


 と、事態が把握できないままだけど、黙っていられずに聞くのだけど。


 「君には、幾つかの力が渡されるから大丈夫。

  まあ、君の生きていた日本とは比べ物にならない程、不条理で危険な世界だから油断は禁物だけどね」


 と相手にされない。


 なので「話を聞いてもらえない」と相手の会話の合間を縫って言うと。


 「ん~。君凄いね」と少し驚いた感じで光を発している人が言う。


 「は?」


 「君らの概念でいうと私は神って感じなんだけど、その神って感じの私に対し委縮しないで話しているでしょ。

  結構すごい事だよ」


 「不味かったですか?」と少し恐縮しながら言ってみると。


 「不敬と言えば不敬だけど、君の状況ならしょうがないんだろうね。

  強い神が良い資源を独占しないようにと、ランダムにしか人材を確保できないのだけど、久しぶりの当たりかな」


 と、少し嬉しそうに言われると褒められた感じで俺も嬉しいけど、俺って資源なんだ。


 でも、そこに拘っていても不味いだろうと思ったので、


 「良く解からないのですが?」


 と、素直に疑問を聞いてみる。


 「君、ゲームもやっていたし異世界転生の知識はあるんでしょ」


 「はい。気分転換にやったり読んだりしていましたから」


 「その異世界転生だから、諦めて頑張ってね。

  ユーザーインターフェイス(システムの操作手順)はゲームに近いから大丈夫。

  と言う事で、転生してもらおうかな」


 そう『神って感じ』と言った存在が言ってくるけど、異世界転生モノの知識から判断して、このまま転生は不味いでしょ。


 「いや。異世界転生にも色々なパターンがあるから、情報が無いと」


 と、その事を指摘したのだけど。


 「う~ん。説明が面倒なんだよね。

  行きたくないって駄々をこねる奴もいるし」


 と、嫌そうに言われても俺も困るんだよな。


 なので「情報が無いと転生しても直ぐ死んだりして、転生させた事が無駄になりますから」


 と、必死にお願いしてみる。


 「そうなんだけどね。

  って、凄いね。君。

  私に意見するなんて」


 「すみません。

  でも、殺された上に無理やり連れて来られた人の気持ちにも配慮してください」


 と言いつつ、頭を下げる感じでお願いしてみる。


 「う~ん。でも、そんなに死んだ事に忌避感無いでしょ」


 「えっ」と驚いている俺をよそに、神らしき存在は説明を続けてくれる。


 「私達にとって死とは魂の破壊・消滅・初期化だからね。

  君も物質の殻を脱いだ魂だけの状態で、ちゃんと存在しているから、殺されたって感じはしないでしょ。

  それに、君が前居た世界は神の力や魂の残骸等から新しい魂が造られる再生工場及び基礎作りの場。

  そこから選ばれて魂だけの存在になって移動と言うのは、当たり前の事だし」


 その発言に絶句しながら、色々と考えていると。


 「何処まで信用していいのかって感じのようだね。

  うん。生き延びる為には必要な良い反応だ」


 と、嬉しそうに言う神らしき存在。


 「ありがとうございます」


 褒められた気はしないけど、一応お礼を言っておく。


 なんて言うか、アッサリ心を読まれている感じもあるから、無駄な事なのかもしれないけど。


 「ハッキリ言っておくと、もう君はあの世界では最初から存在しなかった事になっているから大丈夫だよ」


 それって、大丈夫って事なのかな?


 そう思っていると、


 「君を育てる為に掛かったお金は増額されてご両親に払い戻されて老後の資金になるからね。

  まあ、年を取って騙されるとかあるかもしれないから、絶対とは言えないけど、君には両親の面倒を見てくれそうな兄弟も居たでしょ。

  それに養っていた家族も居ない」


 いや。確かにそうだけど、だから選ばれたって事?


 「死亡して肉体から離れた魂以外を選択する場合には、そう言う人を選ぶ事にはなっているから」


 と、心配性だなって感じで神らしき存在が言って来る。


 本当なのだろうかとは思うけど、疑った処で今更どうしようもないか。


 そう思っていると、


 「新しい世界で、全力で生きてもらう為にその辺はちゃんとしてあるよ。

  それこそ、前の世界に戻ったところで居場所がないって追い込む為でもあるし」


 俺が厳しい現実に絶句していると。


 「で、君に行ってもらうのは、バトルロイヤル的な世界とか、蟲毒の世界って言えば良いのかな」


 と、話を進め始める神らしき存在。


 もう神様って言って良いのかな。


 前に居た世界では八百万の神を認めていた地域だったし。


 そう思いつつ、


 「蟲毒って、毒持ちの虫、両生類、爬虫類を大きな壺に入れて殺し合わせて、生き残った個体を呪や毒に使うとかいうやつですか?」


 と、疑問を聞くと。


 「そこまでではないけどね。

  正確には、生存競争の激し目の世界で戦い成長した強い個体を僕らの先兵とかにするのが目的と言った方が良いのかな」


 それって蟲毒の世界とは言わない気がするけど、と思いつつ、、


 「神の先兵と言うと天使とかですか?」


 と、疑問に思った事について質問を続ける。


 「適性によって色々だね」


 「と言う事は、神様も人だったと言う事ですか?」


 そう聞くと「どうして、そう思うの?」と少し驚いた感じの神様。


 俺の考えている事を全部読める訳でも無いのかと思いつつ、


 「なんて言うか、神様には人間臭さがありますし、さっき『私達にとって死とは』と俺と神様を一括りにされたのが何か変でしたから」と言うと。


 「ふ~ん。魂の力は強い上に、勘か注意深さもある。

  でも、飽きだんだよね。同じ事の繰り返しだし」


 と、心底嫌そうに言われる。


 「部下に任せられないのですか。説明」


 「ああ。君から見て神って感じの存在だけど、私でもマダマダ下っ端だし、決められた枠内で存在しているって感じだからね。

  だから、異世界への召喚者自身が説明すると言う理・ルールに縛られているんだよ。

  面倒な事にね」


 と、今度はあまり嫌そうでは無いけど、何か含むモノがある様な感じだ。


 でも、それは無視し、


 「では、ルール通りに説明、お願いします」


 と、土下座をしてお願いする感じで言ってみたのだけど。


 「そっか。ここまで魂の力が強いのだから、あれを渡せばいいか」と、少し嬉しそう。


 だけど俺は何故か少し嫌な予感を覚えながら、


 「あれ、と言いますと?」と聞き返すと。


 「私は人から神になったのだけど、神になった時に過去の経験からスキルを作ったんだよね。

  でも、強力なスキルだから魂の力が強くないと使いこなせないスキルになってしまったので、死蔵していたんだ。

  けど、あれならスキルが説明してくれるだろうし」


 「良く解からないのですが」


 「ああ。私は神って感じで全知全能でしょ。

  まあ、実際は人のレベルから見ればと言う話で、そんな事無いのだけどさ」


 と、何故か少し悲しそうに言う神様。


 「まあ、それは置いておいて、亜神・半神で中知中能とか半知半能。

  君は人だから、そこまでの力ではないと言う事で少知少能。

  そのスキルをあげるから」


 と、ニコッと笑ったけど、その奥にある感情が怖い感じだ。


 「いってらっしゃ~い。

  期待しているからね~。

  大丈夫。

  君が行くのは緩めの世界だから~」


 「え~」と助けてくださいの意味を込めて叫んでみたが。


 気が付くと、周りに少し木とか生えている草原の中の神殿の廃墟かなと言う場所に座り込んでいる。


 「これって大丈夫なの?」


 思わずつぶやいた処から、異世界での生活が始まった。

 チートスキルをもらって転生したようですが。


 切りの良い処まで、毎日投稿させてもらいます。

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