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特選男子!~あべこべ世界でモテモテになりたいっ!!~  作者: みぞれパンダ
第1章 特定選別研修 金見山高校編
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第36話 ゴールデンウィーク その7

本日2話目です。

第36話 ゴールデンウィーク その7


―宮本明日香―


「あ!ねーちゃだ!おかえりっっ!!」


その声を聞いたとき反射的にしまったと思った。

妹の明日美が家にいるとき、私が家に帰ると飛び込んでくるのだ。

小学校低学年とはいえ、子供が走りこんできて飛びついてくればそれなりの衝撃だ。


あの朽がその程度で怪我なんてするはずがないが、それでも万が一ということもありうる。


「明日美!ストップっ!」


しかし、そうはいっても人間は急には止まれない。


身長の低い明日美が勢いよく朽に抱き着く

身長の高い朽からしてみれば、明日美の頭はちょうど、股間の位置にある。


イコール


「ふぎゅっ!!!」


……朽は聞いたこともない悲鳴を上げて卒倒した。



―旭野朽―


眼が覚めた時の股間が縮み上がるほど冷たい感触に凄まじい勢いで飛び起きる。

どっさりとおかれた氷嚢の感触であることにとてつもない安心感を覚える。


せっかくのあべこべ世界で玉無しなんて笑えない。


冷や汗なのか脂汗なのかわからない汗をぬぐうとそこにはよく似た3人がいた。

顔面蒼白な表情までも一緒なのに笑ってしまいそうになる。


「あ、あの!朽大丈夫だったから!ちゃんと確認したら血も出てないしうっ血もしてなかったから!!」


「悪意があってのことではないのです!どうかMPGへの通報だけはご勘弁を!」


「あ、明日美がわるいの!ごめんなさい!だから、ねえちゃとママに酷いことしないでっ!」


捲し立てる様に喋る三人を見るとやはり親子なんだなぁ

なんて、のんきなことを考えて……




おいちょっと待て明日香!

お前今なんつった!?

What!?

いや、ナニを見たかはわかるんだ!

Why!?

母妹の前でなんちゅうトンでもプレイしてくれてるんですかねぇっ!


「だ、大丈夫よ!ちょっといつもより元気なかったけど……その、結構な物をお持ちで」


やかましいっわっ!!!



そんなわちゃわちゃに気づいた姫子さんが部屋に突入してきて

事情がばれて、しこたま怒られたのいうまでもないだろう。


「朽様は!特選男子なんですよっ!それをあろうことか!?朽様の朽様に頭突きなど!?」


オーケイ!

ステイ!

姫子さん!


昭和の下ネタみたいな言い回しはやめよう!


「まったく!うらや……けしからん!」


もうやだっ!この世界の女衆!!!!



―宮本明日奈―


初対面でとんでもない事故があったものの彼がとりなしてくれたおかげで、事なきを得た。

普通の男性なら激怒からの通報だ。


とんでもない大事になるかもしれなかった。

しかし、それでも彼はそうはしなかった。


それだけでも彼の人柄がうかがい知れるというもの。


まぶしい。

太陽のような青年だ。


決して実在するはずのない物語の中の甘く優しく美しい青年。


先日の事の次第を聞いて、胸が張り裂けそうだった。

それでも、彼が明日香を守ってくれた。


まさしく、娘にとって彼は王子様だった。


うらやましい。

だが、それ以上に感謝と尊敬の念が浮かび上がる。


彼が彼こそが娘を悪夢から救い出した。

私たち家族……いや、私にできなかったことを彼は出会って間もない娘のために成した。


確かに贔屓目に見ても確かに娘はきれい育った。

それでも、彼ほどの男性がなぜ明日香のためにそこまでしてくれたのか……。


端的に言えば不安だったのだ。

また別の男に利用されているのでは?

そんな、妄執にさえとらわれていた。



でも大丈夫。

明日香や明日美。

私や姫子さんに接する態度からも、彼があんな男と比べ物にならない善良な人であることは分かった。



最後に……。

彼が帰宅する前、私は思い切って聞いてみることにした。



「あ、あの朽様?」


「お義母さん。どうか朽とお呼びください。僕は明日香さんと結婚を前提にお付き合いしています。」

「将来、家族になる方に様呼びなど、落ち着きませんから」


にこやかにはにかむ彼のすねをげしげしと蹴る娘にひやひやする。


「誰のっ!母親をっ!口説いてんのよっ!」


別に口説いてはいないと思う。

しかし、そんな風に嫉妬されて少しだけうれしくも思う。

私もまだまだ捨てたもんじゃないってことね。


「あ、あの朽君!」


「はい。何でしょうお義母さん」






「む、娘で……明日香で本当にいいの?あなたなら、他にもっと素敵な……」


「明日香がいいんです。ほかの誰でもないお義母さんの娘の……明日香がいいんです」



こちらを真っすぐ見据えた視線に嘘偽りの陰りは一つもない。

真剣なまなざしに思わず、涙が出そうになる。



「そ、そう。ありがとう……これからも明日香をよろしくね」


「はい!」


元気よく返事する彼のすねをまだ蹴る娘。


それでも、先ほどよりは幾分も軽くなったその悪態にさえ、また泣きそうになった。



あぁ、ありがとう朽君。




娘を


家族を


私を


救ってくれて。

いつも、更新と同時にいいねをありがとうございます!

長い休止期間を経てもまた続きを書こうと思えたのは皆さまの応援のおかげでございます。


今後もゆっくりとではありますが更新していきたいと思いますので

是非とも評価/感想をお待ちしております。

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