第28話 事後処理
本編再開です。
活動報告にもある通り
基本的には1日1話投稿(閑話は除く)の毎日更新となります。
今後も拙作をよろしくお願いします。
第28話 事後処理
―旭野朽―
「朽さん」
佐山をぶん殴ったその日。
俺は母さんにしこたま怒られた。
それはもうすごい怒られた。
「男性同士でもめると後が大変なのです。以後きちんと気を付けてください」
その言葉で説教が締めくくられると、母さんは少し不快気な顔で
「その、宮本明日香とかいう女子を今度連れてきなさい」
それだけ言うと、母さんはどこかに電話しに行った。
おそらく、今回の件で衆人が撮った画像や動画が出回らないように、本家に助太刀を要請したのだろう。
その点は感謝しなくちゃいけない。
「朽様。まだ調査中ですが……」
そんな切り出し方で姫子さんが今回の件のあらましを説明してくれた。
佐山浩平は何者かに情報提供を受けていたという。
あいつとの会話の中で何度か出た“あの人”という奴だろう。
その肝心の“あの人”については佐山が錯乱状態にあり聞き出せずにいるそうだ。
佐山の尿からは異常な量の薬物反応が出たらしい。
致死量寸前の薬物。
あいつの摂取したものはこの世界特有の薬物だったようで、その効果は欲望の肥大化。
嗜虐欲の肥大化。
佐山浩平という男の残虐性が顕著だったのも薬物のせいだったのかもしれない。
しかし、だからと言って許せるものではない。
宮本への行いやその他の女性に対する暴力も何ら正当性を持たない。
しっかりと医療刑務所で罪を償ってもらおう。
というのも、薬物を常用していたらしく、効果が切れても廃人コースだと姫子さんが言っていた。
きな臭い。
漠然とした不安というか予感だが、この一件の裏で何か糸を引いている人物がいる様な気がした。
サスペンスドラマの見すぎだろうか……。
そんなこんなでやっと日常に戻ってきた。
いつもの学校。
いつものクラス。
いつもの席。
少し違うのは隣のクラスメイトだろう。
「何よ?」
彼女は少し顔を赤らめて俯いた。
「いや、別に宮本さんはきれいだなって思って……」
「は、はぁぁあ!?ば、馬鹿じゃないの!?」
ほんのりピンクだった顔色がみるみるうちに朱に染まる。
彼女が動揺したようにバタバタと顔を隠す。
少しもしないうちに動きがピタリと止まって
「……そのありがと。く、朽もかっこいいわよ」
「……!?」
「ま、まって!い、今のなし!なしっ!」
で、デレたぁあぁぁあぁあ!!!
そうそうそう!これですよ!
やっぱりツンの後はデレがなくちゃ!
古事記はやはり正しかった。
「あ、そうだ……明日香って呼んでもいいよね?」
「べ、別に好きにしなさいよ!」
ちっ、もうデレタイム終了か。
「今度さうちに来てくれないかな?」
「へ?」
「母さんに挨拶してよ」
「「「「「!?」」」」」
クラスの雰囲気が凍り付いた。
「あ、あ、あ、ああ挨拶ぅー!?」
ついでに明日香も壊れた。
その後、加奈子と美波にこってり事情を絞られることになったのは言うまでもないだろう。
―山科須美―
ダンダンダンダン
トレーニングルームに響く拳を打ち付ける音。
サンドバックが激しく揺れる。
「……」
今日何セット目かわからないほど打ち込んだサンドバック。
拳がひどく熱を持っている。
あぁまだ足りない。
あの男、旭野朽
あの女、鬼塚姫子
奴らを八つ裂きにするにはまだまだ力が足りない。
私は負けた。
ご主人様の計画も失敗に終わった。
旭野朽の蹴りは強力だった。
あの性格、あの実力。
今後絶対にご主人様の計画の妨げになる。
鬼塚姫子の体術も強力だった。
手も足も出なかった。
奴も妨げになる。
万難を排さねばならない。
意識を集中してトレーニングに戻ろうとすると、近くに置いてあった携帯が鳴る。
画面には敬愛すべき主人の名。
春野仁彦の文字。
あぁ愛しのご主人様。
私が私だけがあなたの剣になります。
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