第22話 灰被りの秀才 その6
かなり短いですけど本日はここまで
明日で灰被りの秀才は終わらせます……多分!
第22話 灰被りの秀才 その6
花雨というには、酷く激しい雨だった。
夕立のようなその雨はなぜか降りやまない。
曇天模様の空から絶え間なく大粒の雨が打ち付ける。
宮本明日香が学校に来なくなって4日目の朝の事だった。
―日野美波―
あの女が学校に来ない。
それ自体はとても喜ばしいことだ。
別段、あれを強く憎んでなどいない。
確かに目に余る言動は多かったけれど、それすらも朽様はどこか楽し気に会話していた。
あれとの会話を楽しむのならば、私が責めることはない。
身辺調査を頼まれたとき、彼が自分の手で報復を望んでいるのだと思っていた。
現に面子をつぶされた私の周りの男性はそういった行動に出ていた。
だから彼も同じだと、そう推し量っていた。
しかし、どうにもそうではないらしい。
彼はあいつ……宮本明日香との会話を楽しんでいた。
それは時に、深山なんとかとの会話よりも、そして私の会話よりも。
彼は楽しんでいたのだ。
その点は確かに彼女が憎い。
彼女との会話で浮かべる私には向けられない微笑み。
彼女との会話で浮かべる私には向けられない苦笑い。
彼は彼女と喋るとき程度の違いはあれど笑っていた。
私に向ける一辺倒の作り笑いではなくて、本当の笑顔。
あぁそうかこれが嫉妬という物か……。
―深山加奈子―
最近、どうにも朽君の様子がおかしい。
どこか憂鬱気だし、悲しそうだし、ため息は多いし。
そんな彼を見ると私まで悲しくなってくる。
心なしかそんな気配を読み取ってクラス全体が暗い雰囲気だ。
私に何かできることはないだろうか……。
運がいいだけの私に何か、どうにか、なんとかできないだろうか?
最近はそんなことばかり考えている。
ねぇ宮本さん早く帰ってきて。
じゃないと朽君が笑ってくれないよ……。
―宮本明日香―
呼び出しの内容は酷く単純な物だった。
特待生の取り消し。
一般庶民である私への事実上の退学通知だった。
度重なる旭野朽への粗暴な対応が問題視されてのことだそうだ。
仕方ないと思った。
思ってしまった。
彼は優しい。
そして、彼の周りも優しい。
彼の優しい世界に私はいらない。
『彼の優しい世界に私はいらない。』
この一文を捻り出すのに焼酎を4杯も飲まなければなりませんでした。
思春期の乙女が本当に言いそうな言葉を考えるにあたり
私は酔っぱらうことを選択しました。
なぜなら、みぞれパンダは酔うと乙女になるからです。




