第19話 灰被りの秀才 その3
次の記念閑話は、評価者が30人の段階で投稿します。
もし、まだ評価されていない方がいらっしゃいましたら
ぜひぜひ!ぜひぜひ!よろしくお願いします。
第19話 灰被りの秀才 その3
―宮本明日香―
「は?なんでいるの?」
カウンターの左右にそれぞれ、日野さんと深山さんを座らせてコーヒーを片手に笑みを浮かべる旭野朽。
私の発言に信じられないものを見るように店内の女性の視線が集まる。
「ん?二人と少しお話しようかって事で帰りに寄ったんだ。宮本さんは?ご飯?」
能天気に質問を投げてくる彼に少しイラっとした。
「私はバイトよ。ていうかサッサと帰ってくれない?お店忙しくて迷惑なんだけど?」
私の発言に日野さんが席を立ち上がろうとする。
そんな彼女を旭野朽がまぁまぁと手で押さえて落ち着かせていた。
「ちょ、ちょっとちょっと!」
そんな光景を前にレジカウンターから店長が私の腕をつかんで厨房の奥に引っ張っていく。
「え?なに?宮本さん彼と知り合いなの?」
「あ、はい。クラスメイトですけど?」
「はい?宮本さん女子高じゃなかった?」
「あぁ、彼特選男子なんですよ」
「と、特選男子!?」
店長の発言を聞いて厨房のバイト達が色めき立つ。
「あ、あの私そろそろ着替えてくるんで、今忙しいですよね?」
「え、えぇそうね。今日もよろしくね。」
店長との会話を強引に打ち切り、控室に移動する。
手早く制服に着替えてから店舗に出る。
憂鬱だ。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
マニュアル通りの定型句で終わりの見えない列をさばいていく。
おそらく、この有り得ない量の客たちはほとんどが彼目当てだ。
外でほとんど見ない男性しかも美形で男子高校生。
少しでも近くで見たい。
彼女たちの気持ちはおそらくほとんどがこれで占められているだろう。
「お店も忙しそうだしそろそろ帰ろうか?」
彼がそういうと店内の女性も、列に並んでいる女性も、皆絶望的な表情を浮かべた。
「宮本さん!」
店長の呼びかけに思わずうんざりした表情を浮かべる。
「なんでもサービスするからもう少しいてもらえないかって!お願いできないかしら?もう少しで売り上げが過去最高更新しそうなのよ!」
「……それどうしてもやらなくちゃだめですか?」
「お願い!ほんと!来週エリアマネージャーが来るのよっ!宮本さんの時給も上げるから!」
「やります」
これは店長の必死な形相が怖いから即答したんであって、決して時給につられた訳じゃない。
気は進まないが、彼の近くまで行って不愛想に告げる。
「……店長がサービスするから、もう少しいてくれないかって」
「へ?いいの?やったーありがとうね宮本さん。それじゃぁコーヒーのおかわりもらおうかな」
「別に……店長に言って……それにあんたのためじゃないし」
「ふふふ、そっかそっか。宮本さんは毎日バイト?」
「えぇそうよ基本的には」
お店の都合でいてもらうのだから接客業として最低限の受け答えを義務的にする。
「それじゃぁたまに宮本さんに会いに来てもいいかな?」
少女漫画にでも出てきそうなセリフに思わず面食らう。
旭野朽がわからない。
不愛想で失礼なこんな女になぜそうも興味を抱くのか?
本気でわからない。
「……別に好きにすれば?あんたは客だし、あんた目当てで売り上げも上がるし」
でも悪くない。
こんな私にも優しくできる彼に少しだけドキッとしたのは、私だけの秘密だ。
―旭野朽―
聞きました?聞きましたよね?
『別に……店長に言って……それにあんたのためじゃないし』
『……別に好きにすれば?あんたは客だし、あんた目当てで売り上げも上がるし』
素晴らしい!特に
別にあんたのためじゃない。
これは、ツンデレの伝説的ワードだ。
もうもはや代名詞といっても過言ではない。
このワードを引き出せただけで、美波に身辺調査を頼んだ甲斐があった。
“宮本明日香”
自宅は金見山高校最寄り駅から徒歩20分のアパート。
母と妹2人の4人家族で普段は次女と家事を折半して生活している。
母親は町工場で金属加工作業に従事しており、家計は本当にギリギリなようだ。
そのため、彼女がアルバイト代を全額不足分に充てている。
アルバイト先は駅前のハンバーガーチェーン。
幼少の頃からかなりの努力家で成績はかなり優秀。
その分、プライドも高く同級生とはよく衝突していた模様。
一方で家族愛は強いようで、数少ないバイトの休みはもっぱら家族との時間に充てている。
4年前に男性とトラブルを起こして男性保護団体から取り調べを受けた。
おそらく彼女が男性に対しても、苛烈にふるまうのは4年前の出来事が原因ではないかと結論付けた。
しかし、現状で4年前何あったの?なんて聞こうものなら問題がこじれるのは明白だ。
男性保護団体の事件記録に踏み込むのはさすがに日野さんでも難しいらしい。
……どうしたものかなぁと考えながら、ひとまず今日は同級生二人との会話を楽しむことにした。
小話~本編に書くほどのものではない細かいお話~
日野美波は入学(編入)試験を受けています。
国府四家からの圧力に屈したくなかった
学校上層部(日野派とは別派閥)が
んじゃ試験受けて今年の主席入学と同じくらい
点数よかったら入学認めるぜっていう抵抗をしました。
美波は全教科満点をたたき出し、もちろん代表挨拶は
私ですよね(暗黒微笑)と脅したとか脅してないとか
学校を信用できないとかで目の前で採点させたらしいですよ




