第16話 クラスメイト達 その2
これで金見山高校編に登場するヒロインが全員登場しました。
次話からはもう少しテンポよく進めると思います。
第16話 クラスメイト達 その2
―旭野朽―
矢継ぎ早の自己紹介はHRを担当する教師が来たことで終了になった。
驚くべきことに教師は男性だった。
生まれて初めて見る生の男だ。
……美人教師を期待していたのにっ!
「はーい。席についてくださーい」
生徒が席につき落ち着くのゆっくり待って彼は口を開いた。
「今年度、このクラスを担当する加藤裕也だ。ちなみに妻はもう5人いるので君たちの気持ちには答えられません」
スーツをぴっしりと着こなしたスタイルの良い彼は至極残念そうな表情でそう告げた。
前世であればどれほどイケメンであっても、同様の発言をすれば顰蹙を買うこと間違いなしの自己紹介でも、この世界ではまだまともな方だ。
彼は若干、やさぐれたというか草臥れた雰囲気の中年だ。
これはこれで需要があるのだろうけど、決して万人受けするタイプではない。
しかし、そんな自信満々の自己紹介に何人かの女子生徒がわかりやすく落ち込んでいるのが見えた。
やはりこっちの世界にも教師萌えというのはあるのかなんて考えてしまう。
「ま、といってもこのクラスには特選男子の旭野君もいるし、こんなおじさん眼中にないだろうけどね」
その自虐に先ほど落ち込んでいた何人かの生徒が首をぶんぶん横に振っていた。
加藤先生はにこやかな表情でそういった生徒にお礼を言うと、黒板に今日の予定を書きだしていった。
そこには教科書の引き渡しや、校内設備の案内など、いかにも入学式の日のHRといった感じ予定が書きこまれていたが……。
“特選補助決め”
そんな文言が書かれていた。
特選補助。
男性が快適に女子高での生活を送る上で、様々な補助を行う者たち。
学校公認のパシリです。
とは歯に衣を着せない加藤先生の言である。
「んじゃ定員は二人な希望者は~」
教室にいるほとんどの生徒が手を挙げた。
唯一手を挙げていないのは、深山さんとは逆隣りの女子生徒だけだった。
そういえば自己紹介ラッシュの時も迷惑そうに眉をひそめていた一人だ。
「まぁそうなるよな。はい。全員に籤配りまーす“当”の文字が書いてるやつが補助な~」
そうして全員に籤が配られ先生の合図で皆一斉に籤を開く。
「や、やった!」
「お、一人は深山かー。旭野君の隣の席を引き当てるし補助にも当選するし、スーパーラッキーガールだな」
チッ
教室内のどこかから 舌打ちが聞こえたような気がした。
「あれ?もう一人は?」
スッと隣の席の女子が手を挙げる。
「あぁ宮本か……まぁ席もはさむようになってるしちょうどいいか」
「待ってください」
待ったの声をかけたのは日野さんだった。
彼女は席をおもむろに立ちあがると、ツカツカと宮本さんの席までにじり寄ると手に持ったバックから何かを取り出した。
「宮本さんとおっしゃいましたね。そのあたり籤、私に売ってくださいません?」
宮本の眉がピクリと動く。
「100万」
宮本さんの席にパサリと現ナマが放り出される。
しかし、宮本さんは動じない。
「200万」
帯のついた現ナマが2束。
「300万……これ以上は、今日用意できません。」
「お~い日野~。先生さすがにそれは見過ごせないなぁー」
その発言に日野さんは一瞬だけ思案すると
「では、先生にはお幾らほどお包みすれば?」
「んー先生別にお金には困ってないからな。あとさすがに学校で云百万円の取引はダメでーす」
そんな注意に日野さんは心底不思議そうな顔をする。
「なるほど、現物取引がだめなんですね」
「いや、取引形態の話じゃないからな?」
そんな遣り取りが続いていると、イライラした声音で宮本さんが机を叩く。
「いいわよ別にこんなものくれてやるわ。せいぜい男と仲良しこよしやってなさいよっ!」
叩きつけるように籤を渡す宮本さん。
「あら、ただで?でもその物言いはどういう事?礼儀を弁えてないメスには躾が必要?」
胸倉を掴みあう距離でにらみ合う二人を目の前にして、のほほんとできるほど俺は能天気じゃない。
「ちょ、ちょっと!二人とも落ち着いて!」
二人の間に割って入り、ひとまず日野さんを席に戻す。
「おぉー先生は旭野君が常識人で安心したよ」
この能天気教師がっ!?
思わずグギギと歯ぎしりしそうになるのを抑えてこの場を治めるために提案。
「僕も最初に自己紹介した深山さんと日野さんが補助してくれると心強いです」
「そうか?んじゃその二人で」
籤のやり取り不毛じゃねぇか!
にしても、男というだけで靡かない女性を初めて見た。
少しだけ興味が沸くな……。
そんな感想を抱きつつ女子高生活1日目は終了した。
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