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特選男子!~あべこべ世界でモテモテになりたいっ!!~  作者: みぞれパンダ
第1章 特定選別研修 金見山高校編
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第14話 日野美波という女

長くなるので今日の更新は一度だとお知らせしていましたが

2話に分けましたので分割で投稿します。

第14話  日野美波という女


―日野美波―


 毎日が退屈だった。


 ピアノ、茶道、バレエ、華道、護身術、絵画。

 学校、稽古、自宅、学校、稽古、自宅。


 繰り返される代り映えのない毎日。


 本当に退屈だった。


 「さすが、日野家の次期当主」


 そんな賞賛の言葉は習い事の表彰がある度に掛けられた。


 才能に満ち溢れた私という存在。

 才能がないのに努力を怠った周囲の人間。

 血反吐を吐くほどの努力の末に誰か私を打ち負かしてほしい。


 そんな潜在的な欲望は周囲への無関心という形で現れた。


 あの人もこの人もその人も

 足りない。

 故に視界には入らない。


 次第に私の視界には色がなくなった。

 まるで私の肌や髪のように真っ白な世界しか見えなくなった。

 私は欠けたのだ。

 何か決定的で大切な何かが……。


 そんな欠けた私にある日、お母さまが資料を出してきた。

 そこには一人の男の子のプロフィールが記載されていた。

 彼の写真を見た時は私は色を取り戻した。


 彼は私が描いてきたどんな絵よりも美しかった。

 彼は私が活けてきたどんな花よりも美しかった。

 

 綺麗、美しい、あぁこれが愛という感情か、そんな漠然とした感想が私の脳髄を支配するのは一瞬だった。



 声を聴きたい。

 きっと彼の声は私が奏でるピアノの旋律より遥かにきれいなのだろう。


 肌に触れたい。

 きっと彼の肌は私が触ってきたどんな人の肌より暖かいのだろう。


 匂いを嗅ぎたい。

 きっと彼の匂いはどんな料理よりも甘美な匂いなのだろう。



 見たい、聞きたい、触れたい、嗅ぎたい、舐めたい。

 私の五感をすべて使って彼のすべてを知りたい。

 知りたい知りたい知りたい


 その日から私は努力した。

 今までの定められた稽古をこなす義務感はなくなり、ただひたむきに努力した。


 母はそんな私を見て笑みを深くしていた。

 私が一つ賞を取る度に、母はご褒美と称して彼の情報をくれた。


 私が彼を一つ知る度、世界の色が一つ戻る。

 私が彼を一つ知る度、世界が一段面白くなる。




 そして、その日が訪れた。


 「彼が特選男子に選ばれた。3年間女子高に通う。どうする美波?」


 「あら?お母さまそんなの決まってますでしょ?」


 「愚問だったね」


 二人して声を上げて笑う。


 すでに決まっていた高校を国府4家の力を使って入学もしないまま転入。

 そして、金見山高校に……入学式を迎えた。




 生の朽様は本当に素晴らしかった。

 最後に写真で見た姿よりわずかに大人になっていた彼。

 作り物めいた美しい顔にすらりと長い肢体はこれからずっとずうっと美しくなるのだろう。


 あぁもっと知りたい見たい感じたい。

 この先彼が過ごす一分一秒一瞬をこの目に焼き付けたい。


 ただただこの身を彼のそばに……。

評価・感想は今後の励みなりますので

是非よろしくお願いします。

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