第13話 クラスメイト達 その1
次話はおそらく、明日です。
美波視点のお話で少し長めの話ですので
明日は一話のみの更新になります。
第13話 クラスメイト達 その1
―旭野朽―
彼女の容姿を端的に表現すれば天使である。
白く透き通った肌と老人の物とは全く別物の白髪。
それは彼女がアルビノと呼ばれる体質から来るものだった。
ガラス細工というにはあまりに儚く、花というにはあまりに鋭い。
彼女の長く細い肢体と相まって本当に天使にしか見えない。
「突然の不躾な物言いにも関わらず、すんなりと許していただけるとは本当にお優しい」
「ははは、ちょっとびっくりしちゃったけどね。日野さん程美しい人にそういわれて喜びこそすれ怒る人はいないんじゃないかな?」
そんな発言に目を少しだけ大きく開いて吃驚する日野さんは、見る見るうちに顔を赤らめた。
アルビノの肌に朱が差していく様は、花が色づくようなガラスに光が映りこむようなそんな美しさだった。
「あ、あのぅ……旭野様は私が不気味に思えないのですか?」
「へ?いや、まったく?きれいな髪色だし色白で美人だし?不気味って何が?」
しいて言えば公共の場で私の彼氏発言するあたりだろうか?
「い、いえ。そう仰って頂けると……困ってしまいます。殿方にその様な評価をいただけたのは初めてで」
そう早口で言い切ると口元にそっと手をやり、困ったように俯く彼女が妙に愛おしく思えた。
そんな美しい青春の一幕ともいえるイチャイチャ会話が途切れると同時に教室の前に到着する。
教室に入るとそれまでそれなりに盛り上がっていた室内は一気に静かになった。
「……僕の席はっと」
静かな空間で気まずくなり独り言が漏れ出た。
「こ、こちらです!」
おもむろに席を立ちがった少女が自分の隣の席を手で指し示す。
「ど、どうぞ!」
彼女はいそいそと俺の席を引き、そこに俺が座るとゆっくりと席をおしてくれた。
まるでホテルやラウンジの高級なコースで店員さんがエスコートしてくれているようだった。
「ありがとうね……えっと名前は?」
「は、い!私、深山加奈子といいます!」
「へぇかわいい名前だね!加奈子って呼んでもいい?」
びくっと肩を震わせると壊れた赤べこのように首を縦にコクコクと震わせている加奈子。
「ありがとう!加奈子!僕のこともぜひ朽ってよんでね!」
「よ、よろしくてございますですか?」
緊張のあまり日本語がおかしくなった彼女の後ろからヌッと姿を現したのは
「で、では!私も!私のことも是非、美波とお呼びください!!」
すさまじい剣幕で捲し立てる日野さんに思わずたじろぐ。
「わ、わかったよ美波さん」
「……さん?」
「ふー……美波?」
「はい!」
しっぽがついていれば全力で振っていただろうなという明るい笑顔でこちらを見てくる彼女を微笑ましい思えたが、教室内の雰囲気は彼女の発言を皮切りに堰を切ったように変化した。
クラスメイトの女子たちが次々こちらに来た。
矢継ぎ早に自己紹介され続けるので名前を覚えるのが大変だ……。
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