幸せの形。【タイトル回収バッチリ!!⠀】
頑張って読んで!!!
僕は今日、校外学習を飛んだ。色々と補足が必要かもしれない。まず、飛んだとはちょっと語弊がある。行ったのは行ったのだが、途中で勝手に帰った。あと校外学習と言うのも名だけで、本当は修学旅行と言った方がいいかもしれない。とりあえず、そんな楽しいはずの思い出が一瞬にして、しんどく、苦しい思い出に変わってしまった。以前誰かが言っていたが、こう言う思い出は大人になって、歳をとってもふとしたタイミングで思い出すことがあるらしい。
「どうせ思い出すなら、苦しい思い出ではなく、楽しい思い出にしようぜ。」
そう言っていたのを思い出す。その話を聞いていたのにも関わらず僕は自ら進んで苦しい思い出にしてしまった。どうだろうか。大人になって時間が経てばこの出来事も笑い話になるのだろうか。それは分からない。とにかく、そのときの僕は1人になろうと必死だった。
校外学習前日、こんなことを思った。楽しみな事は僕が思うままにそのままにしておきたい。そしてそのときが来なければいい。ずっと綺麗なままでおいておきたい。その瞬間に変な期待をして、期待外れな事になってしまうんじゃないか。そう考えれば、明日が来なければいいとさえ思ってしまった。しかし、そのときは軽く思っただけで大丈夫だ、楽しもうと言う気持ちがあった。
しかし、朝起きて絶望する事に…ならなかった。集合がいつもより早かったので早起きしなければいけなかったが、無事寝坊せずほぼ完璧な時間に起きれた。意気揚々と朝準備を始める。顔を洗い、歯を磨き、朝ごはんを食べる。完璧だった。ここまでは…
ふと時計に目をやる…。
「やばい…。わんちゃん遅刻するかも…」
やばかった。朝ごはんをゆっくり食べすぎたのか??それとも時間の経過が著しく早くなったのか??分からないがこのままでは間に合わない。急いで家を飛び出したが後の祭り。もう手遅れだった。学校に電話をかけた。
「もしもし。え?何でしょう。あ、遅刻。3年生ね、担当の先生にあなたの電話にかけてもらうよう伝えるから電話番号教えて??」
くそめんどかった。ここから頭のネジが吹き飛んだんだと思う。もうどうでもよかった。自分自身でもこうなってしまえば、もうコントロール出来ない。辛うじて出来る抵抗は、人間から出来るだけ離れることだった。そうでもしないとみんなに迷惑がかかってしまう。
「プルルルル…。もしもし?遅刻するの?何時くらいになりそう?あっそう、じゃあ駅から学校までランニングしてきてね。」
学校集合と言うのも僕にとってネックだった。いっそ現地集合でも全然良かったし、その方が気が楽だった。ランニングするために校外学習に行くわけではない。しかし、実際ランニングすれば1分か2分遅れるくらいで学校に辿り着ける。まだ取り返しは全然ついた。でもそのときの僕には間に合うとか間に合わないとか、もうそんな事考えられる余裕なんてなかったし、考えたくもなかった。僕の考えはただ1つ。バスを早く出して欲しかった。みんなに迷惑をかけるのは嫌だ。それだけは本当に嫌で嫌で仕方なかった。だからみんなに迷惑をかけない方法で僕は飛びたかった。バスさえ出てしまえば、みんなは時間通りに行動出来て楽しい校外学習を満喫出来る。それが僕1人の為に台無しになるのは絶対に避けたかった。僕は出来るだけバスを早く出すように促した。バスさえ出てしまえば一件落着。僕は現地へ向かっている振りをして家に帰り寝ればいい。ただ1つzenlyと言う危険要素もあったが誰も僕の事など気にしないと言う判断になりあまり深くは考えなかった。
学校の最寄り駅に着き、ランニングはせずゆっくり歩いていると、また電話がかかってきた。
「プルルルル…。もしもし?今どこです?え?駅着いた??私も駅に向かってますから!!」
「え?ガチで…??」
先生からの電話だ。予想外だ。捕まってしまえば強制的に連行される。かと言って、僕が捕まらなければバスは出ない。…呆気なく捕まってしまった。いや、もしかしたらもう少し踏ん張ればバスは出ていたかもしれない。その根拠は先生の電話だ。僕を捕まえたそのとき先生はすぐさま携帯を取り出し、バスに残っている(学校に残っている)もう1人の先生に電話をかけた…と思われる。会話内容はこうだ。
「もしもし?もうバス出ましたかね??あっ!そうですか。わかりました。じゃあ今からダッシュでそちらに向かいます!!」
もうバスは出ましたか?と言う発言に少し違和感を覚える。これはバスが出ている可能性があるという事だと思う。だから、少し踏ん張ればバスは出発していたかもしれない…。
ここまでは来ればお気付きだと思うが、何故休みますと言わなかったかだ。休みますと言ってしまえば、飛ぶ必要もないし、みんなに迷惑をかける心配もないだろう。最初家を出るまでは、僕は行く気満々だった。それから段々と、あたおかになっていき、最終的には飛ぶ気満々だった。僕は既に遅刻の連絡をしてしまっていたし、第一休むと言う考えにも及ばなかった。先生に捕まってしまった後に言うとしても、何言ってるんだと怒られるだけだった。そう、僕は飛ぶ事を第一に考えてしまっていた。もう取り返しがつかなかった。
どちらにしろ僕はバスに乗る以外の選択肢を失ってしまった。強制的に乗るしかない。おトイレ行きたかったので、用を済ませてからバスに乗り込む。バスに乗り込んだ途端、みんなの視線が僕に注目した。と、思ったのは僕だけかもしれない。とにかく空気感が嫌だった。いつもならわいわい、がやがやした楽しい雰囲気が、そのときの僕には不快な雑音でしかなかった。僕はイヤホンを出来るだけ耳の奥に突っ込み周りの音を聞かないようにする。でも、みんなの声がヒートアップする度に僕はどんどん下の方に落ちていく感覚がした。眠りたかったが、そう言う気分にもなれず、一生ツムツムして遊んでいた。目的地はそう遠くなく、2、30分もすれば到着する。もう嫌だった。帰りたかった。帰って、ゴロゴロしながらYouTube見る方がよっぽどいいと感じた。ちなみに次の予定はトロッコ電車に乗って景観を楽しむというツアーだが、もちろんそんな気分ではなかった。帰りたかった。すぐさまMAPアプリを立ち上げて近くの駅を探す。すると、10分程歩けば着く駅がある事が分かった。僕はその駅に向かって歩き出す。みんなの視線はあったが、誰も僕を止める者はいなかった。道中電話がかかってきた。先生からだった。もう出たくなかったので無視した。程なくして、友達からもかかってきた。無視しようと思ったが、何故か出てしまった。
「もしもし?今どこなん?え?帰る??冗談言わんといてよ!!」
いつだって人間は都合が良かった。もはや引き止める言葉は僕にとって煽りの言葉でしかなかった。しかし、僕は本気で帰りの電車に乗ろうと改札を通ろうとしたが、あまりにも必死に引き止めるのだから、こっちが根負けしてしまった。結局みんなのところまで行き、トロッコ電車を待つことにした。待合室では楽しそうにわいわい、がやがやと騒がしい声が聞こえる。そこに行くのが本当に嫌だった。でも行くしかなかった。
待合室に着いた。心配そうな先生が話しかけてくる。
「どーしたん?」
「いや〜。まじでダメっす。ホンマに嫌や。」
「(´-ω-`)ふーん.....」
「いや、まじでいっその事、『そんなんやったら、さっさと帰れや』って言ってください。その方が気、楽です。」
いつもはやる気がないなら帰れとか好き勝手言うくせに今日はただ、首を横に振り続けるだけだった。これだから人間は嫌いだ。自分の都合のいいときだけ、都合のいい発言をする。しかもそれに対して一切の責任を負わない。もう大嫌いだ。口を開けば文句ばかり。僕は1人になりたかったので待合室を出て、ホームに向かう。ホームは誰1人いなかった。周りは見渡す限りの緑。すぐ隣を走っている山陰本線。時折、ガタンゴトンと心地よい音を立てて走っていく電車。そして川の流れる音…。そこはまるで、世界に僕だけしかいなくなった小さな箱庭のようだった。僕はホームの端まで行き、フェンスに体を預けながら、物思いに耽った。隣ではBTSがエモい歌を唄ってくれた。やはり、ジミンのダミ声はいい。久しぶりに平穏が訪れた。しかし、すぐにその平穏は消え去った。僕がホームに出たからか、他の人間もぞろぞろとホームに出てきてしまった。まだ電車が来るまで時間があるので、まだ待合室にいてもいいはずだ。内心、真似をするなとイラついたが、幸いな事に僕の近くまで来ている人間はいなかったので、若干2割ほどエモい雰囲気を邪魔されながらも我慢していた。景色が綺麗だった。奥の方に見える並木がトンネルのようにしなり合い、幻想的だった。あの奥からトロッコ電車がやって来るんだ。まるでハリーポッターの世界観だった。いつまでもこの時間が続いて欲しかった。
が、しかしそんな時間も長続きしない。トロッコの出発時間が近づくとクラスのみんながぞろぞろとホームにやってきた。当たり前の事だが…。僕も先生に呼ばれて、渋々みんなと同じように電車を待つ。当然、僕がさっきまでいたホームの端は既に誰かのものとなり、やって来るトロッコ電車へのシャッターチャンスを逃すまいとしていた。僕は所詮、クラスの1人として行動すること以外許されなかった。列を少しでも乱そうものなら誰かが目くじらを立てて怒る。社会なんてものも恐らくその程度だろう。
トロッコ電車がやって来た。やって来た電車の姿は想像とは違っていて、もう少し古臭い感じかと思ったが、意外にも近代的な何かを感じた。電車の到着の同時にガタンッ!っと車両が動いて乗るのがちょっと怖かった。先に乗っていた客がぞろぞろと出てきた。乗っていた全ての人間が降りるのと、そもそも降りづらいのもあってか中々時間がかかっていた。クラスのみんなは早く乗ろうと電車に近づいて行ったが、どうしても同じ動きをしたくなくて僕はホーム端に行きフェンスに寄りかかり、遠くに見えるお馬さんを眺めていた。普段、中々見る事は出来ないし、もちろん乗る事も出来なかったが眺めているだけで幸せだった。むしゃむしゃと一心不乱に草??を食べている。あのお馬さんは人間のように言い訳もしないし、悪い事や怖い事も考えない。誰々を陥れようとか、騙そうとか、人のせいにするとか…。その純粋無垢でピュアな感じが凄く僕の胸に突き刺さった。実際、草??を必死に食べているだけだったけど、とても貴重で尊いものに見えた。電車が発車してしまう直前までそれをじっと眺めていた。
「発車2分前でーす!!」
その声を聞き、少し迷ったが結局電車に乗り込んだ。今思えばあまりおすすめ出来ない選択であったが、それでも電車から見える素晴らしい景観をこの目で見て携帯にも収める事が出来たのは良かったと思う。クラスで予約している号車は4号車でそれ以外の号車へは行ってはいけないらしかったが、僕には関係のない事だった。やたらと指定席だの何だの言っていたが、僕には全ての席が自由席に映って見えた。実際4号車はクラスのみんなで一杯だったが、ほかの号車は驚く程にガラガラだった。僕は人が沢山いる4号車を避け、3号車の席に座った。少しルールは悪いが窓から顔を出して風を感じる事が出来たし、景色をより間近で見る事が出来たのは素晴らしかった。出来ればこのままで良かったのだが、すぐに見つかり呆気なく4号車に引き戻された。
「お前あほやろ笑」
4号車に戻るとそんな声が多く聞こえた。
『あ〜。なんとでも言ってくれ。』
内心そう思って、イラつきながら先生に促されて席に座った。3号車とは打って変わって、有り得ないくらいうるさかった。トロッコ電車の走行音もそれはそれはうるさいものだったが、それをかき消す程の話し声。それがあちらでも、こちらでも…。時折叫び声すら聞こえる。頭がおかしくなりそうだった。いや、もうおかしくなっていた。席に座っているのがたまらなくなり、席を立って出来るだけみんなとは離れたところのドア付近で落ち着き、景色を眺めることにした。こうして考えてみると、少し離れるだけでも全然違う。半径1mは無理だが3、4m離れていると大分マシだ。同じ号車にいるし、誰にも迷惑はかけていないのでそれ以上先生や友達などが咎める事はなかった。しばらくの間、景色を眺めたり、それを写真に写したり、自分なりに落ち着いた時間を過ごした。そう言えば先生が凄く混み合うと言っていた癖に、全然混み合わなかったし、むしろガラガラだった。これが大人の怖さだ。わざと嘘をついて子供の行動などを抑制しがちだが、その行動がプラスに働く事もあれば、今回のように却ってマイナスに働く事もある。ガラガラであれば他の号車に行って一人で落ち着いたり出来たはずだ。途中で停車駅がありそこで沢山の人が乗ってくると言われ、もしかしたらその可能性も捨てきれないので我慢して4号車にいたが結局その停車駅でも人が乗ってくる事はなく寧ろ降りていく人のほうが多かった気がする。とは言っても先生からそう言われていたし、それに歯向かっても意味がなかったので僕は仕方なくこうして愚痴を吐くことしか出来なかった。
終着駅に着くまで、みんなとは少し離れた扉付近で景色を眺めていたがそれはお世辞なしに綺麗だった。天気も良く目の前に広がる緑と、限りなく広がる青空、すぐ下の川の流れがこれ以上にないくらいベストマッチしずっとここでいたいくらいだった。もし世界中の人間が僕だけになって、他に動物しかいなくなったとしたらこの上ない幸せな事はなかった。ひとりでこの素晴らしい景色を眺めながら、一年くらいはぼーっとしていられそうだった。動物だって、何ら命令をする訳ではないし、そばにいるのなら、そっと隣にたたずみ何もしない。今の僕にとってそれが極上の幸せかもしれない。ただ周りを見渡せば悲惨な現実が目の前に広がっているだけだ。僕はこの瞬間に耐え続けるしか無かった。
終着駅の嵐山駅に着いた。着くや否や、僕はMAPアプリを立ち上げすぐさま近くの駅を調べる。どうやらここからだと、嵯峨嵐山駅が1番近いそうだった。運良く周りからの制止もなく、僕は目的地に向かって歩き出した。目的地は家だ。あの時、トロッコ電車に乗らなければ、良かったかもしれない。その方がスムーズに帰れたし、無駄な時間も食わなかっただろう。しかし、過ぎてしまったものは仕方が無かった。今からでも帰れるのであれば帰り、ゆっくり寝転びながらYouTubeを見たり、映画を見たりしてゴロゴロして過ごしたかった。
流石に京都の街並みだけあって、とても落ち着いた風景だった。本当に人が住んでいるのか疑うくらい静かで、建物も趣があり、歩いているだけでリラックス出来た。最初に歩いていたのは住宅地のようで、しばらく歩くと大きな道路に出た。と言っても車通りも少なく、静かだった。10分くらい歩いただろうか、もうそろそろ駅に着いてもいいはずだ。しかし全然辿り着かない。もう一度MAPアプリを開き場所を確認する。初めに見た時はそれ程離れていないように感じたが、実際に歩いてみるとかなりの距離があるようだった。携帯のバッテリーも残りわずかで、あまりバッテリーを消費したく無かったので、経路案内には頼らず、地図を見て、予め覚えてから携帯を閉じて歩く、不安になったら携帯を開きまた確認すると言った感じで進んでいた。20~30分程歩いただろうか。ようやく駅舎が見えてきた。意外にも距離があり、歩くだけで疲れてしまった。家まで行くためにはどうすればいいのだろう。能無しの僕は例によって乗換案内アプリに頼るよりほか無かった。調べてみると家に帰るためには京都行きの電車に乗らなければ行けないようだった。11:27に来るようだ。それ程待ち時間も無く、少し落ち着くことが出来た。携帯のバッテリーが少なかったのでゲーム等をするのはやめて、音楽を聞くのみに使用を絞り電車を待つことにした。
しばらく待つと放送が入り電車がホームに滑り込んできた。あまり混んでおらずゆったりと座る事も出来そうだった。電車に乗り込み席に座る。朝早かった事や、駅に着くまでかなり歩いた事など色々重なり眠気を催していたので眠ることにした。目を閉じ( ´-ω- )フッっと呼吸をする。
「次は太秦、太秦...」
車掌のアナウンスがかすかに聞こえ、意識が途切れた…。
「次…二条…です」
「次は…都。京都です。乗り換えのご案内を致します。琵琶湖線・湖西線・JR京都線・奈良線・関空特急はるか・近鉄線・地下鉄線はお乗り換えください。きょうも、JR西日本をご利用くださいましてありがとうございました。京都、京都、終点です。」
やばい、もう京都に着いてしまったらしい7駅もあるからと油断していたが、意外とすぐだった。ここからは近鉄線に乗り換えなければならない。急いで電車を降りて近鉄京都駅に向かった。しかしこれが難題だった。京都駅自体めちゃくちゃ広いのにその中で近鉄京都駅を探し出すのは僕にとって難しい事だった。これまで何度か来た事はあったが、それほど土地勘?がある訳でも無いし、そもそも京都なんか中々来ない。来ても一緒にいた友達に全て任せていたので、何がどこにあるとか全然分からなかった。しかも、もたもたしていたら次に乗るはずの電車に乗り遅れるかもしれない。次に乗る電車は11:58の橿原神宮前行きだった。幸い時間に余裕はあったが、予断を許さない状況だ。6分程歩き回っただろうか。近鉄線に導いてくれる掲示板を見つけ、無事たどり着く事が出来た。比較的すぐに辿り着けたのは良かったと思う。まだ電車すら来ていなかったので、僕は安心しお手洗いに向かう。用を済ませ、お手洗いから出てくると同時に電車が到着した。終点なので車内に乗っていた全ての人が降りる。お昼時で駅自体全く混んでいなかったので電車に乗ろうとする人もあまりいなかった。勿論座席にもゆったり座れたので、席の端に座った。端の方に座るのはかなり重要なポイントだ。席の端の方には必ず手すりがあり、寝る時などそこに頭や体などを寄りかけて寝る事が出来る。なので姿勢が定まり、首が痛くなったり、体の部位が痛くなりずらい。ただ必ずしも全く痛くならない訳ではなくあくまでマシになる程度で、やはり無理な姿勢で寝ているのに変わりは無いのだが。クロスシートならそこまでめんどくさく……無いとか難しい話になりそうなので詳しくは自分で調べてほしい。
発車時刻になり、けたたましい警笛の音が響き渡る。扉が閉まり電車が動き出した。次に降りるのは竹田だ。そこで奈良行きの急行に連絡するらしい。
「お待たせしました。近鉄をご利用頂きありがとうございます。この電車は橿原神宮前行き各駅停車です。次は東寺、東寺です。」
竹田までそれ程距離はなく、寝るのはやめとこうかと思ったが睡魔に襲われてウトウトし眠ってしまった。
「次…十条………です。十…。」
「は…上鳥羽……上…です。…の扉が開きます。…下さい。」
「次は竹田、竹田です。地下鉄烏丸線はお乗り換えです。右側の扉が開きます。ご注意下さい。」
…。ウトウトしている内にもう着いてしまうらしい。しかし、4駅しか無いというのにウトウトしていたら意外にも長く感じる。駅間が長いという事もあるだろうが。
「烏丸線から参りました奈良行き急行に連絡します。奈良にお越しのお客様は次でお乗り換え下さい。」
車掌のアナウンスが聞こえる。アナウンスて目が覚めた僕は身の回りの支度をして、降車の準備をした。
……。
「次は大和西大寺、西大寺です。橿原神宮前、大阪難波、尼崎、神戸三宮方面はお乗り換えです。この電車は奈良行きです。次は新大宮に止まります…。右側の扉が開きます。ご注意下さい……。」
いつの間にか眠ってしまったらしい。もう乗り換え駅に着いてしまった。例によって、座席の端っこに座っていた訳だが、さすがに肩や首が痛かった。少しストレッチしてから降車し、最寄り駅まで向かう。携帯を開くと午後から一緒に行動するはずだったメンバー達からLINEが来ていた。
「今どこ?」
や
「今○○ってとこにいるからはよ来てや」
などのLINEで、皆僕が帰ったとは思っていないようだった。みんな思考が甘かった。あれだけ帰ると僕が言っていたのにその可能性は考えなかったのか。ただ、あまり集団でいたくないという僕の思いを尊重してしつこく連絡してくる事は無かったのでそこら辺は分かっているなと感じた。僕はB型だ。どういう性格か詳しくは調べれば分かるのでそうして欲しいが、簡単にいうととても扱いずらい性格だと思う。基本1人が好きだが、寂しがり屋というめちゃくちゃわがままな性格だ。かと言って、他の人と一緒にいると1人が気楽に感じたり、面倒くさくなったりと言った感じでめちゃくちゃである。そう言った、僕の思いや性格を理解してくれたのは嬉しかった。
結局LINEは返したが
「今西大寺。もう無理。」
などの冷たい返信になってしまった。相手からは既読が付くだけで返信が来ることは無かった。
最寄り駅に着き、とぼとぼ歩きながら帰った。周りを見渡せば楽しそうにしている人たち、同じ世界に生きているのにどうしてこんなにもちがうのか。そして僕はどこで間違ってしまったんだろう。どうしてもこんな事を考えてしまう。1度考え出したらキリが無い。同じ思考が頭の中を堂々巡りし、結局答えには辿り着けない。高校生になって、そんな事を考える事が多くなったように感じる。何故かは分からないが。もしかしたら大人になったのかもしれないし、子供に逆戻りしたのかもしれない。いや別にこんな事考えても全く意味が無いし、時間の無駄だし、メンタルも病んでくるだけで意味が無い。分かっているのだが、もう無理かもしれない。もう戻れないかもしれない。あの、無邪気に笑えた時に。何も考えず、がむしゃらに生きていた日々に。あの頃か懐かしい。1番幸せだった。しかし僕は今でも十分幸せだ。ご飯もお腹いっぱい食べれるし、ちゃんとした家で正しい姿でぐっすり寝る事だって出来る。応援してくれている人もいる。結局、自分が幸せかどうかは他人が決めるのではなく自分の考えようだろう。周りから見れば、あいつは不幸せな奴だ、と言われても本人が幸せだと思っていればその人は幸せ者だ。
帰宅途中、先生からの電話もあったがウザかったし、そんな気分では無かったので無視した。
家に着き、服を脱ぎ捨て、パジャマに着替えてベットに潜り込んだ。眠たくなるまでYouTubeを寝転びながら見た。暖かかったし、幸せだった。これが今の僕の幸せの形だ。
最後まで読んでくれてありがとうございます!!!