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第九十九話 今年も一年よろしく

リビングという狭い空間に重苦しい空気が流れた。

のは一瞬のことだった。


「お邪魔しまーす!」

「お邪魔します」


声とチャイムも鳴らさずに入ってくるということは十六夜と時雨だろう。


「お、来たな。んじゃ、おせち食おうぜ」

「......加羅忍。俺の頭で理解したくないから変わりに説明してくれ」

「間宮さんを騙しました」

「おれが女に対して胸がどうのとかいうわけないだろ。それに、その服じゃ大きさ分からないし」

「そうだよなー。ちょっと目、覚ましてくるから。じゃな」

「現実見ようよ」

「十六夜だけには言われたくなかった」


そうだよな。

加羅忍が無策で喧嘩するほど馬鹿じゃないのはもう見切ったと思っていたのに。

更に練度を上げてきやがったよ。無駄なところで努力しやがって。


「正月早々、女子と絡むのは嫌だろ」

「ああ、今日は颯太と遊ぶ日なんだよ」

「でも颯太くん寝てるよ?」


肝心の颯太はさっきまで元気よく遊んでいたのにいつの間にかソファで寝てしまっていた。


「夏鈴のおせちを食べるのは嫌じゃないが、お前らの相手をするのは疲れるから嫌だ」

「今日はおせち食べに来ただけだから」

「お前らが俺と会って疲れさせなかったことはないんだが?」

「え、そんな嘘いうならもっと疲れさせてあげようか?」

「嘘じゃないがな、謝るから座れ。」

「ほら、食べるぞ」


夏鈴が全員を座らせ、風呂敷を開くと黒光りする重箱に入ったおせちが出てきた。

見せて注文したかのような色とりどりの食材が綺麗に詰められていた。


「よくそんな重箱用意出来たな」

「重箱は真尋のだ」

「夏鈴さんがおせちを作るって言ってたので、もしよかったらと使ってもらいました」

「なんでどっかに持ってくわけでもないのに」

「男性の自宅に持っていくなら綺麗にしたいものですよ。色々と」


なぜか含みのある言い方。


「男性の自宅って言っても俺は気にしないし親は二日酔いで寝てるぞ」

「そういう意味じゃないと思いますけど」

「あ?」

「色々とって言ったでしょ」


分かってる。夏鈴がおせちを持ってきた時点で化粧しているのは分かった。

けど見たくない現実ってあるじゃん。


「言おうとしたら加羅忍と喧嘩しだしたから言いそびれた」

「落とせとかい言わないんだ。わたしの時には言ったのに」

「人の努力を洗い流せとかひどすぎるだろ。誰だそいつは」


夏鈴の化粧を見れば慣れてないのは分かる。

漫画なんかで見るような小梅太夫仕様ではないもののナチュラルにしては濃いしガチメイクにはしてはどこか足りない。

ただその違和感は夏鈴の努力だってことは分かる。

女子に慣れつつある今、多少の化粧はどうってことない。


「悪かったから座れ。けど十六夜の場合、時期が悪い」

「今したら?」

「とりあえず冷水ぶっかけるな」

「変わってないじゃん!時期じゃなくてそれわたしが嫌いなだけじゃん!」

「やっと気が付いたか」

「え」

「ブラックホールになるな」


紫紺の瞳が光を失えばそれはもうブラックホール。

制止も仲裁も飲み込む暴走者と化す。


「それで間宮さん?夏鈴さんに言うことはないですか?」

「いいって。はずいし」

「夏鈴は化粧するとけばい。薄っすらチークくらいが似合うぞ」

「狼斗さんは化粧が分かるんですか?」

「いや全く。あくまでイメージの話だ。濃い化粧は好まないでな」

「でもわたしのナチュラメイクには文句言ったよね」

「あれは急に女を見せてきたせいでびっくりしたせいだ」

「それにはしては尖りすぎじゃない!?」


なんて賑やかな正月なんだ。

うるさくて耳が痛い。


「今度皆さんでお互いに化粧をしてお出かけしましょうか。間宮さんも一緒に」

「断る。俺は正月忙しんだ」

「シフトそんなに入ってませんでしたよね?今年最初のシフトが一月の十五日です。その前には入ってません」

「人のシフトをそこまで管理してるのは時雨くらいだろうよ」

「あ、ありがとうございます」

「褒めてない」

「んじゃ新年の福袋を買いに行こうぜ!当たり外れが激しいけどな」

「なら俺は連れて行かない方がいいのでは?」


今年の運勢凶だぞ?今年はガチャに課金はしないと決めたほどなのに。その俺を連れていくのか?

正直馬鹿だと思うぞ。


「行きましょう?凶でもそこで運の悪さを消費すれば残りはいい運勢になるかもしれませんよ?」

「俺の一番の幸運は颯太が伸び伸びと育ってくれることとお前らが俺を諦めてくれることなんだが」

「今年も一年よろしくお願いします」

「よろしくー」

「よろしくお願いします」

「よろしくな」


だから今年の運勢凶だって言ってんだよ。

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