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第九十八話 きっと気のせい

「お前、もっといい服無かったのか」

「好きに着ていいと言いましたよね?」

「そうだけどな......Tシャツ一枚とかなんでそう薄いものを選ぶんだよ」

「上着借りてるので一枚じゃないですよ」

「下を走るとき用の物にした理由は」

「少しエッチかなと」

「着替えろビッチ」


誰かれ構わず足を見せるもんじゃない。

俺が蹴ったら折れそうな足しやがって。本当に折ってやろうか。

ま、本当に折ったら俺の首の骨が折られるだろうけどな。権力という見えない力によって。


「でもいつ私のズボンを見ましたか?」

「いや、見てないけど上着から見えてないし俺の服の中でそこまで短いのはそれ一つだ」

「色は覚えていますか?」

「青だな」


チラリと見せた加羅忍のズボンは黒かった。

ほんの一瞬しか見えなかったが白い斑点があるようにも見えた。

残念なことに加羅忍が履いているとされるズボンには青いアーミー模様なため白い斑点がはいっていることはあり得ないのだ。

ただ俺は絶対に信じない」


「影だろ」

「もっとしっかり見ますか?」

「止めろ。それ以上服を上げるな。颯太に悪影響だ」


といっても本人は録画したテレビに夢中で俺と加羅忍の会話なんて聞いちゃいないが。


「加羅忍。気は確かか?男の前でする格好じゃないぞ」

「なにが見えたんですか?私はちゃんと服は着てますよ?」

「ここで心理戦をするつもりはない。履いていようがいまいが俺には関係ない。恥ずかしいのは加羅忍。お前だ」

「本当にそうでしょうか」


加羅忍は忍び寄る蛇のように俺の隣に座った。

珍しく心臓が痛い。それどころか喉が張り付いて声も出ない。


「呼吸が荒いですね。大丈夫です。間宮さんはなにもしなくても終わります」

「にいに!へんちん!」

「あ、ああ。やれってか?」

「やる!いしょ!」


颯太のおかげで幻惑魔法にかかることなく脱することができた。


「間宮さん」

「あん?」


振り返ると服をめくり履いているズボンを示す加羅忍の姿が。


「私が履かないわけないじゃないですか~。もし履かないとしたら本気で間宮さんに襲い掛かる時です」

「そうかよ。追い出さずに済んでよかったよ」


短いズボンの隙間から黒に白斑点の生地が見えた気がしたがきっと気のせいだ。

もしくは幻惑魔法に少し触れたことによる幻覚だ。きっとそうだ。そうに違いない。

間違ってもあれは加羅忍のショーツではない。


颯太とライダーごっこをして遊んでいると玄関のチャイムが鳴った。


「悪いな颯太。少し出てくる。すぐに戻る」

「あい!」


加羅忍に声を出すなと釘を刺し、玄関へと向かった。

覗き穴から除くと風呂敷を持った夏鈴が外で待っていた。


「なんだ。どうした」

「おせち。食べようぜ」

「家でか?」

「そう。せっかく作ったし。不都合でもあるのか」

「今片付け途中でさ。散らかってるんだわ。だから全員は無理だ」

「なら全員で手伝ってから食う」

「流石に悪いって」


全員どころか誰一人として家に入れることは出来ない。

待てよ?加羅忍が家の泊ったのは全員が知っていることだ。そして今日は元日で半日も経っていない。

だったら加羅忍がいてもおかしくないのでは?


「真尋はどうした?」

「ああ、加羅忍なら......」

「もう帰ったよな?おれまだ狼斗の家泊ったことないのにずる過ぎるし......真尋は手段を選ばないからその......注意しろ」

「ああ。それは本当にわかる」

「私がなんですか?」

「おい」


出てくるな。更には声も出すなって言ったのになぜ姿を現した。

今すぐ夏鈴に幻惑魔法をかけてルーラでも唱えて欲しい。


「お前、その服!」

「間宮さんから借りました。ゆったりしてて可愛いでしょう?」

「は。ぺったんこ過ぎて全然色気ねぇな」

「煽るな煽るな」


確かに十六夜や時雨と比べるとちょっとという感じはあるが別に胸は比べるもんじゃない。


「間宮さんは、女子が嫌いなのであまり女子らしい体つきは嫌いだと思います」

「男は皆胸しか見てないんだよ。こんだけあれば文句はないだろ。な」

「俺は居ないものとして扱ってもらえたらうれしい」

「全員の中でだれが一番間宮さんの好みの体か決めますか?」

「おい。勝手に俺を巻き込むな。妄想で留めとけ」

「今全員に集合かけたからすぐ来るぜ」

「え、なんで?純粋に疑問」


なんで正月からストレスで禿げないといけないのか。

あれか、凶を引いたからその分悪いこと起こさないとね的な気遣いか。

そんな気遣い要らないんだよ!

どうせなら女が寄り付かなくなるとかいう激レア魔法でもかけてくれればいいのに。

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