第九十五話 ガチャは悪い文明
クリスマスが終われば年明けまですぐそこ。
俺は一人で初詣に向かった。
颯太も連れて行こうかと思ったが夜中の零時は三歳児からすればお眠らしい。
しっかり着こんで来たのにかなり寒い。
近所の神社はこの白山神社だけだ。そのせいか人がかなり多かった。
神社の敷地に入るまでに階段があるがそこに行くまでにも時間がかかった。一人で並び、お参りも一人で済ませた。
神社内には家族連れや友達同士で来た人で賑わっている。一人で来ているのは俺くらいか。
「まーみや」
どうやら一人と思っていたのは俺だけのようだ。
「十六夜も来てたのか」
「わたしだけじゃないよ」
「ほう」
十六夜が指す先には保健室を溜まり場とする女子たちがいた。
「なんだ。狼斗も来てたのか」
「狼斗さんが来るならちゃんと袴とか着てくるんでしたね」
「今から着替えますか?」
「そんな面倒なことしてくていいだろ」
出来ればこういう場所で会いたくはなかった。
「間宮はなんてお願いしたの!?」
こういう質問が来るって分かってるから。
「今年一年平和にだ」
「去年と同じですけどいいんですか?」
「俺が望むのは真の平和だから。こんなやかましい日常は望んじゃいない」
今年強く平和を望んだ。この先、どうかなにも起きないように。
例えなにか起きたとしても穏便に済むように。
「十六夜はなんて願ったんだ?」
「好きな人と結ばれますようにって!」
聞く人間違えたな。
といってもこの場にいる全員に聞いても同じような答えが返ってくる気がする。
そんなの聞くこっちが恥ずかしい。
「そうか。くじ引きは?」
「好きな人と結ばれますように」
「時雨」
「くじ引きはまだです。狼斗さんも一緒に引きますか?」
「ああ、そうしようかな」
横で頬を膨らませる兎は無視しよう。
一人で来たはずなのにくじを引く頃にはいつもの面子がそろっていた。
「全員持ったか?」
「はい。持ちましたよ。ちなみに間宮さんは凶を引いたことは?」
「去年」
「あ」
そこで察してくれて助かる。
そう。この惨状は去年のくじが呼び込んだ凶運なんだ。
だから今年こそ大吉を引いて悪運だらけの日々を終わらせるんだ。
くじを開けようとすると横から思いっきり抱き着かれた。
正体は勿論兎。
「見てみて!大吉だった!」
「よかったな」
「それでこの待ち人のところ見て!来るってなってる!これって未来予想かな!」
「そうだといいな」
待ち人はそのまま待っている人のことだ。
十六夜は俺と考えたようだがこの先、待っている人が出来れば俺ではなくなる可能性が多いにある。
「願望のとこ見てみろ、『時の流れに乗り人を助けりて叶うが、我を張れば破れる』って書いてあるだろ」
「どういう意味?」
「人助けをすれば願い事が叶うかもしれませんが欲張ってはいけませんということですね」
「別に欲張ってないもん」
十六夜の中ではまだセーフらしい。俺の中ではアウトよりのアウトだが。
「加羅忍はどうなんだ」
「小吉ですね。待ち人も音信ありとだけ」
「くじなんて気にすることないだろ」
「夏鈴はバリバリ信じると思ってたぞ」
「努力次第だろ」
「この場でド正論言うな。ここに大吉引いて喜んでる奴がいるんだ」
この一瞬くらいは喜んでもばちは当たらないだろうよ。
「間宮さんはどうですか?」
「俺は......」
おみくじを開いた瞬間に飛び込んできたのは『凶』という不吉な文字。
「あら、運が悪いですね。待ち人の文を読んでみてください」
「『待ち人、来る。ただし、難あり』......おみくじなんて所詮バーナム効果を利用した娯楽に過ぎない」
「『縁談、女難の相あり。気をつけよ』だそうです。頑張ってください」
やっぱ神はいるのかもしれない。
難の正体をこんな分かりやすく教えてくれるなんて。それと同時に、さっきの願い事を『無理』と言われた気がした。
もし声が聞こえたら中指立てる所だ。




