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第九十三話 急に笑えなくなってきた

「ただまー!」


下準備も終わった頃、颯太が母親と共に帰って来た。

リビングまで駆けて来た颯太は匂いでなにかあると勘づいたようだ。

椅子を引き、よじ登り机の上を確認、するとどうだろう。

目をキラキラと輝かせ、こちらを見た。


「今日はクリスマスっていう特別な日なんだ。サンタさんからのプレゼントだそうだ」

「とても美味しそうだよねー」

「颯太、食べる!」

「食べようか」


この颯太の顔が見れただけで用意した甲斐あったというもの。

俺の目標は達成された。俺はな。


「それじゃあ。いただきます」

「いちゃじゃきましゅ!」


卓の上に並んでいるのは事前に作られたものだ。

俺達がやったのは、チーズフォンデュにつける食材を切ったり焼いたりした程度だ。

料理が得意ではない二人が安全に出来ることなんて限られているからな。


「おいし」

「食べ方どうにかならないのか」

「なにが?」


こいつ......無意識か。

十六夜の食べ方はなんというか......エロい。

垂れるチーズを巻き込むように舌を使い絡めとる。そして熱いのかはふはふと小さな口を開ける。

暖房で暑いのか頬も少し赤い。


「なんでもない。火傷には気をつけろよ颯太」

「うん!」


颯太だけが唯一の安地だ。

小さなフォークで一生懸命食べる仕草は弟バカにならざるおえない。


「はい。間宮、あーん」

「いらないから。一人で食える」

「今日、なんでわたしがここにいるか忘れちゃった?あーん」

「お前、今日は一緒にいるだけでいいって言ったろうが」

「あーん」


あーんでゴリ押ししてくるな。


「にいに。あーん!」


颯太もそちら側か。母親は既に酒をあけており戦力にならないし絶対的に敵なため論外とすると、このフィールドに味方はおらず全てライフで受ける必要があるのか。

即死じゃねぇか。


「今回だけだぞ」

「顔。怖いよ?折角のクリスマスだし笑おうよ」

「なら笑わせてくれるか」

「今から婚姻届け取ってくるね」

「ははは。面白い冗談だ」

「ははは」

「そこで笑うとガチさが出てくるから「でしょー」でいいんだぞ」

「ははは」


急に笑えなくなってきたな。

役所に噓の爆破予告を送るか本当に爆破するしかないな。

男女の婚姻を巡って爆破される役所可哀そう。


不格好な桜型の人参をもぐもぐと咀嚼するだけで十六夜は嬉しそうに頬を緩める。

そんな幸せそうな顔をしないで欲しい。口に入ってるものを吐き出したくなる。


「美味し」

「ちょっとばかり芯が残ってるな。ちゃんとレンジで温めたんだけどな」

「そういうことじゃなくて......」

「俺が女子に食べさせてもらって美味しいっていうとでも?」

「ここにはわたししか言わないんだからよくない?誰も嫉妬しないよ?」

「嫉妬されるとか驕りじゃね?誰と一緒だろうが誰にも言わない」

「夏鈴ちゃんには言ったのに」


夏鈴のは皆にあてて作ったもので俺に当てたものじゃない。なにより手作りだ。

今回は出来合いのものを用意したに過ぎないし俺は颯太に向けて調理をした。

なにが言いたいかって言うと、今美味しいっていうと『この食べてる空間、時間、瞬間が美味しい』って言ってるのと同じだ。暗に十六夜と居れて楽しいと言っているのと同じだ。


「俺が十六夜を好きになったら言ってやる。ちゃんと声に出してな」

「頑張ろ!」

「絶対にないがな」

「いーや!絶対にある!好きにさせてみせる。二年生にあがるまでに!」

「ほう。今この好感度で達成できると?」

「出来る出来ないじゃない!やるの!どんな手を使っても!」


あ。まーた選択肢をミスった気がする。

『どんな手を使っても』......普通の女子高生なら特別怖くもない言葉だが、加羅忍真尋がいるフィールドでは必殺技級の威力を誇る。

無敵も回避も逃走も戦闘もありとあらゆる戦術を無効化し自分の攻撃力を何億倍にも増幅させる最強のカード。エクゾディアでも噛み合ってこその確勝なのに。

......しばらく失踪しようかな。

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