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第九十二話 逆転の発想

買い物から帰ろうとスーパーを出ると、ぽつぽつと雨が降り出していた。

十六夜の手には買い物袋がぶら下がっており、傘の影は全く見られない。


「十六夜。傘は」

「ん!」


自慢げに両手を広げる十六夜。

要するに持ってきてないってことだ。残念なことに俺のバックの中には折り畳み傘が入っている。

こうして急に雨に降られた時に颯太だけでも濡らさずに帰るために持っていたのが仇となった。

癖ってこわい。


「非情に不本意で嫌だけど入れ」

「ありがと」


俺は右手に買い物袋を持ち左手で傘を持った。


「予報で雨なんて言ってたっけ?」

「見てないから分からない。見てたとしても当てにならない」

「そんなことないよ!結構当たるよ!」

「どうだか」


降水確率は五十パーセント以上だったら降るくらいの印象しかない。

雨が頻繁に起こるならまだしも、明日起きてみないと分からない状態じゃ傘は余計な荷物なんだ。


「......」

「急に黙ってどうした」


じっとりとした目線を俺に送るがそんなに天気予報を信頼していたのか。それを俺に否定されたことを怒ったのか、それとも俺が気づかないうちに地雷を踏んでしまったのだろうか。

ならもっと踏み抜きたい所存。


「言わないと不満は伝わらないぞ」

「寒くない?」

「寒い。冬だからな」

「もう!」


我慢出来ないと言った様子の十六夜は俺に自分の肩をぶつけた。


「なんだよ。なに怒ってんだよ」

「肩濡れてるじゃん!」

「小さいから仕方ないだろ。それともこの雨の中、なしで帰るか?」

「わたし濡れてない!」


なにを怒っているのか。濡れたいなら傘の外に出れば簡単に達成されるが。


「いつもは「入れてやってる」ってスタンスなのに急に優しさ見せないで!」

「意味が分からん」


情緒が不安定すぎる。


「キュンってして襲いたくなる」

「マジごめん」


謝るしちゃんと俺の肩も傘にいれるから食べないで。まだやり残したことがいっぱいあるんだ。

少なくとも颯太が成人するまでは生きていたい。


「優しくされるのはいいけど、間宮にはツンツンしててほしい」

「人をツンデレみたいに言うな。十六夜はなにか?乱暴なのが好きなタイプか」

「うん」


そういう性癖的なことは麻耶としててくれ。あの脳内まで腐りきったショタこんなら喜ぶだろうよ。

自分がショタじゃなくてよかったと思う。そして颯太には二度と合わせない。


だがコレはいいヒントになったかもしれない。

十六夜が言うように、俺は女子に対して口が悪くなったり目つきが悪くなる。それが『女子恐怖症』の特徴であり無意識になるため仕方がないと諦めていた節がある。その結果、十六夜達に好かれてしまったというわけだ。

つまり、優しくすれば気味悪がって離れて行くのではないかと。


「荷物、重くないか?」

「うん。重いやつは間宮の方に入ってるから全然」

「寒くないか?」

「手袋してるから平気。間宮の方が大丈夫?」

「俺は平気。寒かったらカイロあるから使え」

「え、あ、うん」


家に帰って食材を一旦冷蔵庫に入れた。颯太が帰ってくるまで時間がない。


「用意するぞ」

「うん」


用意と言ってもほとんどできあいのもので済ませるつもりだから野菜とかを切るぐらいしかない。型抜きでとっても良かったが十六夜が自分でやりたいと言ったため今回は見送りとなった。


「お前、包丁の切り方どうなってんだよ」

「え、普通に切ってるだけだけど?」

「猫の手はどう......切るときには猫の手だ。こうして手を丸める」


十六夜の手を丸めるとそのまま食材に置いた。


「切る時はあまり上下にしないで押し切るイメージだ。そうすると美味くなるって聞いた」


実際は些細な変化だから気持ちの問題だと思う。

一流のシェフに出すんじゃないなら気にしなくてもいいと思う。


「間宮?それ止めないと襲うよ?」

「な、なにが?」

「わたしに優しくしようとしてるでしょ」

「は?俺が?そんなことあるわけないだろ」

「噓だ!急に優しくなったもん!重さ確認してくれたりカイロくれたり!さっきだっていつもならわたしが怪我するまでなにも言わないじゃん!」

「あのな、俺だって人間なんだよ目の前で怪我されるのだって気持ちいいことじゃない」

「でもいつもは自分から触れようとしないよね」


それは......そうだな。基本的に俺から女子に触ることはない。加羅忍の時みたいにどうしても殺したい時なんかは別だが。


「止める気になった?多分間宮が思ってる以上に露骨だし気持ち悪い」

「それで嫌いになったりしないか」

「......あると思う?」

「ワンちゃんあるかなって。おーけー悪かったからその顔で近寄ってくるな」


真顔でこちらを見つめる紫紺の瞳は中々に恐怖。強制ヤンデレアイテム『包丁』は手にしていないがすぐそばにある状態。

あまり選択肢を間違えると即バットエンドだ。なぜ人生にはセーブとロード機能がないんだ。

早く追加してくれ。


「止めてくれる?いつもの間宮に戻って?」

「分かったから寄るな」

「折角だから」

「え、なにが?」


なにが折角なのだろうか。折角じゃなくてもすり寄ってくるくせに。


「早く作るぞ。颯太が帰ってくると俺の効率が落ちる」


可愛いからね。仕方ないね。

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