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第九十話 怒涛の十六時間耐久

本格的に寒くなって来た十二月。


「ありがとうございましたー」


外へと出ていくお客さんはドアを開けると寒そうに首を引っ込めて歩き出した。

俺は暖房が聞いた店の中にいるが、外は凍え死ぬんじゃないかってくらいには寒い。

まあ、俺が住む地域はまだまだマシな方だ。

地方では人が二人埋まるくらいの雪が積もり場所もあるくらいだからな。


「寒そうですね」

「ああ。ずぶ濡れになったら風邪ひくからな。なるなよ」

「......あの時のことは忘れてください」

「後々恥ずかしくなるって分かってるなら抑えればいいのに」

「抑えられるなら苦労しません」

「発情期かよ」

「なっ!なんてこと!」

「声がデカい!」


慌てて時雨の口を押えた。

常連さんしかいなくて本当によかった。平日の午後は暇を持て余したマダムしかいない。


「発情なんてしてません!」

「なら俺に飛びついて来たりいきなりキスしてきたのはなんなんだよ」

「それは......無意識なので......」

「発情したんだろ」

「発情って言わないでください」

「欲情」


時雨からものすっごいジト目を向けられてしまった。

だが時雨がしたことを生物的に言っただけなのにそんな目で見るなんて心外だ。

恨むなら自分の深層意識だと思うが。


「明日、クリスマスですけど狼斗さんはどうするんですか?」

「特に予定はないな。バイトもシフトは結構埋まってて俺が入る場所ないし」


ただのジョークだからそんな殺意の籠った目でこちらを見ないで欲しいな。先輩方。


「予定が空いていればよかったんですけど」

「気にするな。去年も家族で祝うからっていってバイト入れてなかっただろ」

「それはそうですけど......去年とは違うじゃないですか」

「そうか?俺はいつも通りだが」

「いじわる」


意地悪でもしないと後ろの先輩方が怖いんだよ。見えてないかもしれないけど。

いつ後ろから刺されても俺は驚かない。

終業時間となり俺は時雨を家まで送った。


「あ」

「なに?どうした?」

「いえ、なんでもないです。風邪ひかないようにしてください」

「時雨もな」


時雨と別れた後に俺は家に帰った。


朝、目を覚ますと紫紺の瞳と朝日で輝く金髪が視界に移った。

残念なことに俺の家系は茶髪で、髪色を変えないと金髪にはならない。さらに家族の誰も紫紺の瞳ではない。

つまり不法侵入者か。そうそうにお帰り願わねば。


「帰れ」

「開口一番がそれ?」

「何の用だ。俺は用はない」

「わたしはあるの」


楽しそうに声を弾ませる十六夜に背を向けて毛布に包まった。


「入ろうとするなぁ!」

「痛ったーい!蹴った!酷い!」

「男の布団に入ろうとした奴が言うな。朝から何の用だ。帰ってくれ」

「え、用を聞いといて帰らせるの?」

「当たり前だろ。俺は用なんだから」


ベットの端に座り、正座する十六夜を睨みつけた。

冬休みの朝から人の睡眠を邪魔したのだからそのまま外に放り出されても仕方ないと思う。


「で、なに」

「遊ぼ」

「帰れ」

「命令権執行します!」

「まさかとは思うがこの日のためにとっておいたんじゃなかろうな」

「そうだよ?クリスマスっていう一日のために今まで使わないで置いたの!」よくわかったね?」


出来れば外れて欲しい勘ではあったよ。


「昨日皆にラインしといてよかったー」

「昨日。まさか夜か」

「うん。そうだよ」


時雨の「あ」はこれかー。あの時教えてくれてれば逃げれたのに。

恨むぞ時雨。


「逃げないように絶対に言わないでねって言っといたから」

「おーけー味方がいないってことは十分に分かった。俺は忙しんだ。遊ぶのはまた今度な」

「あ、作業があるならいいよ。してて、勝手にくっつくから」

「邪魔だ帰れ」

「ダーイブ!」

「馬鹿っお前!」


俺のベットへと飛び込んできた十六夜を支えようと手を出すが、それがダメだった。

十六夜の胸が俺の手の上でむにゅりと形を変えた。咄嗟に手を引いてしまいノーガード状態。

そんな状態で攻撃が来ないほど平和ではならしい。


「捕まえた!」

「放せ!このビッチが!」

「あービッチって言った!絶対に放れない!今日一日くっつくの!」

「馬鹿かてめぇは!」


わいわいぎゃあぎゃあと取っ組み合いをした結果、引き剥がすことには成功した。

全体力という尊い犠牲を払って。


「ただ俺の体力を消費しに来たんだったら帰れ。もう十分に疲れた」

「まだ!わたしは今日イチャイチャしたくて命令権を使ったの!時雨ちゃんとかはいいのにわたしはダメなの?」


全員分の報告が行ってる手前、ウソは通じない。

なにか逃げ道はないか......バイトのシフトを交代してもらうというのもアリと言えばアリだが理由がな......『女子と一緒に居たくないのでシフト変わってください』なんて言おうものなら俺はきっと夜に外を出歩けなくなるだろう。

敵を増やすか絶対に勝てない負けイベントをおとなしくやるかの二択。

クソすぎる。


「分かった。今日はお前に従おう。今日だけな」


今日が終わるまであと十六時間。途方もなさすぎる。

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