第八十四話 地獄化回避成功!
「なんで......お前が俺の誕生日を.....」
「なんでだと思う?当ててみて?」
時雨は俺の誕生日なんて知らないはずだし、情報漏洩常習の反面教師ですら知らない情報をどこで。
「間宮とわたしは真尋ちゃんのところで今寝泊まりしてるよね?」
「ああ」
「颯太くんも一緒に」
「まさか」
「そのまさか」
颯太が俺の誕生日を伝えたというのか?確かに俺の誕生日を覚えてくれてはいるが、わざわざ伝えるものでもないだろ。兄の誕生日なんて大きくなればどうでもよくなるものなのに。
「嬉しそうに言ってくれたよ。昨日」
「余計なことはするな」
「やだ」
ここまで食い気味否定がくるとは思わなかった。
そしてここから地獄が待っていることが確定した。
「その情報は」
「勿論全員に拡散済みだよ」
「よし、今日は野宿だな」
幸いなことにいい野宿場所を知っている。麻耶の家という野宿よりひどい状況の場所を。
「なんで逃げるの?今日は間宮が主役だよ?」
「お前らの行動予測が出来ないから帰りたくない」
「ただ間宮狼斗の誕生を祝うだけだよ」
その祝いが呪いに変わらないことを願うだけだ。
六時間目が終わり、いち早く逃げようとしたが見事に捕まってしまった。
隙を伺うがさっきから全くない。どう抵抗しようと捕まる未来しか見えない。
きっと加羅忍真尋の幻惑魔法かなにかだと思う。もしくは精神操作。めっちゃ似合うじゃんかよ。
「出来ればサプライズをしたかったんですが、嫌がると思ったので公表して祝います」
「こんなに嬉しくない誕生日は初めてだ。もう数年遅く生まれたかった」
そうすればこの欠陥だらけの女子に絡まれることなく平和な学校生活(保健室のみ)が遅れただろうに。
「祝うっても準備してないだろ」
「加羅忍真尋は分身の術が使えます」
「使用人の皆さん本当にご苦労様です」
あの人達の苦労と比べたらこの地獄はだいぶマシなのかもしれない。
連行され加羅忍家へと帰ってきてしまった。当然颯太も一緒に。
颯太は兄の悲しみなど知った風もなく、予め買われていたケーキに齧りついていた。
部屋に籠ることも考えたが、俺が寝泊まりしているのは前と同じ部屋。ゆえにマスターキーで簡単に突破されてしまう。
颯太が一緒なためコッソリ抜け出すことも出来ない。
......天はいつから女子贔屓するようになったんだよ。
夏鈴から料理が出来たと知らせを受け、リビングに行くといつもより豪華な食事の数々が並んでいた。
かぼちゃ形のオムライスや幽霊や骸骨をモチーフにした総菜など時期を感じさせるものになっていた。
「ハロウィンには早いだろ」
「時期が近いからいいんだよ。気にすんな!」
調理をしながらいい意味で食べ物で遊ぶなんて器用すぎる。
形だけではなく匂いからしてちゃんと美味しいはずだ。夏鈴の手料理を今まで食べてきた不味かったものなんてなかったが。
「このカップケーキは私が作りました。あとで食べてくださいね」
「断る」
「折角作ったのにですか?」
「自分の前科を忘れたわけじゃないな」
よりによってピンポイントで選ぶあたり加羅忍らしい。
「わたしはまだ用意出来てないからまた今度渡すね!」
「私も同じく」
「気にするな。そういうのが要らないから誕生日を言わなかったわけだしな」
「じゃあ。今あげる!」
十六夜は俺の顔を両手で固定するとタコのような唇で迫ってきた。
ゾッと鳥肌がスタンディングオベーション。勢いあまってわざと最大威力のデコピンをしてしまった。
「いったーい!なに!なにすんの!」
「こっちのセリフだ。次やろうとしたら声帯噛み千切るからな」
「いいじゃん!減るもんじゃないし!」
「俺のSAN値は減るんだよ」
なんだ今の。下手なクトゥルフより凄い減り方したぞ。
未だに心臓がバクバクとうるさい。そして痛い。
「にいにだいじょぶ?」
「ああ。なんとかな」
唯一、颯太だけが回復してくれる。もし颯太がいなかったと思うと......やめよう。自らSAN値を削ることはない。
「間宮ぁ!」「狼斗さん」「間宮さん」「狼斗」
『誕生日、おめでとう』
......今回ばかりは地獄にならずに済みそうだ。




