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第七十話 踏み込んだら襲われるからNG

簡単に昼を済ませた後はショッピングモールに来た。

大型というだけあり服飾雑貨や食料品などおおよそが揃う。


「これ可愛くない?」


時雨が持つマグカップは象の鼻が持ち手の部分となったもの。

可愛いと言えば可愛いが目が変態チックに曲がっているため俺が思う可愛いとはかけ離れている。


「そうか?なんか目が変に曲がってないか?」

「そこが可愛いのに」

「俺はこっちのリスの方が可愛い。これなら目はつぶらだし尻尾が持ち手だしな」


しかしこのつぶらなリス、誰かに似ている。

こう弱々しいのにそれが愛嬌となる超錬成が出来る奴は俺の周りにいる。

片足に体重を預けリスと象のマグカップを比べる時雨の横にリスを並べるとあら不思議。


「このリス時雨に似てるよな」

「どこが似てるの?」

「片面だけみれば強気な目をしてる。けど正面から見れば弱い印象に変わる。そっくりだろ」


俺以外の前では猫を被る時雨にはピッタリすぎるくらいだ。


「私って強気に見える?」

「強気っていうより頑張ってる感はある。クラスじゃ素を見せたことないだろ?」

「ない。見せるのは狼斗さんの前だけだから」


そう簡単に顔を赤らめないで欲しい。

ああ、去年の俺に今の現状を伝えたい。去年はお互いに仕事上での付き合いだけで来る連絡も事務的だったしこうして二人で出かけることなんて絶対にあり得なかったのに。


「そうかい。そいつは嬉しいね」

「真面目に言ってるのに」


その真面目が伝わるから困っている。

いつから好かれていたのかは分からないしその要因となった事件らしき事件もない。

天月時雨という女子がたった一年で心を開くとは思っていなかったしこうなることなんてもっと分からなかった。


「どうすんだ?そのマグカップ買うのか?」

「うん。買おう?。コップ類、少なかったでしょ?」

「確かにプラスチックのコップがあるだけだな。颯太用の」

「不便じゃない?」

「小さいけど、水道捻るだけだから不便には感じない」


一回に多く水が飲めないってだけの話。


「まあ、そんなに高いもんじゃないいからお揃いにしてもいいぞ?」

「え、あ、うん。しよ」

「人をいきなりデートに誘っておいてそこは照れるんだな」

「だって狼斗さんの口からその言葉が出るとは思わなかったから」

「時雨相手なら多少踏み込める」

「他の人は?」

「踏み込んだら襲われるからNG」


相手が引くと分かっているから踏み込めるのです。

そうじゃなきゃ俺は死ぬ。


「私だから?」

「そうだな」

「好き?」

「別に」


こういう時は迷わず即答するべきなんだ。

溜めれば変な期待を持たせてしまうし暴走のきっかけにもなる。

世の男子諸君は覚えておこう。自分が不要だと思う希望をへし折るのだ。


そして横の時雨は頬をおもいっきり膨らませて若干怒っていた。

そりゃ自分が好きと言っている男に振られたらそうなるよな。だがそれで諦めない所が時雨達の悪い所。早々に俺のことなんてクズ男認定してもらって他の男を探しに行けばいいものを。


「好きにさせるから」

「やれるもんなら。一年一緒にいて俺の防御力が高いのは知ってるだろ?」

「知ってる。けど……四人で攻撃すればいつか崩れる。または、既成事実なんかで防御貫通にしちゃえば……」

「おっけ作戦は俺がいない所でやってくれ」


そんなものを生で聞かせられたら夜も眠れない。

家の鍵を五重くらいにして部屋の窓は強化ガラスにして一生部屋から出ない覚悟がなければ聞くことは出来ないだろう。今のだけでもそれくらい怖い。


「大丈夫。嫌がることはしないから」

「迫られることが嫌だって早く気付いて」

「むーり」


可愛く無理とか言うなよ。許しちゃうから。


象とリスのマグカップをそれぞれ買って次の店に。

このショッピングモールは一階は食品や食品雑貨。二階は服飾。三階は小物、楽器、その他サービスという構造になっている。

この時間帯に来るのは暇を持て余した大学生以上の人か、親子連れか……カップルしかいない。

そして俺達はどの部類に入るか。


俺と時雨はそこまで身長が高いわけでもなく、時雨一人なら服装次第で大学生にも見えなくもないが、俺と一緒なら別だ。


「おい、くっつな。歩きづらい」

「デートなんだから当たり前でしょ。もしかして恥ずかしいの?彼女でもない女に腕組まれて」


挑発も加羅忍に似てきやがった。

去年の純粋な時雨を返して。


「はぁ?恥ずかしくないが?歩きづらいだけだが?」

「なら問題なし。行こう」


半ば時雨に引っ張られるようにして俺達はデートを続けた。

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