第六十六話 見事華麗なフラグ建築
文化祭が終わってからというもの学校全体がピンク色になった気がする。
登校時に男女でいる人数が増えたりスキンシップが激しくなった気がする。
羨ましくはないが……アイツらに影響が出てないことを俺は切に願った。
保健室に行けばいつも通りのメンバーが揃っていた。
様子はいつも通りで本を読んだり勉強していたりそれを教えたり、俺に飛びついてきたりした。
「おはようございます。まだ皆さん文化祭の熱が覚めてないようですね」
「加羅忍は平気なのか」
「ええ、まあ、上がるような熱は持ち合わせていませんし」
「冷めてるなー」
「間宮さんほどでは」
俺は冷めてるんじゃなくて元々熱意というものを持ち合わせていないだけだ。
「間宮!寂しかったよ!」
「なにが?一日会わなかっただけだろ」
「夏鈴ちゃんとは会ったのに」
「わざわざ報告したのか」
「来なかったからなにしてたのって聞かれたから素直に答えただけだ」
その素直さによっては俺は死ぬ。
「ピクニックは楽しかったですか?」
「まあな」
「どこまでしましたか?」
知らない?夏鈴は教えていないのか?それとも俺を試しているのか。
当たり障りない情報で許してもらえればいいが。
相手が加羅忍達じゃキツイか?
突発的に始まるクソ雑魚情報戦。
「どこまでとは?」
「二人きりだったんだよ?何もないことはないでしょ」
「なにもなかった。中央公園言って昼食って夏鈴が寝た。起きたのは夕方。そのまま帰った」
間に夏鈴がキスをするということを除けばやったこと全てだ。
「至って普通のピクニックだ」
「狼斗さんにとってキスするのも普通のピクニックなんですか?」
「そんなわけないだろ。時雨、俺がそんなに誰彼構わずキスするような男か?苦手だって言ってる女子に」
「そ、そんなことないですけど」
夏鈴は会話に興味がないのかスマホをいじっている。
「夏鈴からも言ってくれ。なにもなかったって」
「ちゃんと全部言ってあるぞ」
ん?今なんと?
全部?それは夏鈴がサンドイッチを作りすぎた所から気まずい帰り道までのことを仰っている?
それとも危ないシーンを切り抜いたクリーン版のこと?
どっちを伝えたかによって俺が立つ足場の強度が段違いなんだが。
「告白のこともキスのことも言った」
おっけー。俺の足場が片足分しかないことが分かった。
このクソ雑魚情報戦は俺の大敗だ。
「なんで重要な部分を隠したの?」
「俺がそこまで重要視してないからだ。夏鈴からも答えは急ぐなって言われてるしな」
「言いたくなかったんですよね?私達がまたなにか企まないように」
「分かってんじゃん」
高校二年生も折り返しそろそろ自分のことを理解してほしい。
特に兎。抱きつくな密着するな半径五メートル以内に入るな。
「夏鈴ちゃんがしたならわたしもする権利ある!」
「そんな権利剥奪してやる。俺だって分かってたら拒んだ」
「やってしまったことは仕方ないですよね〜?大人しくされましょう?」
「楽しそうだな悪女」
「最高に楽しいエンターテイメントですね。間宮さんは」
「助けたらもっと楽しくなるぞ」
「いえ、絶対に放置した方が楽しくなると確信を持ってますので。頑張ってください」
性悪女が。
人が兎に襲われてたら助けるだろ普通。
アイツラヒトノココロナイ。
「保健室で淫らな行動は控えて貰おうか」
やっと女神の降臨だ。
最後降臨したのは半年前の情報の悪魔が現界した時だ。
「ここの責任者はわたしなんだ。面倒ごとを増やすな」
いつの間にか堕天してやがった。
ダメだ。この女神はもう使えない。
「間宮だって夏から動きっぱなしで疲れてるんだ。構うのはもう少し後にしてやれ。下手すれば倒れるぞ」
「それはそう」
やっぱり堕天なんてしてなかった。
保健室の女神様は健在だった。
「倒れさせて看病するというのも手では?」
「黙れ悪魔。倒れるこっちの身にもなれ」
「大丈夫です。飽きる暇がないほどに私達で看病しましょう。起きた時には前より快調になるかもしれませんよ?」
「そのまま骨だけにされそうだから遠慮しとく」
まだ颯太とも遊び足りない。ゲームもしたりない、啓介先輩に別れの挨拶もしてない。
ちくしょう!こんな所で死んでたまるか!俺は先に逃げるぜ!




