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第五十八話 さて、文化祭の準備に取り掛かろう

修学旅行という名の家族旅行を終えた俺はいつもの日常に帰って来た。帰ってきてしまった。この場所に。

目の前には大きな木の板があり時雨がペンでなにかを書いている。

二年生は特に忙しのが秋だ。夏休みが終わって早々修学旅行がありそれが終われば三週間となく文化祭。

その間、授業は止まるため俺的にはありがたかったりする。


「なにこの木の板」

「文化祭で使う背景だってよ」

「その色塗りを押し付けられてしまいました」

「この指示書通りに塗るんだって」


店てもらった指示書には必要な背景が書いてあるだけだった。

どの程度の高さのものなのか。全て使うのか勝手に切って平気なのか必要な事が足りなさすぎる。

こんなの一流の大工でも無理だぞ。


「加工は別にいいそうです」

「いつも授業サボってるんだから偶には仕事しろってよ。あいつら」

「サボってるのは事実だろうが」

「だから睨むだけで我慢した」


それは我慢と言えるのだろうか。

むしろその先は踏み入ってはいけない部分だと思うが。


「どこで塗るんだよ。教室は場所ないだろ」

「ないな。セッティングあるし楽しそうに着飾ってるし」

「じゃあどこで」

「作業場を借りましょう」


時雨が言った作業場はおそらく塗装屋の作業場だろう。

あそこなら下塗り剤もあるしペンキの色も種類もある。少なくとも学校で用意できるものよりは多いし上質だろう。


「そうか。頑張れよ」

「え、手伝ってください」

「なんで。俺は参加しないのにか?」


体育祭、修学旅行同様に俺は文化祭にも出る予定はない。

バイトも特に入れてないし用事もないが文化祭に出る理由はもっとない。


「私はいつも裏方ばかりなので塗りに自信はないです」

「全員でやればいいだろ。多少下手でもそれが味になる」


確かに時雨はいつも裏方で実際に作業するのは俺と啓介先輩だ。

確かに上手く見せる塗り方はあるがそれを絶対に守らなきゃいけないわけじゃない。

料金を支払ってもらってるわけじゃないなら自分の味というのを出しても怒られはしない。


「おれ達は出るんだよ。そこで文句言われんのも嫌だ」

「そうだよ。もう頭のおかしな子って皆見てくるんだよ」

「それは正しい」


バイク乗っている途中に告白をするな。

色んな意味で心臓痛くなって横転しそうになったわ。

それをしていいのは漫画とかアニメの世界だけだ。

暴れる兎を押しとどめ時雨に計画を聞いた。


「今図面を書いていますがかなり時間がかかると思います」

「そりゃ使う背景しか書かれてないからな。この波の背景だって手前の波と奥の波の色指定もなければ高さの指定もない。正直無理だぞ。


突き返せと言いたい所だが時雨にそれが出来たら保健室に持ち込むことはなかっただろうよ。

せめて寸法さえあれば知識がない十六夜達でも出来る。


「っしゃ。おれが聞いてくる!」

「大丈夫か?イラついても殴るなよ」

「任せろ。拳の速さなら誰にも負けねぇ!目撃者ごとお陀仏だ」

「加羅忍。一緒に行ってくれるか。こいつ一人じゃかなり心配だ」

「いいですよ。どこを聞けばいいですか?」


俺は指示書に書き込み夏鈴に渡した。


「じゃ!行ってくるぜー!」

「私は少しでも進めておきます」

「わたしはどうすればいい?」

「必要な色を確認でもしてればいいんじゃないか?数が多ければ多いほど大変だけどうまく塗ればそれなりになる」

「分かった!」


......なぜ俺は指示をしているんだろうか。

これはあの四人の誰かの役割のはずなのに。部外者の俺が指揮を執っている......この調子で嫌ってくれないかな。


「狼斗さん。ここの幅ってどのくらいにしたらいいですか?」

「下が四百だから三百......そうだな。三百にして百の所に線引いて色の濃さで奥行きを出すか」

「あ。そうですね。色で奥行きを出しましょうか」

「間宮ぁ!この色使いたいんだけど名前が出てこない」

「そんな正確に出さなくてもいい。迷ったら濃い色とか薄い色とか書いとけばいい。それを作業場見つければいいだけだ」

「そっか。間宮頭いいー」

「十六夜が悪いだけだ」

「はいライン越えた!」


はぁー?夏休み平気で俺の大地雷を踏み抜いた挙句滅多刺しにしたのはどこの誰だおい。

今更ライン云々の話はかなり今更だ。


「聞いてきたぜー!」

「殴らなかったか?」

「机が少し凹んだだけです」

「台パンはおやめください」

「そのおかげで大体の設計図が手に入ったんだ安い代償だ」


おそらく机は泣いていい。


夏鈴に渡された設計図を見るとガタガタの数字が書かれていた。

凄いな。ただ文字を見ただけなのに書いた人の感情が分かる。さぞ怖い思いをしたんだろう。


「これならすでに時雨が書いたものを消さずに行けるな」

「これ三百で書いてますけど」

「三メートルってデカすぎじゃね?」

「三百ミリだ。センチに直せば三十センチだ」

「建築家など寸法を使う人が使う単位ですね」

「なにそれ分かりずら」

「逆に寸法測る時に寸法を使う方が分かりずらい」


頭が切り替わるとどうしても癖で出てしまう。


「癖になってんだ。長さをミリで答えるの」

「なにそれカッコ悪」


黙れ小娘。

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