表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/113

第五十四話 嘘じゃないけど嘘を混じえた本当の話です

抹茶を片手に俺は会話を盗み聞きした。

と言っても盗聴器をつけているわけじゃないから質は最悪だ。


「どこまで行くんですか」

「んーホテル?」

「ぶっ飛ばしますよ」

「冗談。処女じゃなきゃ魅力はないから」


なんか聞いてはいけない気がしてきた。


「そんなことしたら私のナイトが黙ってませんよ?」

「ナイト?どこにいるの?」

「どこかでお茶でも飲んでると思います」


もしかしてバレてる?

いやまさか。普段着ない服着てマスクと伊達メガネもして無関心そうにスマホを弄る男だぞ。

なにも不自然な所はないはずだ。

ちなみにコーディネートは加羅忍のところのお手伝いさんがやってくれました。


「なんの用ですか。ここまで連れてきて。あまり遅くなるとバレますよ」

「うちの車用意してるから少しだけ付き合ってよ」

「嫌です。触らないでください」


加羅忍が本気で拒絶するところは初めてみた。

いつも俺が本気で拒絶しても十六夜を焚きつけるなりゴリ押しでプライベートスペースに攻め込んでくるのに。


「本当に少しだけでいいから!サイズ見るだけだから!」

「離してください!」


加羅忍の手首を握り車に押し込もうとする。

人がいないのかいるのは男一人だけ。車に乗られたら追跡は厳しい。

動くなら今しかない。


俺はカップをちゃんとゴミ箱に捨ててからポケットから防犯ブザーを取り出した。

小学生とかがつける卵形のあれだ。

本当は音爆弾なり閃光弾が欲しかったがそんなものを街中で投げれば一般の人も視力か聴力を失ってしまう。

その代用品が防犯ブザー。少しでも追撃が遅く慣ればそれでいい。


俺は加羅忍の手を引くとさっきの土産屋まで走った。


「借ります!」

「頑張っての」


道路に面した逆の店舗前にはバイクが止めてあった。

二人乗りが出来るような大型のバイクなんだが最近まで誰かが乗っていたのかかなりしっかりと手入れされている。


「乗れ!」

「はい」


加羅忍にヘルメットをかぶせ鍵をさして回すとエンジンがふいた。

……あのおじいさん。これ乗るの?

倒したら絶対に立ち上がらないと思うけど。バイクもおじいさんも。


「どこまで行くんですか!」

「取り敢えずあの城までだ!落ちないように捕まってろ!」


後ろから見える車全てが追手に見える。

流石に銃は使ってこないかもしれないがどこに敵がいるか分からない状況。

呼吸が荒くなるし女子に抱きつかれているというのもあり鳥肌が止まらない。

ただ事故らないようにしよう。事故って許されるのは可愛いシスターだけだ。


「あの……」

「今話しかけるな」

「もしかして初めてですか?」

「なにが。人を乗せるのは何度かある。けど追われてる状態ってのは初めてだ」

「残念です。捕まらないように頑張ってください」


ならあまり俺の腹をその細腕で締め付けないでください。

下手すれば事故って死ぬぞ。

そして到着したのは柳城。城の周りには柳が植えてあり昔の街並みを再現されている。

観光スポットの一つであり夜になると幽霊が出ると噂のホラースポットでもある。


「大丈夫か。怪我は」

「ありませんよ」

「取り敢えずはよかった」


俺は安堵のため息をついたが……どうも加羅忍の様子がおかしい。

なにか企んでいるのはいつものことだが……嫌な予感がしてくる。

思えば、結婚の縁談があり相手が動くかもしれないと聞かされたのは加羅忍からだ。そして助けてくれと言われてのも加羅忍とその悪女の執事、じいやだ。

もしや俺はハメられたのでは?


「なにが面白い」

「助けてくれるんですね……くく」

「ハメやがったのか?」

「いえいえ。縁談の話も相手が実力行使してくるのも本当です。ですが……あの人は無関係です」

「もう一度言ってくれ」

「あの人は、超がつくほど無関係です」

「この柳城にはな、本当に幽霊が出るみたいだぞ。なんでも昔に殺された女の霊とかで。結婚を間近に浮気された挙句浮気相手に男を取られこの橋から身を投げたそうだ。ま、ロクでもない奴がいるよな」

「現実を見ましょう?」

「見たくない現実の一つや二つあってもいいと思う」


俺は無害な人になんてことを……栓がここにあるから今も鳴り続けてるぞ……はぁ。


「なぜ言わなかった」

「その方が面白いかなって」

「置いてくぞ」

「そうなったら二度と会えませんね。ほら、あそこに見える二人組が相手の追手です」

「……本当だろうな」

「走って来てますが?」

「なんでそんなに冷静なんだよ!取り敢えず乗れ!」


加羅忍をバイクの後ろに乗せ、俺は全く知らない道を走った。

柳城から逃げるとすぐに追手の車が後ろについた。ここからが本番。さっきのはリハーサルと思うことにしよう。そして、あの人にはちゃんと会って頭を下げよう。拳を受ける覚悟もしておこう。


「どこか隠れ家的な場所はないのか!?」

「ありません。地元じゃないので」

「こうなるって分かってたなら用意しとけよな」

「分かってたから用意しませんでした。間宮さんとドライブですよ」

「捕まったり事故ったら二人とも死ぬが?」

「デート・ア・ライブですね」

「もういい。喋るな」


面白すぎてハンドルを急に切りたくなっちまう。

どんだけ走っても追手は振り切れなかった。まだ相手が道路法を守ってくれているのが幸いしているが、いつ強行手段に出るか分からない。


「警察は頼れないのか」

「なにも怒ってないとなると難しいです。それに学校にも迷惑をかけてしまいます」

「十分迷惑になってると思うが?」


現に加羅忍真尋が行方不明になっているのだから。


「その点がご心配なく。ちょっと私用で抜けますと連絡しましたから」

「そうかい。その調子で誰かに助けを求めたらどうだ」

「女の子にですか?か弱い女の子を巻き込むって言うんですか?見損ないますよ?」

「普通の男子高校生を金持ちの縁談に巻き込んだのはどこの誰だ!あん!?」

「ごめんなさい♡」

「可愛くないし許さねぇからな。特にさっきの!」

「でも乗せてくれるんですね」

「万が一本当だった時に後味悪くなるからな」

「そういう所好きですよ」

「止めろそういう事言うの止めろ。鳥肌でハンドル操作ミスるから」


逃げるのに専念した方がいいか。

今加羅忍と会話したら心まで疲れてしまう。俺は初めて神に頼み事をしたかもしれない。


『どうか後ろの化け狐を黙らせてくれ』と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ