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第四十話 道着に紐パンは聞いたことあるけど浴衣に紐パンは初耳

日が暮れると道路には多くの屋台が出来、昼間と変わらない賑わいを見せる。

提灯が下り浴衣姿の人が多く見える。焼きそばやたこ焼きの濃い匂いと祭り特有の炭火の匂いが鼻をつく。

俺は私服姿で街路樹の側で待っていた。


「まーみや!おまたせ〜」

「遅い。二十分も遅刻だぞ」

「女には色々あんだよ。そう怒んなって」


そう言う夏鈴達は見事なまでに浴衣。

十六夜は金魚柄、時雨は朝顔、加羅忍は藤、夏鈴はデフォルメされたライオンの浴衣。

個性が出てて素晴らしい。兎がすり寄ってこなければ。


「あー似合ってるよ」

「心が篭ってないなー」

「こんな可愛い女の子を侍らせておいて無関心では後ろから刺されますよ?」

「自分を可愛いというその神経が既にブス」

「似合ってませんか?」

「だから似合ってるって。似合いすぎてデフォルト装備みたいだ」


特に加羅忍と夏鈴は似合いすぎる。


「加羅忍。体調は平気か?」

「どうしてですか?」

「朝から暑いなか働いて夜はまた暑いなか動くだろうが」

「優しいんですね。でも大丈夫です。私はあまり動いていませんし休む時には休んでますから」

「ん。そうか」

「イチャイチャしてないで行こうよ!」

「そうだな。帰るか」

「待って!行かないで!捨てな……」

「分かったからその口閉じろ」


なにが捨てないでだ。兎を拾った覚えは一度もないが。


「どこから回る?」

「適当に回ろう!」


そう言って歩き出したはいいものの……。


「どこ行ったアイツら」

「さぁ。どこでしょう……」


ものの見事に逸れた。

側にいるのは時雨だけ。他三人は人ごみで逸れてしまった。

問題起こしてなきゃいいけど。


「三人を探すが、大丈夫か?」

「なにがです?」

「足。赤いぞ」

「……そんなことないです」

「なぜに隠す。恥ずかしいことじゃないだろ」


慣れない履き物で歩いていれば靴づれもする。

俺だって革靴履いた時にはかかと靴づれしたしな。

特別珍しいことじゃない。


「あと、あまり近づかないでください」

「は。今更?」

「い、いえ。そうではなく。今……るので」

「ん?なんて?」


難聴とかではなく本気で聞こえない。

時雨は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしてもじもじ。時雨が俺相手に恥ずかしがることなんて想像つかない。


「今!紐パンを履いてるんです!」


おーけーよく聞こえた。

俺以外にもな。


「ちょっと来い!」


時雨の手を引きさっきとは離れた場所まで来て事情を聞く。

まあ、大方予想がつくが。


「真尋さんに『浴衣は下着の線が出るので着替えましょう』と言われ……履きました」

「予想を裏切って欲しかったなー」


なんなら紐ぱんの件は嘘だったと言って欲しかった。

どうするかな……紐パンの時雨を一人置いていくわけにもいかないしかと言って三人が問題を起こさないとも限らない。

特に夏鈴は停学明けで疑われたらどうなるか分からない。

全員早急に探す必要がある。


「時雨は歩けるか?」

「……いけます」

「無理だな休むぞ」


そんなほっぺを膨らませてもダメだ。

即答しなかった時点でダメだ。


ベンチに座った俺は時雨の足にテープを巻いた。


「なんでそんなもの」

「相園さんから渡された。必要だろうからって」

「誰かが怪我すると分かっていたと?」

「腐っても女だからな。あの人。そういう経験があるのかもしれない」

「ですが」

「いいから。厚意には甘えとけ」


足にテープを巻き顔を上げると青生地に紫の朝顔が暗闇でも少し光って見えた。

朝顔は朝の間しか花を開かず限定的だ。

俺の前でしか本性を見せない時雨にはぴったりだ。


「あまり見ないでください。紐パンと言ってもそこまでセンシティブじゃないので」

「は。俺はただこの朝顔を見てただけだけど?」

「んっ!蹴りますよ!」

「照れ隠しで人の顔に膝入れようとするな。他意はない」


パンツを見ようとしたところで透視能力でもない限り無理がある。

それに、俺は紐パンというものをTwitterの絵でしか見たことがない。

実際に履いていると言われたところで想像すら出来ない。


「浴衣って暑くないのか?」

「うん。暑くないですよ。生地がかなり薄いので」


触ってみた感触はレースのカーテンのような素材。

それに色をつけて透けないようにしているという着心地はあまりよくなさそう。


「着心地はいいですよ。さらさらしてますし汗をかいてもすぐ乾きますから」

「浴衣も進化してんだな」

「去年夏祭りをバイト仲間と行った時は布地だったから」

「俺を騙した奴な」

「まだ言う?」

「死ぬまで忘れない」


屋台の手伝いと称し俺を呼び出しそのまま連行するという悪行。

まだ時雨にも慣れていなくて苦労したのは悪い思い出。


「そろそろ探すか。ゆっくり行こうぜ」

「電話すればよくないですか?」

「俺が知ってるとでも……あ」


そういえばそう言えば登録されてたな。兎が一羽。

電話をかけるとワンコールで出た。


「間宮今どこ!助けて!」

「落ち着け今どこだ」

「たこ焼き屋の前」


たこ焼き屋は俺たちの居場所からそんなに遠くない。

なんなら『タコ焼き』の文字が見えている。


「時雨はここで待て。すぐに戻る」


足を怪我した時雨を残し、俺は兎救助に向かった。

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