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第三十七話 形勢逆転

休憩が早まり俺は地獄へと突き落とされた。

炎天下、美少女と海で遊ぶ。なんと青春チックだろうか。

俺に『女子恐怖症』なんてものがなければな。


「やめろ近づくな。くっつくな。鳥肌が分からないのか」

「大丈夫だって」

「なにを根拠に」


冷たい海水に足が入っているはずなのに冷たさがまったく感じない。

むしろ腕に周囲の暖かさがより際立った。


「さっきはありがとうございます。私、なにも言えませんでした......」

「気にするなよ。あれも仕事だ」

「だから助けてくれたのですか?狼斗さんはそこまで薄情でしたか?」

「ちげーよ。こいつ、いいんちょーの悪口言われた瞬間攻撃的になったぞ」

「なんのことだか。俺は仕事をまっとうしたまで」

「またまたー照れ隠し下手なんだからー」

「頬をつっつくな」


十六夜を引き剥がし俺は手の中に水を溜め、水鉄砲のように発射した。


「きゃっ!」

「あんな奴らの事なんて気にするなよ。時雨は十分に頑張ってる」

「ですが世の中にはああやって馬鹿にする人たちもいて......」


俺が水を飛ばそうとするまえに飛ばしたのは十六夜だった。


「気にすることないよ。頭も心も軽い人達が言ったことだもん」

「なかなか刺す言葉言うじゃねぇか」

「怖かったもん。知らない人に声かけられて」


やっぱりナンパは怖いものなのか。


「じゃあ聞くけど!知らない女の人に声かけられたら怖くない?」

「まぁ、確かに」

「でしょ~」

「特に女性が男性から声をかけられたら怖いですよ。力に訴えられたら勝てませんから」

「夏鈴ならいけそう」

「一人ならいけるだろうが三人相手だとな......砂場じゃなければワンちゃん」

「そこはそこまで女捨ててねぇって言って欲しかった」


よかったなさっきの男ども。

街中だったら夏鈴に殴られてたぞ。


「間宮さん?私の勝ちですね」

「は、なんの......あー」


逃げるはずだったのに。

流れで遊ぶことになっていやがる。まさかさっきの男も加羅忍の仕込みだと疑いたくなる。


「流石にそこまでは。ですがこの展開は使わない手はないなとなにも言わずにいただけですよ」

「クッソー。流れで全然違和感に気づけなかった」

「折角ですから遊びましょう?」


加羅忍は水鉄砲を見せると全員に手渡した。

かなりのサイズでタンクに目いっぱいに溜めると子供じゃ持ち上げるのが大変なほどの重さになった。

タンク内の気圧を高めて発射するタイプのもので当たると痛い。

なぜわかるかというと横のヤンキーが俺のおでこ目掛けて発砲したからだ。


「ここはそうでもないがその網から先は深いから気をつけろよ」

「はーい」


水鉄砲による遠距離攻撃。

これなら相手が男だろうが女だろうが関係ない。

触れられなければ俺の勝ちだ。そう思っていた時期が俺にもありました。


「間宮守って!アレ痛い!」


十六夜は俺に抱き着きそのふにふにとした身体を押し付けてくる。

俺の手足はしびれまともに引き金すら引けない。


「アイツ今スタンしてんぞ!撃て撃て!」

「お前ら、俺になんの恨みがあってこんな仕打ちを」

「特にないけど強いて言うなら罰だな」

「なんのだ」

「自分で考えろ!」

「ああそうかよ!」


ゲーセンで鍛えてエイムを舐めるな。

俺は引き金を単発で三回押すと三人のへそにヒットさせた。

肌に当たって痛い水圧のものがへそに当たるとどうなるか。

答えは簡単、背が丸くなる。


「俺からは日ごろの恨みを晴らさせてもらう」


丸まった背中にあるのは水着の結び目。

銃口を向けて引き金を引こうとした瞬間、「ダメ!」という声が聞こえ、後ろから横に振られた俺の体は水に沈められた。

鼻からおもいっきり海水を吸い目頭が熱くなる。

器官にも入ったのか咳が止まらない。


「お前......俺を殺す気か」

「だってビキニの結び目狙ってた!あんな水圧で撃ったらほどけちゃうよ!」

「水の中に入れば平気だ。しゃがめば浸かれるだろ」

「そういう意味じゃなくて!優しさはないのって話!」

「女子にかける情けは持ち合わせてないな」

「鬼!悪魔!むっつり!」

「待て最後のは心外だ。別に胸が見たいわけじゃない」

「ではなぜ狙ったのですか?」

「言っただろ。日頃の恨みだと」

「恨みっておれ達なにもしてないだろ」

「こうして遊ぶようになったのはなーぜだ」

「お互い欠点あるもの同士手と手を取り合って......?」


時雨がいうならそうだな。俺と時雨はそういう暗黙の了解を持って今まで一緒に仕事してきた。

だが十六夜ら三人は別だ。


「問答無用で俺の安地を危険地帯にしたお前らの罪は重い」

「そうですか。覚悟、出来ていますよね?」

「ん?なんの?」

「乙女の胸を衆人環視の前で露わにしようとした罪は重いですよ?」


いつも控えめに笑う加羅忍が今だけは口角を上げて満面スマイル。

だが目だけは笑っておらず今から殺すと言わんばかりの眼力。俺でなきゃちびってる。


「皆さん準備はいいですか?間宮さんも」

「よくない。いくない。四人で寄ってたかって集中砲火はとてもよくないと思います」

「私刑執行です」


楽しそうな加羅忍の声と主に高水圧の水が俺の肌に突き刺さった。

撃ち返そうにも後ろの兎がそれを許さない。

全員の水鉄砲のタンクの中身が空になる頃には俺の肌は真っ赤になっていた。

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