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第三十六話 ライフセーバーの仕事が過酷すぎな件

午後になれば俺は黄色いビブスを着て高椅子に座る。


海水浴場でよくあるのが引き潮に子供が攫われるパターンだ。

それを防止するために俺たちライフセーバーがいる。

俺の仕事は監視と引き潮による誘拐の警戒。

近くに擦り寄って来た兎の世話じゃない。


「へい彼氏ー今暇?」

「仕事中だ。散れ」

「やーだー。遊ぼうよ。熱中症で倒れるよ」

「安心しろよ。屋根あるし帽子あるし水もある。対策は万全だ」

「むー!ケチ!」


仕事投げ出して遊び始めるライフセーバーの方がどうかしている。

十六夜達に絡まれないように作った拘束時間だ。有意義に使わせてもらう。

ただ休憩時間をどう潰すかが問題だ。この暑さの中ずっとやらせて貰えるわけもなく先輩と交代することになっている。

時間にして一時間半。逃げ回るか。


改めて辺りを見渡してみると人が多い。

家族連れやカップルや友達同士で来ている集団もあちこちに見える。

波打ち際で遊ぶ子供や少し奥に行き泳ぐ若者。砂で城を作ろうとペタペタと頑張る人の姿も見える。


全員が夏を謳歌し楽しんでいる。

かくいう俺はどうだろうか。唯一の楽しみと言えば......颯太とプールに行くくらいか。

高校生らしい青春はない。


「ライフセーバー!」


遠くから呼ぶ声に首だけ振り向けば怖い顔をした夏鈴がこちらに向かって叫んでいた。

その近くには十六夜達もおり男達と話している。

ナンパにでもあっているのだろうか。遭っていてもおかしくはない。

大人しくしていれば可愛い。浜辺の視線を集めて当然だ。


「狼斗!助けろ!」


近くまで走って来た夏鈴が俺に噛みついた。


「どうやって?」

「いいから来い!」


俺の脚を引っ張り引きずり降ろそうとしてくる。

自分で降りるから引っ張らないでほしい。


『二番高椅子誰かお願いします。間宮問題対処に当たります』

『了解』


通信機器から先輩の声が聞こえ俺は揉めている十六夜達の元へと連れてこられた。


「ライフセーバーはお呼びじゃねぇぞ!」

「帰れ帰れ!」


下手に出るなら見逃そうと思ったが馬鹿にされたら黙ってられない。

これも仕事の内を割り切り俺は声を出した。


「迷惑行為は困るんですよ。今彼女達の一人から助けてと言われたもので。やるなら他の場所でやって貰えませんかね?」

「迷惑?かけてないだろ?声をかけてるだけなんだから」

「世の中には声をかけられただけで負担になるって人もいるんですよ」

「はっ!いるわけないだろ!そんなんじゃ生活できないだろ!」


バカだな。

今お前達は天月時雨という人物を侮辱した。

コミュ障で人と極力話したくないのにそれではダメだからといい意味で猫を被り頑張っている彼女を馬鹿にした。

それだけで四人の評価は駄々下がりだ。


「お前、やっかみに来たんだろ!夏にもなって彼女もいなくてボッチだから!」

「あっはは!だからか!だからおれ達を注意しに来たんだ!」

「残念だったなーボッチ」


抑えろ夏鈴。殴りたいのは俺も同じだ。だが堪えろ。


「もう一度だけ言います」


俺は手に持ったメガホンのスイッチを入れると声を出した。


『他の方が嫌がる迷惑行為を止めてください。やっかみとか妬みとかではなく!これは常識ですよ!』

「うるせぇ!メガホンなんていらないだろ!」

『貴方方が注意を聞かずにナンパなんてするからです。さっきも声をかけていましたよね?違う女性に。一緒じゃないってことは失敗したんですね。ご愁傷様です』


声を大にした方が勝つというのは今や常識。

この場の注目が俺達に向けられたら俺の勝ち。


「てめぇ!」


ビブスを深まれ男の顔が至近距離に迫る。

眉間には皺が寄せられ怒りが窺える。

畳みかけるなら今だ。


「事実でしょう?注意してもやっかみだの妬みだのと。そんなに彼女が欲しいならちゃんとしたサイトに登録してちゃんとした出会いをすることをおススメしますよ。それともこの夏だけの体だけの関係を望んでるですか?」

「最低ですね」

「引くわー」

「ちげぇよ!本気で彼女をっ!」

「ならナンパではなくちゃんとした出会いを。ネットが発達した昨今は趣味がある人とマッチング出来ますから」


俺は笑顔で返した。

俺がその場を立ち去るとなぜか十六夜達までついてきた。


「おお、メガホン持ち出してなにするのかと思えば。大演説かい」

「すいません。でも必要なんですよ。一対多数で勝つためにはね」

「面白かったから許す。お前もう休憩入れ」

「え、でもまだ時間じゃ」

「ああいう連中は何度でも来る。彼女達を守るためだ」


それなら納得。

かと思ったらそうでもないらしい。

先輩は俺にだけ聞こえる声でこう言った。


「出来ればオレの近くで遊んで欲しい。それだけで時間なんて忘れられる」


俺は遠くで遊ぶことを誓った。

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