第三十話 「パンツ見えてるぞ」が効かないだと.....!?
颯太の登校二日目。
二日目になれば慣れて来たのか大いにくつろぐようになった。
「すっかり王子さまだねー」
「みー!」
「可愛い!間宮もこれくらい甘えてくれればいいのに」
「そんな甘えた日には俺は恥ずか死ぬ」
甘えるのは子供の特権だ。
大人になれば甘えるのは難しくなる。なら今、甘えられるだけ甘えればいいさ。
「甘えるとまでは行かなくとも頼ってくれてもいいんですよ?」
「だいぶ頼ってると思ったが。このノートだって時雨と加羅忍から借りたもんだし、分からないときは夏鈴に聞いてる。な?頼ってるだろ」
「わたしがいなーい!わたしも頼ってよ!ねぇ!」
「頼ることがな……颯太の面倒みてくれてるだろ?」
「今即興で考えたでしょ」
「だからなんだ」
「開き直った!そうじゃなくて!日常的にの話!」
と言ってもな、他の三人のスペックが高すぎて十六夜の役目がないんだよな。
十六夜に出来るなら俺にだって出来るし十六夜に頼んだら俺はまったく動かないクソ野郎になりそうだし。
「大丈夫!傲慢クソ野郎でも見捨てないから!」
「そうか。勉強の邪魔だから出てけ。それが頼みだ」
「いやだ!もう二時間がんばったんだからいいよ」
「いいよじゃねぇよ。単位落とせ」
「夏休みに補習がありますから。それに全部出れば単位出ますよ」
「ガバガバ単位が」
ま、俺も夏休みは補習確定している人間だけども。
保健室での勉強じゃ足りない部分が出てくるから仕方ないとしても……今年はこいつらがいるのか。
どうにか保健室という領域は死守せねば。
「わたしを頼ったらいいことあるかもしれないよ」
「十六夜が動いていい方向に動いた試しがないんだが?それでもいいことあるかもとかほざくか」
「うん!」
元気とでかい胸が取り柄のような女に用なんてない。
十六夜に頼むと見返りが怖いし。
「なら大人しくしといてくれ。それが頼みだ」
「それじゃつまらない!」
「頼み事に面白さを求めるなよ」
「もっと役に立てること!」
「ない」
「そんな〜」
落ち込む十六夜に加羅忍が忍び寄りなにか耳打ちした。
「そうだよ!自分で探せばいいんだよ!」
「なに入れ知恵した」
「いえいえ、心理学者やカウンセラーへの第一歩を囁いただけです」
「詳細を言え。なにを言ったらこんな飢えた獣みたいな目で見られなきゃいけない」
「役に立つ……役に立つ……抱きつく」
「おお、最後だけおかしいぞ」
こちらに近づく十六夜を遠ざけながら助けを求めるが誰も反応しない。
唯一の頼みの夏鈴は面談室。焚きつけた加羅忍は論外、時雨も助ける気がないのか笑うだけだ。
笑ってないで助けてほしい。
「時雨助けっ!くっ!」
「隙あり!」
十六夜に飛びかかられその場に尻餅をついてしまった。
組み伏されたが最後、抜け出すことは不可能。
更に追い討ちをかけられた。
「にいに!みー!」
「颯太!?加羅忍!お前!」
「激しく動けば颯太さんも巻き込みますよ」
「ふざけるな」
「ふざけてなどいません。乙女が役に立ちたいと言っているのですから受け入れるべきでは?」
「俺の場合は例外だろ。その乙女が地雷なんだよ」
「ならより我慢しましょう。二日連続密着すれば少しはマシになるかと思います。がんばってください」
「早く……退け」
二度目の密着ということで症状も軽い……そんなことはない。
なんなら症状は重くなっている。治るどころか重症化。
「なにか役に立てることは」
「だからな……」
「ないならこのままくっつき続けるけど?」
「くっつき続けたらどうなりますか?」
「知らない。そんな長い時間密着されたことない。させたこともない」
「ならわたしが初めてじゃん!」
「嬉しそうでなによりだがそろそろ離れろ腰が痛い」
「おじいちゃん」
「お前の体重がもろかかってんだよ!痛くもなる!」
組み伏せられる状況のなにが悪いって、拒否反応が出るのもそうだが体重が腰に行くためベルトに硬い地面に体重で痛くなることだ。
「ならこれならいいよね」
「は?」
腰を浮かせパンツを見せた十六夜は俺の腹上あたりに座った。
これでもう完全に動けない。
どんなに腹筋があろうと人の体重を持ち上げることも出来ないし力学的に不可能な位置。
「颯太もお前……重くなったな」
女子高生プラス三歳の体重は俺にとっては重い。
漫画や小説で女子高生は軽いなんて表現があるがあれはその人限定であり普通であれば重い。
現に今、腹筋の力を抜いたら胃が潰れてしまう。
「パンツ見えてるぞ」
「いいよ。減るもんじゃないし」
そうだった。
十六夜と夏鈴には「パンツ見えてるぞ」が効かないんだった。
俺は黒いパンツに水色の蝶が印字されたパンツを見た後天井を見て意識を手放した。




