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第二十九話 背後を取られた時の為に護身術を習おう

「可愛い.....」

「しばらく会わないだけで随分と大きくなりましたね」

「子供の成長速度は早いからな」

「私もこんな弟が欲しかったです」


颯太がいると知った十六夜達は保健室に入りびたるようになった。

単位落として留年しないかな.....。


「颯太の面倒を頼んだが授業サボってまでしなくていいんだぞ」

「今日逃したらいつ颯太くんに会えるか分からないから」

「目的ないのに会う必要ないだろ」

「会いたいなら狼斗さんの家に行けばいいのでは?」

「追い返す」


颯太本人はベットの上で満足そうな顔をして寝ていた。

十六夜も今日は静かだ。


「休園って今日だけ?」

「いや、設備を強化するとかで一週間だ」

「では一週間学校に颯太がいるんですね。あ、でも途中休みがあるので実質四日ですか」

「美咲さん。やりましたね」

「叫びたいけど颯太くんがいるから我慢する」

「大変だな。おれんとこは親が有給取ってたぜ」

「有給は颯太が風邪ひいた時とか具合が悪い時のために取っておくんだと」


改めて親というのは大変だなと思う。


昼の時間になれば颯太も昼食をとる。

バックから颯太の弁当を取り出し広げた。


「そいじゃあ、いただきます」

「いただきま!」


颯太が食べる横で俺はパンを食べた。


「間宮さんが昼の時間に物を食べるのって珍しいですよね」

「授業の合間とか中に間食してんだよ。昼は誰かさんのせいで騒がしくなるからな」

「えへへ」


褒めてないんだが。


「でも今日は食べるじゃん」

「子供って周りがいつもと違うルーチンすると混乱するんだってよ。だから自分の意思で歩いたり喋ったり出来るようになるまでは同じことの繰り返しだ」

「夏鈴のとこは三人もいるから大変だだよな」

「慣れたらそっちの方が楽だぜ」


颯太はフォークを握りしめてパクパクと口に運んでいく。

朝遊んだ影響かいつもより食欲があるように見える。


「間宮に、はい。これ」

「なにこれ」

「クッキー。颯太くんのおやつにしてもいいよ」

「それはありがたい。保育園じゃおやつありだろうからな」

「間宮も一口食べてよ?間宮に作ったんだから」

「そうだな。間宮颯太のために作ったんだよな。分かってるって」

「違う!」

「大声を出すな」


颯太は気にした様子もなく食べることに熱中している。

颯太とは反対の兎は頬を膨らまし不機嫌な目をしていた。

分かっていても恥ずかしいものは恥ずかしい。


「俺のためだろありがとよ」

「なんでこっち向いてくれないの」

「颯太から目を離すわけにはいかないだろ」

「照れてるんだ」

「照れてない」


照れるに決まっているだろこんなセリフ。

俺が女子にありがとなんて言ったことないぞ。

自然と頬が熱くなり加羅忍達の視線が緩くなる。


「やめろ。そんな目で見るな」

「初々しいですね」

「初々しいとか言うな。いつも通りだ」

「なーんかあちーな。この部屋」

「暑くない。冷房も弱だがついてる」

「狼斗さん……そんな節操なしだったなんて……」


やめろ袋叩きはやめろ。

俺が一体なにをした。真正面から親切を見せられたら照れるに決まっているだろう。

しかも相手は告白まがいのことをして来た十六夜。

それを知っている三人はこんな風に煽ってくる。


「にいに……ねむ」

「ああ、眠いか。またベットで寝ればいい。ほら」

「うん」


颯太は横になり時雨が毛布をかけてくれた。


「颯太が寝たから授業出てこい」

「えー。間宮だけずるくない?」

「なにが?弟の面倒見てなにがずるいんだよ」

「今日は皆さんでサボりましょう。時雨さんは体調が悪いことにしましょう」

「いいんちょーがサボりは拙いわな」

「皆んなで颯太くんのお世話だ!」

「授業出ろよ」

「授業出たら疲れるから騒ぐよ?」

「意味がわからん」


赤ん坊でも疲れたら寝るぞ。

十六夜は赤ん坊でありクソガキであることが証明された。


「颯太の面倒は任せた。ただし騒ぐな。俺に構うな。くっつくな」

「……」

「返事は?」

「ウン。ワカッタ!」

「時雨。悪いが十六夜の面倒も見ててくれ。俺の勉強の邪魔をしないように」


高校二年生より三歳の方が利口ってどうなんだ。


「十六夜さん。今は我慢しましょう。……」

「そうだね!」

「なに企んでやがる」

「なにもないですよ。勉強に集中しましょう」


疑いながらも俺はノートに向かった。

なにかしてくると思ったが十六夜は颯太のそばでスマホをいじるだけで動く気配はなかった。


「わたしトイレ」

「いってらー」


十六夜が保健室を出て行こうと俺の後ろを通った瞬間、俺の背中に暖かく柔らかい感触が押しつけられた。

それと同時に襲う拒否反応。

首辺りが暑く感じ、腕から脱力感に襲われた。


「っく!お前!」

「はい騒がなーい」

「離れろ!なんのつもりだ」

「お昼から颯太くんの面倒見てるのだーれだ」

「十六夜だが……だからって」

「ならこれくらいは許してよ」

「俺が震えてるの分かるだろ」

「うん。分かるよ。でもそれで離れてたら一生治んないよ?」


ふわりと香る柔軟剤の匂い、しっかりと感じる胸の大きさ。

額に汗が浮かび鼓動が不安定になって来た。


「分かったから離れてくれ。これ以上はキツイ」

「やーだ。もう少し」


一秒が一分に一分が無限に感じる。


「間宮、前向いて」

「あん?」


俺が前を向くとカメラを構えた加羅忍がスマホを構えていた。


「なにを……」


カシャと音がしてシャッターが降りた。


「ありがとう!」

「お前ら……強行手段に出るようになったなおい」

「でも、嬉しかったでしょ?」


十六夜は自分の胸に手を当てこのしたり顔である。


「嬉しかったら汗も震えも出ないだろ」


今度夏鈴から護身術を習おう。

背後を取られても投げられるように。

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