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第二十七話 加羅忍の名に賭けて貴方の存在を抹消しましょう

時雨の体調もすっかり良くなり女子恐怖症克服合宿最終日。


「寂しくなりますね」

「楽しかったなー!」

「またやろうよ!」

「加羅忍の労力も考えろって」

「先日はご迷惑を」


感想は千差万別だろうが俺含め全員の顔には楽しかったと書いてあった。

今日は最後の登校日。

俺はいつも通り保健室に向かった。


「お、間宮おはよう」

「おはようございます。なんで朝から慌ててるんですか?」

「実は急用でな。出張に行くことになった。だから鍵を預ける。使い終わったら職員室に戻しておいてくれ」

「いつもは面倒とかうだうだ言ってるのに」

「今日は急用ってことでちょっと豪華な宿に泊まれるし費用は全て学校が持つらしい。浮かれないわけないだろ」

「こういうのが人生楽しむコツなんだろうなー」

「それじゃあ!行ってくる!」


るんるんで出て行った鳴川先生を見送った後、一時間目の授業が始まった。

今日は鳴川先生が完全不在のため保健室を利用する生徒はゼロだ。

そのため伸び伸びと保健室を使える。

大きく伸びをすると扉がコンコンとノックされた。

外には保健室は使えませんという旨の札が掛かっているため四人の内の誰かだろう。


「ん」

「あら、一番乗りですか?」

「授業出ろよ」

「多少サボっても平気です。単位は落とさないので」

「そうかい。俺は落ちるかもしれないから勉強させてもらうがな」

「結局、美咲さんと時雨さん。どっちにするんですか?」


抹茶色の髪を揺らし挑発的な笑顔を向けて来た加羅忍。

聞こえてたか。


「どっちでもいいだろ。関係ない」

「そういうツンケンしたところも可愛らしいですが、もっと傲慢で「俺についてこい」といった方が人気出ると思いますよ」

「別に人気を勝ち取るために学校来てねぇんだよ」

「ですが協力関係を結ぶ対等な立場なわけですから情報があってもいいんじゃないですか?」

「......結論から言えばどちらとも断る。現時点ではな」

「ということは将来的には変わると?」

「女子恐怖症が治らないことにはどうにも。付き合っても俺の心が持たない」

「だからキープしたと」

「あのな......遠まわしに言われただけで直接『好き』と言われたわけじゃないからな。深く考える必要もないだろ」

「最低男の考え方ですよ。逃げです」

「なんとでも言え。俺は慎重派なんだ」


過去に一度失敗してるからその辺は慎重になるんだよ。


「私としてはどちらでも構いませんが、泣かせたらどうなるか想像つきますか?」

「ちょっと更に上行きそうでつかないっすわ」

「大丈夫です。加羅忍の名に懸けて貴方の存在を抹消しましょう。家族も貴方を失った悲しみに暮れることもないんです」

「なにする気!?人の記憶はそう簡単にいじっていいもんじゃないぞー?」

「泣かせなければいいだけの話です。簡単でしょう?」

「仮に一人を選んだ場合、もう一人は泣くことになるがそれはカウントされますか」

「その場合は仕方ないでしょう。間宮さんはそこまで器用ではないでしょうし」


よかった。

そこも範囲に入るなら失踪も視野に入れる必要があったぞ。

だが問題は......いや今は止めよう。悩んだ所で結論は出ない。


加羅忍は四時間目終了までずっと一緒にいた。


「お昼ですね。楽しみです」

「は」


意味が分からず首を傾げるとノックもなしに保健室のドアが開かれた。


「ノックくらいしろって、あと抱き着くな暑い重い恥ずかしい」

「充電中......完了!」


十六夜が勢いよく離れると今度は時雨が包みを差し出して来た。


「狼斗さん。いつも総菜パンですよね?」

「ああ」

「ので作りました。先日のお礼です」

「お礼されるほどなにかした覚えはないが、貰えるなら貰おう」


時雨から包みを貰い開けると中は弁当箱。

開けると白米とその横には卵焼きやタコのウィンナーが詰められていた。


「時雨が渡すってことは時雨が?」

「はいと言いたいところですが......」

「別に言えばいいのに。おれが作ったのはミニカップにある野菜だけだぜ?」

「ありがとうな。二人とも」


箸を手に卵焼きを一口。

甘い。だが甘すぎない。焼き目もいい感じにアクセントになって普通に美味しい。

作ってから数時間立っているのに水っぽくならずふんわりしている。

形は少々不格好ではあるがその方が手作り感があってありがたみが増す。


「美味い。手作りの弁当食ったのいつぶりだ。小学校の遠足以来かもしれない」

「そんなに食べてないの!?わたし毎日作って貰ってるのに」

「俺のところは颯太いるから。颯太に合わせるので手一杯。でもそれを苦痛とは感じてないし合わせなくていい日が来たら成長の証でもあるからな」

「いい兄貴だな」

「夏鈴も同じだろうが。じゃなきゃ三人いっぺんには無理だろ」

「へへへ」


弁当を食べる俺を顔を赤くして見守る時雨。

そんなに見られると食べずらい。


「なんでもありません。味の好みを私よりにしたので気になっただけです」

「大丈夫ですよ。間宮さんはあの劇物ケーキを食べてますから」

「関係ないし食べさせたのはお前じゃい」

「それと比べたらこのお弁当は大変美味しいでしょう?」

「ああ、あんな味もクソもないケーキと比べたらな」


そもそも罰ゲームと折角作ってくれた弁当を比べること自体失礼にあたる。

絶対にしてはいけない禁忌だ。


「あれも丹精込めて作ったんですよ?」

「恨み辛みしか感じなかった」

「わたしも作る!間宮に食べてもらう!」

「無理はするなよ。料理経験ないんだから」

「あるもん!......夏鈴ちゃんの手伝っただけだけど」

「美咲ほどの料理の腕があればすぐに上達するって。おれが保証する」

「なら今度はお料理対決ですね。審査員は私と十塚さんと間宮さん」

「おいおい。今日バイバイの日だろうに」

「永遠に会えないわけではありません。こうして皆さんで集まるのは嫌いではないので」


俺としては勘弁願いたいね。

この女子が多い空間で初対面時よりマシになったもののまだ触れられると体が痺れる。

俺が女子と普通に触れ合えるようになるのは八月越えた二学期以降の話だ。

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