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第二十三話 ペチュニアの花言葉

騒音兎の音に耳を晒し続けたせいで鼓膜がないなった放課後。

兎が隣でスマホをいじりながら俺は机に突っ伏していた。


「疲れた……」

「お疲れ様」

「くっつくな。暑い、密じゃ」

「照れちゃってー」

「鳥肌立ってるの分かんないかなー。めっちゃ今体が拒絶反応してんだわ!」

「車が来るまでの辛抱だよ」

「離れれば済む話じゃないですかね」

「いーや」


なんなんだ今日の十六夜はいつにも増して頭がおかしい。

変なもんでも食べたか。


「なんだ美咲。今日は甘えたい日か」

「夏鈴ちゃん分かってるー。どこかのにぶちんさんと違って!」

「なんだそれ。情緒不安定すぎるだろ」

「女の子はそんなものですよ。時雨さんもありますよね?」

「ええ!?私は別に……ないです」

「あまり時雨を虐めてやるな。まだ距離を測りかねてるんだ」

「時雨ちゃんもくっつけばいいよ」

「誰と」

「間宮と」

「ふざけんな」


時雨とくっつかれても今更反応しないが普通に気恥ずかしいから嫌だ。

俺だって年頃の男子。女子にくっつかれればそれなりに恥ずかしい。


「やめろ時雨。それ以上近づくな」

「精神……あんていざい……」

「……」


たった一言会話したのにコレか……朝は夏鈴と仲良さそうに話していたのに。

さっきまでのシャキッとした時雨はどこに。素に戻ってしまった。


「天月も保健室だけで素に戻れよ」

「その度にこれじゃ俺の心臓がもたない」

「両手に花でいいじゃないですか」

「ドクダミとラフレシアは嬉しくないなー」

「ラフレシアの花言葉は『夢現』ドクダミの花言葉は『野生』、『白い記憶』。あまり天月さんと十六夜さんを表現するには向いていないかと」

「普通に悪口だが」


俺がそんなマニアックな花の花言葉なんて知るわけないだろうに。


「なら加羅忍は『クチナシ』か?夏鈴は……キキョウか?」

「狼斗さんがそこまで詳しいとは知りませんでした」

「興味本意で調べただけだ」

「意味ってなんだ?」

「えっと、クチナシが『とても幸せです』『喜びを運ぶ』『優雅』『洗練』だって」

「ありがとうございます」

「俺はいちばん最初の奴しかしなかった」


俺は遠回しに褒めるほど器用じゃない。


「おれのは?」

「キキョウは、『深い愛情』だって」

「おれ狼斗のこと愛したっけ?」

「俺にじゃなくて妹達にだよ。俺を勘違い男みたいにさせるのはやめてくれ」

「ロマンチストなのかと」

「え、いきなり自分を花言葉に例えてきたら気持ち悪くないか?

「それは初対面だからだよ」

「私達のように知り合っていればこその会話です」


時雨達の友好度はかなり上がっているようだ。

俺からすれば横一線で百分の五なのに。


「車が来たそうですよ」

「んじゃあな狼斗。また家で」

「あまり声に出すなよ。聞かれたら問題になる」

「じゃあねー」

「私はアルバイトがあるので遅くなります」


元気な四人が裏の駐車場に向かい夕暮れの保健室には俺一人だけ残された。

静かで薬品の匂いが充満するこの部屋が何故だか寂しく感じた。


「さて、俺も帰るか」


椅子から立ち上がりスマホをポケットにしまった瞬間にスマホが震えた。

またポケットからスマホを取り出すと一件の通知が来ていた。


「十六夜から……」


嫌な予感しかしないものの見ないと後でうるさいからすぐに既読をつけた。

内容はたったの一文。

今までの会話無視くそ長文が嘘のような一文。

そこにはこうあった。


『間宮はペチュニアだよ!』


おそらく花なんだろうが。

検索アプリを立ち上げ『ペチュニア 花言葉』と入力し検索キーをタップ。

まだ検索画面なのに検索したことを後悔した。

検索画面の一番上にはペチュニアの花言葉が載っていた。


『あなたと一緒なら心がやすらぐ』『心のやすらぎ』と載っていた。


「あいつ……こんな恥ずかしい文をよくも……」


返信として『?』を送りスマホをポケットにしまった。


「お、間宮も帰るか」

「はい……」

「どうした顔が赤いぞ」

「気にしないでください。太陽光に当たりすぎただけなんで」

「……誰かになんか言われたか」

「違います。変な詮索やめてください」

「当たりか」


にやける鳴川先生を放置し俺は帰路についた。

十六夜にはキツく言っておこう。

金輪際、こんな恥ずかしい思いをしなくて済むように。

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