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第二十一話 気付いて欲しいのに気にしないでってかなり難しい注文

「加羅忍!出てこい!話がある!」

「はい。なんでしょう」


加羅忍は涼しい顔をして扉を開けた。


「なんでしょうじゃあねぇよ。なんで合鍵なんて作った!」

「あそこは元々使用人の部屋です。万が一の時に合鍵はいくつも作ってあります」


狭さからそうだろうとは思ってたがまさか合鍵があるなんて思わなかった。


「今すぐ合鍵を回収しろ」

「そんなに部屋に入られるのが嫌ですか?」

「ああ!女子なら尚更な!」

「では私達の部屋の鍵を」

「必要ない」


どうせ渡されても使わない。


「このお泊まり会のメインは間宮さんの女子恐怖症克服にあります。閉じこもっていては元も子もありません」

「最初に部屋から出なくていいって言ったのはそっちだろうが」

「ええ、なのでこちらから出向こうかと」


最初から俺を参加させるための罠だったわけか。

そして俺はその言葉を鵜呑みにして罠に嵌った。


「なにが目的だよ」

「目的ってなんのことですか?」

「俺の女子恐怖症克服にかこつけてなに企んでやがる」

「邪推ですよ」

「うるせぇとっとと答えろ」


加羅忍は深いため息を着くと言葉を続けた。


「嫌われますよ。無理やり聞き出そうとするのは」

「女子に嫌われた所で問題ないんだわ」

「素直に罠に嵌ってくれたのでお教えしましょう」


うぐっ。中々傷を的確に抉るじゃないの。

致命傷で済んだけども。


「私の家は家族がバラバラなんです」

「ああ、両親が海外赴任中だったな」

「両親の顔もうろ覚えで最後に会ったのは中学受験に合格した時です」


ということは少なくとも三年は会っていないことになる。

俺は毎日顔を合わせてんのに。


「家族というのを確認しておきたかったんです」


加羅忍は笑わなかった。

ただ目を伏せ膝に揃えた拳を握っていた。


「そのためにこれを計画して実行したってことか」

「はい」

「なら最初からそう言えばいいだろ」

「私だってこういうこと言うのは恥ずかしいんです。秘密ですよ?」

「可愛くない」

「そんなことないですよ。可愛いですよー」

「うざい。近寄るな」


加羅忍は自身が持つ最大の武器である『加羅忍家』を捨てて戦おうとしている。

これはまだまだ序盤。始まりの街で仲間を募集している途中。

お嬢様が難関を超えて成長する姿を見届けられるのは特別なことなのかもしれない。

そう思えば自然と可愛くない見えてくるかもしれない。


「ほら、これなんてどうですか?可愛くないですか?」


前言撤回。

やっぱり可愛くないものは可愛くないのだ。


「俺は部屋に戻る。せいぜい、部屋に入る時はノックしてくれ」

「無理矢理にでも奪わないのですか?」

「名家のお嬢様に怪我させたら俺の命が危ないからな〜。ま、ボッチの気持ちは少しは理解出来るって話だ」


俺は自室に戻ると電気を消して眠った。

二十二時という高校生にしては早い時間に。


翌日。目を覚ますと朝の六時半だった。

早く寝たために早く起きてしまった。朝食の時間は七時。まだ時間がある。


リビングに移動するといい匂いがキッチンの方から漂ってきた。

夏鈴が朝食を作るにしてもまだ時間的には早い。

では誰か。

こっそり近づくとドア付近で声が聞こえた。


「んー。火がつえぇ。そんな強火滅多に使わないっての。基本は中火」

「こ、これくらいですか!」

「ああん。そんな」


声からして時雨と夏鈴か?

料理の練習?こんな時間に?

うーん。と考えていると急に扉が開いて俺は額を強打した。


「あ、狼斗。なにしてんだ」

「朝起きたらいい匂いがしたから釣られてきた」

「ふふん。そうかそうか」

「なんだよ」


やけにしたり顔だが。

なに企んでやがる。


「聞け、このいいんちょー様はな!」

「わああ!言わないでください!な、なんでもありませんから」

「いいだろ別に減るもんじゃないし」

「そういうのは相手が気付くまで待ちたいものなんです」


相手が気付く?夏鈴が俺に言おうとしたということは相手というのは俺なんだろう。

俺が気付くまで待ちたい。


「朝食を時雨が作ろうとしたってことか?」

「……お前ふざけるならもっと笑えること言えよ」

「ボケたつもりはねぇよ」


この状況でボケるほど芸人じゃない。

至って真面目な回答なんだが、正解ではないらしい。


「狼斗さん。あまり気にしないでください」

「おおう」


気付いて欲しいのに気にしないでってかなり難しい注文じゃないか。


「おら、飯はもうちょい後だから顔洗ったりしてこい」

「……分かった」


晴れない疑問にもやもやしながら俺は洗面所へと向かった。

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