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第ニ話 急な出会いにドキドキするとか言ってるがアレ噓ゾ。嬉しさより困惑の方が絶対強いゾ

タイトルは陰キャの戯言なのでお気になさらず

今日の授業が終わった放課後。

俺は椅子に座りながら伸びをすると外から聞こえる部活動の音を聞いていた。


「眩しく活き活きとしている生徒に敬礼」


放課後は部活動やら委員会やらで皆忙しいのだろう。

廊下からはドタバタと走る音が聞こえ、グラウンドの声も次第に大きくなってきた。

俺も早く帰りたい所ではあるが、鳴川先生に留守番を頼まれてしまったためまだ居なきゃいけない。


「六限目までには帰るって言ってたのにな……ま、一度たりとも有言実行された試しがないけど」


鳴川先生の「すぐ戻ってくる」は「2、3時間留守番してろ」という隠語だ。

生徒に留守番を押し付けるために使われる常套句。

去年一年で散々思い知らされた。


ガラガラ……。


「せんせいー」

「先生」


扉が開いたから先生だと思ったが違ったらしい。

幼く間延びした声の方を振り返ると女子生徒が書類を抱えて立っていた。

赤のスカートということは同学年。

一年生は緑だし三年生は青のはず。よりによって同級生と来た。


「じょ……し」


俺の中であの時の光景がフラッシュバックしてくる。


「ねね、せんせいは?」

「今いない」

「ふーん。どのくらいで帰ってくる?」

「わかんない」

「そっか。なら待とうっと」


女子生徒は先生用の椅子に腰をかけるとため息をついた。

ため息をつきたいのはこっちだ。

なぜ男子がいる密室に入ってこれるのか。鳴川先生がいつ帰ってくるか分からないのに。


女子が怖い俺はしばらくスマホをいじっていた。


「そっちはなんの用があって来たの?」

「別に。なんでもいいだろ」

「怪我?わたし保健委員だから擦り傷程度だったら処置出来るけど」

「怪我じゃない。いいから寄るな」

「そんな怒なくたって……」


別に怒ってるわけじゃないんだ。

本当は怖い。だけどそれを知られたくないから強気になる。

その結果がこれだ。

俺の疑いが晴れなかったのだってこの強気になっちゃうのが原因。


スマホに視線を落とすが目の前から注がれる眼力になにもする気が起きない。

スマホの画面をスワイプする指が空を切る。


「間宮ー。留守番ご苦ろ......邪魔した?」

「いや。俺は帰ります。さようなら」


俺は早く凍った部屋から抜け出すべく保健室から飛び出した。


「狼斗!そんな急いでどうした」


俺に声をかけたのは一学年上の山本啓介(やまもとけいすけ)先輩だった。

自転車に跨り追いかけてきた。


「啓介先輩。別に急いでないですけど」

「いやいや顔真っ青だぞ」

「保健室で女子と2人キリにさせられました」

「そりゃまたラッキーな」


もし俺が普通に高校生活を送っているならラッキーな状況なんだろうが、生憎俺は棄権した身。

女子と2人キリにされた所で楽しむどことか恐怖の方が勝る。


「相変わらずだな。バイト内じゃ平気なのに」

「慣れですよ」


いくら女子が怖いと言っても一年間一緒に仕事してれば慣れるというもの。

逆に言えば、一年一緒に居ないと俺はまともに話すことも出来ない青春敗者なのだ。


「そうだ。次の日曜、実行になったからよろしくな」

「メンバーは」

「オレと狼斗と麻耶と時雨だな」

「分かりました」

「詳細はまたグルにラインするわ」


そういうと啓介先輩は自転車のペダルを強く踏み坂道を上って行った。


次の日。

「おはようご......」


俺は保健室の敷居を片足だけ跨いで停止していた。

心臓の音が耳まで届くほどにドクンドクンとうるさい。

いつもは薬品臭い保健室は今だけは無臭に感じられた。


「あ、来た」


昨日話しただけの女子が俺より先に保健室にいたのだ。

時刻は8時10分。生徒がいてもおかしい時間ではないが、この時間から保健室を利用する生徒はいない。

ではなぜ女子生徒がいるのか。


「昨日は急に話しかけてごめんね?」


腰から折りお辞儀をする女子生徒に俺はなにも言えないでいた。


「間宮のことせんせいから聞いた」

「そう。なら俺が危ない奴だって分かったろ」


ホントあの人教師辞めればいいのに。

生徒の個人情報ペラペラ話すとか教師失格だろ。本当に!

どんな情報渡したのか分かんないけどさ!本人がいる所で開示しようよ!


「その辺も聞いた」

「同情なら間に合ってるけど」

「違うよ。協力しに来た。アイアム協力者」

「意味が分からん。からかいに来たのなら......」


また止まってしまった。

目の前に大きな瞳があり微かにいい匂いも香ってくる。

目の前に女子がいた。

俺は一歩も動いていない。なんなら下がっている。


「からかいじゃないよ。わたしね、心理カウンセラーとか心理学者になりたいんだ。だからさ、間宮も協力してよ」

「無理。誰かも分からない女の実験台になるわけない」

十六夜美咲(いざよいみさき)。二年一組の保健委員だよ」


なぜ俺に絡んでくるのか。

心理学だかなんだか知らないが俺を実験台にしてなにするつもりだ。

俺の頭の中で見て見ぬふりをしてきた最悪の事態が浮かび上がってくる。


仮に十六夜が陽キャ集団の一員で俺を高校生活を楽しくするための駒として見ているとすればその先を想像するのは簡単だ。

今度こそ俺は学校に来なくなる。


「病んでる人の助けになりたい。それがわたしの夢」

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者淫夢厨かいいぞもっとやれ
[一言] 淫夢かよ「いいぞもっとやれ」
[一言]  タイトルの語尾が'ゾ'  時刻は8時10分  女子が苦手  ……あっ、ふーん(勘違い)
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