第十三話 四人の中でお前が1番乙女なのマジなんなの
夏鈴の家にお邪魔した挙句昼までご馳走になってしまった。
「なんか悪いな」
「いいって、チビ達の相手してくれておれも家事出来たし」
「あ、昼飯美味かった」
「お粗末様?つー言うんだっけ?」
「合ってるけど似合わないな」
「うるせ」
ヘロヘロパンチを肩にくらった。
痛くもなければそれ以上の追撃もない。
隣を見れば夏鈴が胡座の姿勢から後ろに倒れていた。
「だち作るとこんなに楽しいんだな」
「楽しい要素あるか?」
「今まさにこの瞬間!」
「青春を感じるようで大に結構」
「なんだよー冷めてんなー」
「俺は青春を棄権した身だ。青春出来なくても仕方ないと思ってる」
「権利捨てたならまた拾えばいいだろ?」
夏鈴の顔は理解が出来ないと顔に書いてあった。
一度捨てた権利は回収出来ないんだ。もし出来るとすればタイムマシンが開発されてからの話だ。
「だー!そうじゃなくて!違う青春を探せってこと!」
「違う青春?」
今度は俺が困惑する番だった。
「狼斗おれに言ったよな。正解なんてないって。だったら青春にもないだろ」
「無駄に頭がいい」
「ヤンキーだからって舐めてっと痛いめ会うぜ!」
現在進行形で来たことに後悔しているよ。
その体勢どうにかないのか。腹は丸見えだし下乳もチラチラと見えている。
ま、横乳は極わい所まで見えているけども。
「違う。青春ってなんだと思う?」
「さあ。知らね。狼斗次第だろ。因みにおれは今この瞬間だ!」
大の字にバッと両手両足を広げる夏鈴には残念ながら色気を感じない。
それよりも危機感を感じる。何故だかは分からないが。
「ま、ゆっくり探せばいいだろ」
「そうだな」
「ふあ〜あ。眠くなってきた」
「まるで動物みたいだな」
「人間だって動物だ。動物と同じルーチンしてなにが悪い」
「別に悪くない。たまにはこうしてのんびりするのもな」
話かけてみても隣の獅子は眠りこけてぐーぐーと豪快な寝息を立てるだけだった。
「客人返してから寝ろよ」
近くに布団があるのになぜ布団で寝ないのか。
俺は夏鈴の後頭部と膝裏に腕を差し込むと持ち上げた。
(大丈夫。こいつは男。女じゃない。こいつは男、女じゃない)
自己暗示をかけながら殴られるのではないかという別の恐怖にも怯えながら夏鈴を運んだ。
俺でも運べるってことは相当締まった身体をしているんだろう。思ったより軽い。
夏鈴を颯太達の横に並べて俺はさっきと同じ場所に座った。
俺はポケットからスマホを取り出すとゲームを起動した。
颯太は夏鈴の弟達と一緒におやすみタイム。一度寝たら午後三時までは起きない。
今は午後十二時。あと三時間もある。
家主も眠りこけ鍵を開けたまま出るわけにもいかない。
俺はスマホをタップし周回することにした。
だが俺も昼食をご馳走になっているためすぐに睡魔が襲ってきた。
俺の意識はすぐに途切れてしまった。
トントン。カタカタ。グツグツ。
なんの音だ?
鼻から息を吸えば味噌の匂いと野菜を焼いたような香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。
「にいに」
「ん……そうた?」
「にいにおっき!」
颯太に馬乗りにされ目が覚めた俺の視界にはエプロン姿の夏鈴とおもちゃで遊ぶ颯太達が映った。
「今何時」
「んー。午後六時をお知らせしまーす」
「マジか……寝過ぎた。悪い、颯太。帰るぞ」
「食ってけよ。てか食え。量それように作った」
「……なんで起こさなかった?」
「疲れてるだろうなーって思って。学校じゃあ美咲達に振り回され放課後は制限時間ギリギリまでバイトだろう?たまには休めって!」
「なんと気が利くヤンキーなんだ……その上家庭的と。ヤンキー属性なくせば結構人気出ると思うぞ」
「別に〜おれは人気者になりたいわけじゃないんだ」
「なんか夢でも?」
「おれ、幸せな家庭を持ちたいんだ」
儚げに笑う夏鈴の笑顔には少年のような子どもっぽさはなく完全に女子として話をしていた。
当然俺の身体は拒否反応を起こした。
相変わらず動悸がするしじっとりとした汗もかく。
だが、人の本当の夢を聞かないなんて勿体無い。
「というと?」
「具体的にっていうと困るつーか決まってないんだけどさ。喧嘩してもこの人なら許してもいいかなって思える人と結婚して子供産んで生涯寄り添う。さいこー!に完璧な未来予想図だろ!」
「そうだな」
「反応薄いなー」
「いや、しっかり聞いてる。どの道ヤンキーを治さなきゃいけないのは変わらないし一人称も変えた方がいい。家事は傍から見てる分には出来てるように見えるから大丈夫だと思うし」
「まあ、家事全般はやってたら出来るようになったってだけだ!ほら、飯だ飯!」
「あ、ああ……」
「なんだよ。食う前から腹一杯みたいな顔しやがって!」
「お前の未来予想図で腹一杯になるわ」
「将来の旦那様のことを考えるのは普通じゃね?」
それが普通だと思うならいいんじゃないでしょうか。
ただ……
「四人の中でお前が一番乙女なのマジなんなの」




