第百十二話 勝利の女神が微笑むのは
三月六日。決戦の日。
学校の雰囲気も引き締まっていて絶妙な緊張感がある。
ただ俺の緊張感は違う意味で絶妙だった。
「加羅忍か夏鈴が一位になれば俺はリア充に。俺が一位になれば完全回避。来年も騒がしい日を送ることになる」
「間宮にして動いた方じゃないか?てっきりどうにかして口車に乗せて騙すもんだと思ってたぞ」
「最初はそうしようかとも思った。でも、無理だろ。加羅忍が簡単に引っかかるとは思えないし色々見てきたからなー」
「甘いな。これだから人間は嫌なんだ。すぐに情だとかギャップに流される」
「黙れナマケモノ」
そら人じゃないならなんも感じないよな。
そもそも人と一緒にいることに苦痛を感じる生物だろうし。鳴川先生は。
「ま、その潔い自殺に免じて最後まで見届けようじゃないか」
「誰が自殺じゃ。俺は勝つ。そのために勉強もしてきた。負ける気はさらさらない」
「ほう。頑張れー。せいぜい悔しそうな顔を見せてくれ」
言ってろ人格破綻者、ソシオパスめ。
チャイムが鳴り答案用紙と問題用紙を表にする。
飛び込んでくる問題文の数々。前までダラダラと出来る箇所は解いて後で出来そうな箇所を解く方式をやっていたが今回は全問正解する勢いでやらないと勝ち目はない。
一時間目は現社、二時間目は現国だ。三、四時間目は副教科。
苦手な現社と数学が分かれてくれただけでも俺は正直ホッとしている。
二ついっぺんとか頭オカシクナル。
ただ、未来を言うならもう決着はついたといっても過言じゃない。
恐らく本人は今ドキドキでテストに挑んでいるだろうが。
この学年末。元から俺ともう一人の一騎打ちなんだ。
三日間の学年末試験が終わり、学校中から緩んだ空気が流れ始めたが俺たちが緊張するのはここからだった。
「大丈夫。全部埋めはした。あとは合ってることを願うだけ」
「答えを確認しなかったのか?」
「そんな時間なかったよー。埋めるので精いっぱい」
「時雨は?」
「私はあまり変化は感じませんでした」
「流石いいんちょーは言うことが違うぜ」
夏鈴がからかうと時雨は顔を少しだけ染めた。
赤く染めたなら慣れたってことだ。一年一緒にいてようやく慣れたか。
「そういう夏鈴は」
「おれは結構自信あるぜ!」
「私もそこそこ手応えはあったので。普段より点数は高いと思います」
全員がそれなりに手応えを感じていて自信ありげ。
かくいう俺もそこそこ手応えは感じている。いつもは平均点ほどだが今回は満点も有り得るほどだ。
「正直、勉強会がなきゃ今回のテストは死んでたと思う」
「そうだねー。教えてもらったところピンポイントで出たしね」
「テスト範囲は広くてあてにならないからな。真尋の分析が光ったな」
今回のテスト範囲は加羅忍が去年や今までの傾向を読み解いて出した問題。
一番の驚きは啓介先輩が去年の問題用紙を持っていたことだが、理由を聞けば簡単だった。
俺のためにとっておいてくれたんだとか。軽く惚れそう。
テスト返却の日の学校の空気はまたまた緊張に包まれた。テストの返却というのはある意味テスト当日より緊張するのかもしれない。
「揃ったな」
保健室には俺含めたいつもの面子が集まりテストの用紙を机に広げた。事前に自分の合計点を計算しとってある。
結果、一位は九百点で全教科、満点という驚異の結果だった。
まあ、こうなるかなとは思っていたがまさかこうなるとは。今年の運勢は凶だったが割ともう凶の運勢もキャパオーバーを起こしているのかもしれない。
九百点満点取ったのは......




