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第百十話 今じゃ結構心が痛い

加羅忍とお互いに崖に立った次の日。颯太を連れて近くのスーパーへ買い物に行っていた。

本当なら勉強した方がいいんだろうが詰め込みすぎは帰ってストレスになる。


「にいに。なに買う?」

「夕飯の材料だ。なにが食べたい」

「ハンバーグ!」

「ハンバーグか......んー。肉固めるだけでいいのか?」


いや、そんなことはない。

合い挽き肉を使ったとしても肉だけじゃボロボロに崩れる未来しか見えない。

崩れないためにはどうしたらいいのか。俺の貧相な料理経験値じゃ少し......そう、少し足りないみたいだ。


「ちょっと調べるから待ってな」

「あい!」


本当に颯太は可愛い。

なんでこんなに可愛いんだろうか。勉強で疲れた頭が回復しているのが実感できる。

俺の薬指と小指を小さな手で握るところとか生きててよかったと思えるレベル。


「お前、子連れみたいだな」


声をかけられスマホから視線を外して見ると夏鈴が買い物籠を持っていた。

なんでこうプライベートでカッコイイ格好をしているのだろうか。

黒いパンツを履き上はジャンパーで中には紫の生地が見えている。茶髪だし声を少し低くしたら男に見えるほどにカッコイイ。


「相手がいない男にそれは割と刺さるから止めてくれ」

「作ろうと思えば四人も作れるくせにか?」

「悪夢だ」

「現実だぞ」


颯太の回復能力をもってしても悪夢が悪夢のままなんだが。

やはりまだ三歳ってことで回復能力も未熟なんだな。将来は未来改変能力を覚えて欲しい。


「夏鈴も夕飯の買い出しか?」

「まあな。狼斗は」

「俺も買い出し。ハンバーグを作ろうとしたんだが俺一人じゃ作れそうになくてな。どうやって作るんだ」

「合い挽き肉固めて焼く」

「それじゃあボロボロのそぼろになりそうじゃないか?」


俺がそういうと夏鈴はニッと八重歯を見せて笑った。

どうやら正解のようだ。


「当たりだ。そのまま焼くとボロボロになるから卵とかパン粉でつなぎを作る必要があるぞ」

「助かる。卵はあったからパン粉を買って。肉と......あとなにがいる」


もういっそのこと出来合いの物を買っていった方が早いんじゃなかろうか。

そう思えてきた。


「おれが作ってやろうか」

「いや。悪いしいいって。テスト勉強もあるだろ」

「ならお前一人で作れんのか?」

「出来合いのもの買ってく」

「おまえなぁ......こうしよ。おれが飯を作る。お前は勉強に付き合え」

「それで本当にいいのか?」


夏鈴に作って貰えるなら願ったり叶ったりだが。

負担になるのは確実だ。


「ほら、とっとと材料買って帰るぞ」

「分かった」


手際よく買い物を済ませてやって来たのは夏鈴の家。

体育祭の時に来たっきりだから久しぶりだ。女の家に入り浸って好きじゃないとか俺結構最低男な気がする。

まあ、でも十六夜の家は言ったことないからセーフ。多分十六夜の家に入ったが最後、俺はきっと出てこれないからな。


「よし。ハンバーグを作る。準備はいいか」

「ああ」

「今日教えるからちゃんと覚えとけ」

「多分忘れるからそん時またこうやって教えてくれ。邪魔が入らないようにな」

「......仕方ねぇな」


この純情ハートで遊ぶと罪悪感がものすごい。ただ楽しくもある。

加羅忍が俺で遊ぶのを止めない理由が分かった。


「ハンバーグって結構子供好きだけど一から作るってなるとめんどいな」

「あのな。おれ達高校生くらいになればある程度いいけど、子供のうちからそんな冷たいもん食わせてどうすんだよ」

「ちゃんとレンジで温めればいいだけだろ」

「そうじゃねぇよ。愛がねぇって話だ。親が仕事で仕方ないってこともあるけどそれでも手作りするべきだ」

「愛ねぇー」


愛だの恋だの友情だのうざったいと一年前なら言っただろうな。

それがどうしてか、今じゃ結構心が痛い。なぜだろうなー。

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