第百八話 目を覚ませ
「落ち着いたか」
「枕があれば」
「そうか。まったく良くないけどまあ、いいや」
一応はその地獄を引っ込めてくれたようだ。
「んで、人の家に無断で立ち入った理由を聞こうか」
「勉強しようと思って」
「噓つくな」
「噓ジャナイヨ」
「バカが二人集まっても問題は解けないんだよ。それなら時雨か誰か呼ぶだろ。普通」
あからさまに目、逸らしやがって。
こいつ、口では勉強って言ってはいるが本当は違うことをしにきたんだろう。
さっきまで俺と時雨がやっていたような。
「二人で密会するなんて。酷い。間宮とは同じベット寝たのに」
「私だって同じベットで寝ましたよ?」
「お前らそれ絶対に外で言うなよ」
二人の女子と同じベットで寝たとか最高の最低男になってしまう。
「ほら、勉強するんだろ。やるぞ」
「わたし!クリスマスは間宮と過ごした!」
「高校一年生の時はずっと私と一緒でした」
「ねぇ。聞いてるぅ?」
「わたし映画館デートした!」
「私は去年、夏祭りも行きましたし遊園地にデートにも行きました。そして今年、プールで美咲さんに見せた水着とは違う水着を狼斗さんには見せています」
はて、時雨とデートした覚えはないんだがな。
「ああ、麻耶と啓介先輩と行った時のこと言ってんのか」
「二人きりじゃないじゃん」
「うううう」
「謝るからそんな恨めしい顔で見ないで」
きっと二人で行ったことにしたかったんだろう。
ごめんな。意図を汲み取れずに真実をバラして。
「言い争いなら帰ってラインでやってくれ」
「わたし、時雨ちゃんが一番厄介だなって思ってた」
「私もです。美咲さんが一番警戒すべき相手だと思ってました」
二人の暴走は誰にも止められない。お互いがお互いを警戒し次の話を持ち出すのも躊躇われる。
そんな空気を読まないのが俺だがな。
「喧嘩するなら二人とも追い出すぞ」
「決めよう?この際だし。真尋ちゃんの力を借りずにお互いの力で」
「いいですよ。決めましょう」
「勉強は?」
もしかしなくてもこの空間に俺は必要ないのでは?
俺の話はガン無視だしなんか急に競いだしたし二人いれば話が進むならむしろ俺は邪魔者な気がする。
「なにして決めようか」
「そうですね......」
これから何か決めようとしている所申し訳ない。目を覚ませ。
俺は自分のノートを丸めると二人の頭は思いっきり今までの恨みを込めて殴った。
パーン!といういい音と共に二人が頭を抱えて蹲った。
「痛ったーい!」
「痛いです......」
「なにすんの!」
「それはこっちの台詞だ。喧嘩するなら外でやれ。出ていくか大人しく勉強するかの二択だ。選べ」
「......仕方ないにゃー。大人しくしてあげる」
「今度は顔殴ったろうか?ん?」
「時雨ちゃん。この人怖ーい」
「暴力は反対です。そのノートを広げて始めましょう?」
さっきまで「決めよう」とか言ってたのはどこの誰だ。
「俺は始めっから始めようって言ってんだよ。おい、なんで二人して俺の隣に座る。横に行け、狭いんじゃ」
「大丈夫。間宮右利きでしょ?わたし左だから腕は当たらないよ?」
「そういう問題じゃない。密度の話してんだよ」
「私は教える側なのでこの方が教えやすいです」
「ずるい!」
「もう一回殴ってやろうか。今度は拳でな」
「今だけだよ」
どうか十六夜だけは永遠に横に居て欲しい。
「それって告白?」
「違う」
「なんの話ですか?」
「永遠に横に居ろって言われた気がした」
「ソンナ事思ッテナイヨ」
この兎、エスパータイプだったか。




