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第百六話 気がかりなことが一つある

学年末まで残り一週間となったある日。


ベットで目を覚ましスマホを見ようと横を向くと黒い影が視界に移った。


「時雨。朝からなんの用だ」

「一緒に勉強しようと思って。ダメですか?」

「俺が朝弱いって知ってるだろ」

「それは知ってますけど......やる気はあるのでは?」


時雨は散らかった机に視線をやった。


「あるにはあるけどやっぱり同じところで躓く。勉強会で分かった気になっただけで全然わかってなかった。そう思ったらやる気が削がれた」

「なら私が教えますよ?」

「時雨って教えられるのか?英語は全くだったが」

「私だって万能ではないので。その場での説明では拙くなってしまいますが、事前に準備して来ましたので

!」

「分かった。顔洗ってくるから待っててくれ」


冬の冷たい冷水で顔を洗うと自然と気持ちがリセットされる。

お湯で顔を洗うのは楽だがなんか気持ち的にもやもやするから冬でも冷水に限る。

それでだ。俺が部屋に戻ると時雨は俺のベットへと寝っ転がり丸まっていた。


「なにしてんの?」

「あ、いや。えっと。これは、そのあれです。人間の本能的な衝動で」

「つまり?」

「ごめんなさい」

「それでいい」


その場の言い訳なんて時雨が出来るわけがない。

出来るとしたら諸悪の根源だけだ。


「そ、それで。どこが分からないんですか?」

「数学と現社の選挙の単元がな」

「それなら私も分からなかった箇所なので説明出来ます」

「助かる」


時雨は俺の横に座ると自分のノートを広げた。

相変わらずの綺麗な字でパッと見ただけでも情報を読み取れる。成績優秀の名は伊達ではないようだ。


「まずこの式を展開して......」


「用意してきた」というだけあって時雨の説明は前より分かりやすかった。

時雨も最初は分からなかった部分なため俺がどこで躓いたのかもすぐにわかってくれた。


「どうですか?」

「めっちゃ分かりやすい。英語の説明をした人と同一人物だとは思えないくらいだ」

「それは、その頭が回っていたので自分流の覚え方を押し付けてしまっただけです」

「だろうな。あの時誰も分かってなかったしな」


勉強のことは感心した。

けど俺には気がかりなことが一つある。


「時雨。なんで緊張してんだ?」

「へ!?緊張なんてしてないんですよ?」

「敬語。取れてないぞ」


俺と二人の時は基本的にタメのはずなんだ。敬語でいるってことは無意識に緊張している時だ。

ただ見ていても手の震えとか口がつっかえたりとかはなかった。すぐ思っていることが表に出る時雨が隠し通せるわけもないはずなのに。


「男の人の部屋に入るんですから緊張くらい」

「前に来た時はタメだっただろ」

「あの、あの......これは」

「なに企んでやがる」

「なにも企んでません」


俺が目を細めて見ると時雨はそっぽを気まずそうに向いた。


「ま、時雨なら変なことはしないだろうし。あんまり疑いはしないけどさ」


きっと俺は馬鹿だと思う。

それは問題の重要部分を忘れたっていうのもある。そしてなによりもこの状況だ。


「時雨?怒った?なら謝るからすぐにどいて欲しい」

「嫌です。狼斗さんは私の逆鱗に触れました」

「逆鱗?」

「私が大人しい?違います。普段私は猫を被っています」

「それは知ってる」

「猫を脱いだ私を知っていますか?」

「知ってるぞ」


ふにゃふにゃでメンタルが雑魚で誰とも交流が取れないコミュ障だ。


「それはほんの外側です。それなら美咲さんでも知ってます」

「そうか?」

「狼斗さんに伝わって欲しいこと。それは!」


声を大にして時雨は言った。


「本当に私を見て欲しい。どれだけ狼斗さんのことを思っているか知ってほしいってことです!」

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