第百五話 自由と尊厳とその他諸々を賭けた戦い
「そう落ち込むな。人には得手不得手があるもんだ。今のはどっちかってと狼斗が悪い」
「なんでだよ。元々英語は分からんって言ってあっただろうが」
「それでも。少しは分かろうとする努力をしないとダメですよ」
分からないものは分からないし使う場面というのはとても少ない。
それなら颯太の可愛い場面を脳内メモリには記録したい。
「終わった!」
ガタッと椅子から立ち上がった十六夜は俺の右側からずつきをしその頭をぐりぐりと俺の右肩へと擦り付けた。
「なんだよ。終わったなら寝てろ」
「せっかく頑張ったのに!」
「なら答え合わせでもしとけ。それで間違ってたら意味ないぞ」
「むー」
静かだなと思ったら必死に終わらせてやがった。
どんだけこの勝負に勝ちたいんだよ。
「ほとんど合ってますが積分のところだけ違いますね」
「そこ苦手で......適当にやった」
「ならおれと勉強しような。狼斗は積分分かるのか?」
「まあ、一応は」
「曖昧ならやるぞ」
「分かったよ」
嬉しいのは分かったから目を輝かせるな。
勉強なんて真面目にやらないと思っていたが、真面目が三人集まればその限りではないらしい。
数時間みっちり勉強した俺の頭は既にパンクしそうだった。
「もうしばらく勉強はいいや。したくない」
「なに言ってるの?学年末試験までやるんだよ?」
「なら四人でやってくれ。俺はいい」
「ではこうしましょう。間宮さんはこの中で三位以下だった場合、もう一度全員から一回なんでも言うことをきくと」
「誰がやるか」
「学生の本文は学問ですから。なにもおかしくないですよ?それに、嫌なら勉強すればいいだけの話です。その条件がついかされたとて、私達は邪険にしませんよ」
それでも危険な芽は摘んでおくに限るんだよ。
「間宮さんは勉強するはめになる。私達はモチベーションが上がる。最高率ではないですか?」
「黙れ。こっちはモチベーションだだ下がりなんだわ。負けたら地獄とか割に合わなさすぎる」
「勝てばいいんですよ」
誰かこの悪女を今すぐ黙らせてくれ。
「まあいいだろう。そうなったら存分に使って捨ててやる」
「さいてー」「最低すぎる発言だな」「狼斗さん。さすがにそれは」「捨てられたらいいですね」
「お前らほんと嫌い」
やる気出して宣戦布告したら「さいてー」と蔑まれる。
そんなクソみたいな反応するならもう乗ってやるもんか。
「明日まただな」
「間宮がそんなこと言うなんて珍しい。どうしたの?」
「負けられない戦いが始まっただけだ気にするな」
これは単に俺の自由をかけた戦いじゃない。
悪女、加羅忍真尋との心理戦だ。もう分かってんだ。邪魔をしようとしていることくらい。
今もほら、目が合えばふわりと笑う。顔は笑っているのにその目にはなにか別の思惑が感じられた。
「ぜってー負けないからな」
「楽しみです。どう足掻いてくれるのか」




