―n+2日目、朝食―
前話より。人狼ゲームが終わった次の日の朝、生きる気力を失った人間の少女一人と人狼の青年一人のやり取り。
「顔は洗った?」
青年は何食わぬ顔で私に尋ねた。
「まぁいいか、朝ごはんにしよう。おれが作ったんだ!」
そういって青年は私のいるベッドのそばの机に朝食を広げ始めた。
そんなことしても、意味ないのに。
朝食を食べたら、次は私が喰われる側なのに。
「いただきます。」
未だベッドの上から動かない私をよそに、青年はパンに手を付けた。
「食べないの?」
いつのまにか、青年は朝食を食べ終わっていた。私の顔を心配そうな顔で覗き込んでいる。
食べたところで、食べられるんでしょう?
「食べないと、しんでしまうよ。」
食べたところで、ころされてしまうでしょう?
「顔も洗っていないし。まだ寝ぼけまなこだね。」
洗ったところで… あぁ、どうせ食べられるのなら綺麗な状態のほうがいいか。
「タオル持ってくるから、待っててね」
そんな私の気持ちを汲み取ったのか、青年は行ってしまった。
なにかが、おかしい気がする。
しかし、なにがおかしいのかはぼんやりしていて分からない。
青年の言っていたとおり、まだ寝ぼけているのだろうか。
そうだ、きっとそうだ。
もう一度、寝てしまおう。
寝ている間に、青年は、人狼は戻ってきて、私を食べてしまうかもしれない。
それでもいいや。どうせしぬのだから。
そうして、私はもう一度、目を閉じた。