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No.1

お久しぶりの方。こんにちはご無沙汰しております。はじめて私の作品を読んでくれる方。ありがとうございます。楽しんでいただけるよう書いていきたいと思います。

遅い更新となるでしょうが完結まで目指していきます。

追記。

この物語には前作の『のんべんとだらりとした日々をすごそうよ(仮)』のキャラクター達が登場しますが、前作を読まなくても楽しめるように作っています。

それでははじまりはじまり。




 No.1




 荒れ果てた岩山が立ち並ぶ広野。

 生き物など住んでいなそうなこの荒れた広野に、砂塵舞う場所が在った。

 砂塵を起こしているのは、大きな岩山と同等の大きさを持つ。鬼面六臂の鎧武者であった。

 鬼面の武者は二刀太刀。槍。手斧。錫杖。弓と矢をそれぞれの手で持ち、己より小さきものを相対していた。

 鬼面の武者の相手の小さきもの。

 時に岩山に身を隠し鬼面の武者の攻撃を避け。

 時に鬼面の武者が破壊した岩山を利用して鬼面の武者に近寄り。その体躯差を物ともせずに果敢に攻め続けた。

 鬼面の武者は翻弄された。

 如何な者であろうとも己の力に敵うもの無しと、思ってい。

 だがしかし。

 小さきもの。千変万化にその姿を変え、鬼面の武者を翻弄す

 その姿、時には虎に。牛に。猪に。竜に馬に羊に猿と、十二の獣に姿を変え。その姿に合わせた力を振るい。鬼面の武者と相対する。

 鬼面の武者。少しずつ。少しずつその武器を。その防具を剥ぎ取られていく。

 太刀を失い。槍を失い。手斧を失い。錫杖、弓矢と己を身に纏う鎧も失った。

 裸体を曝す鬼面の武者。いや、今や只の大鬼となったもの。

 大鬼はその場にて膝を着き。肩で息をするように大きく呼吸を繰り返した。

 小さきもの。これを勝機と見なし。大鬼より大きく間合い取る。

 小さきものその姿、今一度猿の姿になると。その背に背負った籠から何かの物を取りだし、それを宙に投げる。

 すかざず姿を変えると、今度は羊に早変わりし。宙に投げたものを手にする。それを手で捏ねる様に玩ぶと、青色に輝く液体が入った瓶が出来上がる。

 再びそれを宙に投げ、手にする時には牛の姿へと変化していた。

 手にした瓶を呷るように口へと流し込む。

 ゴクッゴクッっと喉が鳴る音が聞こえてきそうな程の飲みっぷりである。

 飲み終えた瓶を投げ捨てると瓶は光となって消え。

 そして小さきものの体が発光するような輝き出す。

 それは徐々に勢いを増していき。そして体に走る紋様なモノが浮かぶと、光は爆発するかのような勢いで更に発せられた。


 「『《戦技(スキル)》・【鬼紋闘法術(きもんとうほうじゅつ)】……」


 小さきものから小さな声が漏れる。その声は明らかな幼子の声であった。

 だがそんな事を誰かが気にする間もなく。小さきものは飛ぶように大鬼へと走り出す。いや実際に地を飛んでいた。

 それは如何にしての所業かは解らぬが、小さきものはその体を弾丸のようにして、大鬼へと向かっていった。

 大鬼。最早これまでかと、己の最後を覚悟するように瞳を閉じる。

 否。否! 否! 否! 否!!

 大鬼。まだ己の生を諦めていなかった。大きく息を吸い込み。はち切れんばかりに膨れ上がった大鬼の腹。

 その口をすぼめ、一気に腹に溜め込んだ物を吐き出すと。火焔の吐息となり。辺り一面を焼き溶かしながら小さきものへと吹き荒れる。

 火焔の吐息が雪崩の如く小さきものに襲い掛かる。

 然れど小さきもの。これを意に返さずと言うように、己の拳を火焔へと叩き込む。

 火焔は小さきもの拳でどうにか成るようなモノではない筈であった。

 しかし。

 火焔は海別つかのように左右に引き裂かれた。

 最後の抵抗であった大鬼。これには驚愕の表情を見せる。

 小さきもの。一瞬だけ地を蹴り上げ、加速し。大鬼へと更に近付く。


 「『【絶招拳技・百花ーーー」


 大きく拳を振りかぶり。その小さな拳を大鬼へとーーー


 「ーーー爆裂拳】』」


 一つ拳を振るった後。まるで乱れ飛ぶ花吹雪のように、次々と左右の拳が大鬼へと叩き込まれていく。

 成す術もなく叩き込まれていく大鬼。その勢いで徐々に後退していく。岩山にぶつかり。勢いが止まっても、それでも尚、乱れ飛ぶ拳の花は吹き止まぬ。


 『ーーーーーーーー!!!!』


 大鬼の怨嗟響く声が木霊すと、その体が光の粒となり消えていく。

 小さきもの。大鬼が消え、やっとその拳の動きを止めた。

 そして地面に降り立つと。小さきものの側に十二の獣がその姿を現す。それと同時に小さきものの姿が顕となった。

 漆黒の夜を思わせる長き黒き髪を靡かせる少女。簡素な防具すら着けず、着の身着のままの服装と言った出で立ち。

 獣達は少女の中心に守護するかの如く立ち並ぶ。

 その顔は誰も彼もが勇敢な顔付きをしていた。

 広野の空に彼らを祝福するモノが現れる。

 それ即ち。


 『YouWin!』


 の文字が煌めく。

 その瞬間彼らを見守っていた者達からも祝福の言葉が贈られた。

 それに応えるように手を振る少女、の場面で制止画像のように停止して、再び鬼面の武者と戦う場面へと展開された。


 「これが『栄光を記録せし世界録(グローリア)』、ですか……」


 パソコンの画面に再び再生させられた映像を停止する男性。

 男性の名は東條真也(トウジョウシンヤ)。年齢は二十代から三十代の優男と、形容して良いほど男性。中肉中背の何処と無く、捉え処の無い感じのするシンヤだが、その表情が特徴的である。三日月の様な細目に少々つり上がった唇。それは微笑みのようにも見え。とある動物の表情にも見える事から、シンヤの知人達からは親しみを込め。『キツネさん』と愛称で呼ばれていた。

 知人からどうしても見て欲しいと乞われ見ていた映像が終了したので、パソコン画面を落とそうとした時に、シンヤの仕事用の携帯に着信音が鳴る。

 シンヤは着信相手が誰であるかを確認すると、その件の知人からの電話であった。


 「はい。こちら『万屋(よろずや)東條』です」

 『あっキツネさん。見た? もう見てくれた? って言うかキツネさんならもう見たわよね!』


 電話に出ると矢継ぎ早しに話してくる、元気の良い女性の声が聞こえてきた。

 少々大きな音量に携帯を耳から離すシンヤ。


 「ええ、今しがた見終わりました。それと美弥さん。そんなに大きな声を出さなくても聞こえますので、もう少しボリュームを落として頂けると有り難いのてすが」


 大きな声で話してきた相手にやんわりと穏やかに言うと、相手の方も気が付き。


 『ごめんキツネさん。もうキツネさん以外に頼める人がいなくて、それで興奮してて』

 「確か、現在のプレイユーザーから招待された新規のプレイヤーがゲーム登録した場合に限り、ゲーム内で使える特典が招待したプレイヤー側に贈られる、でしたか」

 『そうなの! まったく! 運営がノルマなんてもの作るから、人を集めるのに苦労したけど、あとひとり! あとひとりで達成なのよ!』

 「はぁ、そうなんですか…」

 『ちょっとキツネさん! 気の無い返事してないで! で、どうなの!?』


 美弥の言葉に先程の映像を思い返して見て。


 「そうですね。VR技術は大変進歩していますね。画像を見る限りでは、実物の映像と大差変わり無いものを感じました」

 『そう! ポリゴン(カクカク)した画像から実写(リアル)に進化した格闘ゲームのように、って違うわよ! そうじゃなくて! プレイしてみないって聞いてるの!!』


 電話越し美弥の声が更に大きくなったので、再び電話を遠ざけるシンヤ。

 そして美弥が落ち着いた頃に電話を戻し。


 「美弥さん申し訳ありませんが、私にも日頃仕事と言うのがありまして、ゲームをしている余裕はーーー」


 シンヤとしてはやんわりと断ろうとしたが、相手はこちらの事情を知る人間。


 『嘘おっしゃい! いつも閑古鳥が鳴いてるような何でも屋なのに』


 間髪入れずに否定してきた。


 「いえいえ。これでも忙しい身なのですよ。今日だって『迷子の猫探し』に『買い物代行』『家具の修理依頼』等々と、沢山の予定がーーー」

 『そんなの別の業者に任せなさいよ!』

 「……それをしたら私の生活が儘ならなくなるのですが……」

 『だったら依頼よ! 依頼! これなら文句無いでしょう!』

 「拝聴致しましょう」


 それでもシンヤはプレイ出来ないと、なんとか理由を付け断ろうとしたが、美弥からの依頼ともなれば、その態度を変えるしかない。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼《依頼内容》▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 株式会社『AITU』より発売された。VR専用MMORPG『栄光を記録せし世界録(グローリア)』。通称『ROR』の七日間のプレイをすること。

 必要機材は経費として上乗せして構わない。

 ログイン即アウトは禁止。

 現実時間で最低限一日二時間以上のプレイはすること。

 初期プレイ時には必ず美弥の使用するIDナンバーの打ち込みをすること。

 最後。面白かったら七日過ぎてもプレイをしろ。むしろ配信終了までやり続けろ。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲




 と、半ば脅し目いた言葉が飛んでいた。


 「では、以上の契約内容で宜しいですか?」

 『プレイしてくれるなら何でも構わないわ!』

 「はぁ、私もご依頼を受けている手前、こう言ったことを言うのは憚れますが、ご依頼してまでするようなことなのですか?」

 『することよ! でもやったわ! これで限定特典が手に入る! じゃあキツネさん必ずプレイしてね!』


 最後は上機嫌で電話を切る美弥に、困惑した表情らしきものを見せるシンヤだがーーー。


 「ご依頼を受けた以上はお仕事です。では、お仕事を始めましょうか」


 気持ちを切り替え、即座に仕事に取り掛かるシンヤであった。

 そして後日、VR機器を注文して届けられたシンヤは、早速『栄光を記録せし世界録(グローリア)』にアクセス。そこから自身の操作するアバター作りとなるのだか。


 「操作するキャラクターですか。どの様な姿にすれば良いのですかね?」


 キャラクターを細かくいじくり回してまで、作り込みをしようとは思わなかったシンヤは、自身の全身が写っている写真をトレースして、これをキャラクターとする事にした。


 「ただ()()()と言うのは良くありませんか」


 キャラクターを少しいじくり。目を金色に、短かった髪を腰に届くほどの長髪にして、襟首のところで紐で縛るように垂れ下げる。髪の色合いを薄く、白銀色に近いような色合いとした。肌の色も白くした事で見た目だけなら外国人に見えなくもなかった。


 「体型や背丈はこのままで行きましょうか。あとは年齢を弄れるようですね。少しさもしい気持ちになりますが、二十歳(ハタチ)の年齢にしておきましょう」


 年齢のパロメーターをいじると、本来その年齢に応じた変化が見られるのだが。シンヤのキャラクターはなぜか差ほども変わっているようには見えなかったが、シンヤは「いや~若いですね」と、嬉しそうな声をあげていた。

 その後も案内に従いやり進めていく。

 『ROR』にはRPGを銘打っている以上レベルやスキルが存在する。

 しかしこの『ROR』は他のゲームと比べて独自のシステムや用語などが数多く存在した。

 それ故にRPG等をやり慣れた者よりはあまり嗜んでいないと言う者の方が、すんなりとやり慣れると言うのがあった。

 例えば。

 プレイヤーは『渡界者』と呼ばれる存在。

 本来は別世界に住む住人だが、グローリアの世界に呼ばれやって来た。

 但し渡界者直接の本人ではなく。『分身体(アバター)』と呼ばれる、本来の自分自身が弱体化した存在として現れる。

 少々ややっこしい設定たが。この分身体(アバター)のお陰で渡界者達は死しても、再び生き返ることが出来ると言う仕組みになっている。

 そして渡界者は弱体化している為に、レベルを上げれば強くなることが可能だと言うこと。

 それは時に自分自身の長所を伸ばすも良し。または現実の自分とまったく違う事柄(モノ)を目指すもできるのだ。

 レベルを上げるためには、渡界者が何らかの行動を起こした後、『記録石(モノリス)』と呼ばれる専用施設に置かれている碑石に、己の持つ『ユニークカード』を接続する事によりレベルが上がる。

 ユニークカードとは、渡界者が行動した記憶を記録する物でもあり。渡界者自身のステータスを表示する機能を持つ道具でもあり。渡界者自身のグローリアでの身分を証明する事など。様々なことが出来るカードである。

 スキルは渡界者が持つ『職業(クラス)』と言うものがある。

 レベルアップの際、選んだ職業(クラス)に応じたスキルを習得することが可能である。

 選んだ職業(クラス)以外のスキルを習得することも可能だが。その際は取得可能条件を満たしているスキルを、『EXP』と呼ばれるポイントを消費することで、習得することが可能となる。

 そしてその職業(クラス)には、基本の七つクラスが存在する。

 そのひとつ。


 「【討滅者(スレイヤー)】。様々な武器の扱いを得意とし。物理攻撃スキルを習得しやすい」


 案内に従い進めていたシンヤ前には、広野の真ん中に佇む屈強な戦士の姿が描かれている。

 戦士の周りには様々な武器が地面に突き立てられていて、その戦士の後ろにはその戦士が倒したのであろうモンスターの屍の山が積み上げられていた。


 「【守護者(ゲートキーパー)】。体力。耐久値が優れ。防御系スキルを習得しやすい」


 大楯を構えた精悍な顔つきの騎士が、巨大なモンスターから人々を守っている姿が描かれている。


 「【詠唱者(エレメンタラー)】。精力(マイン)の値は随一であり。それ故あらゆる術式を扱うことを得意とする。スキルもまた術系スキルを習得しやすい」


 真っ暗な夜道を頭からすっぽりとローブを被った老人が、カンテラ代わりに夜道を照らすように、四方に別れた天秤をかざしている。天秤の皿には、それぞれ火水風土を表しているかのような絵が描かれている。


 このグローリアのオリジナル用語のひとつ。『精力(マイン)』。これは他のゲームでは魔力とMPを合わせた持ったものである。

 グローリアではこの精力(マイン)が尽きると、幾ら体力があろうとも死亡扱いとなる。

 またこの世界では魔法の事は『術式』と呼ばれ。特殊なものを除いては、基本四系統の術式が存在している。

 ひとつ。自然そのものに干渉することで、大規模な自然災害をも、術で再現することが可能な『精術』。

 ひとつ。自然を司る精霊に働き掛け。共に戦い。自然現象を操り行使する『霊術』。

 ひとつ。自分の持つ属性、この世界では『星力(プラーナ)』と呼ぶ。その力を用いて自らの力のみで術を使うことが出来る『元術』。

 最後のひとつは、『術装具』と呼ばれる擬似的な術式が組まれたアイテムを扱い、行使する『晶術』である。


 「【使役者(スレイブマンサー)】。自身の戦闘力は低く。『使役獣(サーバント)』を使役し、代わりに戦わせる。補助系のスキルを習得しやすい」


 口許だけが分かるフルフェイス型の仮面を被ったドレスを着た女性。

 その周りには人。獣。異形なるモノが女性に傅く様にいる。それぞれの首には首輪が、その首輪から鎖が垂れ落ちていて。その鎖は女性の手に握られていた。


 「【創造者(クリエイター)】。物作りや創作が得意とする職業(クラス)。生産系のスキルを習得しやすい」


 画面上には四つに区分された絵が描かれている。

 ひとつの場所には恰幅の良い男性が何かを調べるような姿が。

 ひとつの場所には美しき女性がオペラ歌手のように歌う姿が。

 ひとつの場所には槌を振り上げ何かを作り上げようとして要る青年の姿が。

 最後のひとつは農業をする少年の姿が描かれていた。


 「【簒奪者(トリックスター)】。単独行動を得意として、状態異常系や探索に必要なスキルを習得しやすい」


 闇夜に舞う。男性とも女性ともつかない、奇術士の様な格好の人物が、財宝を手にしている。

 しかも奇術士と言う表現があながち間違いでないように、その人物の上半身はしっかりと映っているが、下半身は陽炎のように闇夜に消えていた。


 「【捕食者(サバイバー)】。生存率に強く働きを掛けるスキルを習得することができ。このクラスのみ。他の職業(クラス)のスキルを習得する際、消費するポイントを半減して習得することが可能。但し、他の職業(クラス)に比べれはその効果は落ちる」


 森の中、手作りの掘っ立て小屋の前で腰蓑ひとつの男性が、自ら仕留めたモンスターのその肉を焼き、食べる姿が描かれている。

 そして男性の直ぐ隣には獣達が、男性と同じように肉を齧り食べる姿も描かれていた。


 そして最後に残ったものには、七つの基本クラス以外の物が、そこに描かれていた。


 煌めく星々の海。シルエットのみ人物が佇み。胸の辺りに小さく煌めく一欠片の星を、シルエットの人物はそれを愛おしそうに両手で包むようにしている。


 「【望む者(ランダム)】。まだ見ぬ未来を呼び寄せる事が出来るかもしれないもの。可能性の未来に賭けると言うのならこれを選びなさい、ですか」


 【望む者(ランダム)】。その名の通りに全職業(クラス)の中からランダムで選ばれる。それは時に、七つの基本クラスの上級職が出現する場合もある。


 「どれを選んでも分かりませんからね。【望む者(ランダム)】にしておきましょう」


 シンヤは今までの説明を無かったかかにするように悩むこともなく。【望む者(ランダム)】を選んだ。

 【望む者(ランダム)】を選ぶと他の七つの職業(クラス)は消え行き。【望む者(ランダム)】の絵柄がキラキラと煌めく光を放ちながら、その絵柄を変えていく。

 徐々にその変わる絵柄が顕に成ると、そこに描かれていたものは、先のどの絵柄でもなかった。


 斜めに切り裂くように引かれた線。その上下には明と暗に別れている。

 上部に書かれている絵柄は豪華な服を着飾った、幸福に満ちた青年姿が。

 その青年の周りには四季折々の植物が咲き乱れ。人、獣、道具、財宝と数々のモノが溢れる返っていた。

 下部は同じ青年がいる。しかしこちらは豪華な服は着ておらず。ボロボロの、みすぼらしい服とも呼べないものを着ていた。

 こちらの青年の表情は険しく。上部で描かれている人や獣、物などは何一つ無く。周りに咲き乱れていた筈の植物も消え去り。荒れた広野だけが広がっていた。


 現れた絵柄にはこう書かれていた。


 「【幻想者(ファンタズム)】。夢、幻の術の扱いに長け。その力を世界に干渉させ現実化させる力をも持つ者。

 この職業(クラス)は【詠唱者(エレメンタラー)】と【使役者(スレイブマンサー)】の複合とされる職業(クラス)ですか。これは良いものが出た、と言うことなんでしょうか?」


 首を捻りながらもこれで良いと、『決定ボタン』を押す。

 すると、ゲーム内で行動するシンヤのキャラクターと、そのキャラクターのステータスが現れた。




 【名前】:No Data

 【種族】:渡界者Lv:1 

 【星力(プラーナ)】:夢幻

 【職業(クラス)】:幻想者(ファンタズム)Lv:1

 【所属ギルド】:No Deta

 【所属クラン】:No Deta


 【基礎能力値】

 【体力】:50

 【精力(マイン)】:120

 【筋力】:9

 【耐久】:9

 【知力】:14

 【器用】:12

 【敏捷】:11

 【幸運】:13


 EXP:0


 【固有スキル】:No Deta


 【職業(クラス)スキル】

 【幻術】Lv:1 【幻想召喚】Lv:1


 【持ち物】

 ユニークカード 安物の衣服(上下セット) 安物の下着 安物のサンダル


 【チャージ金額】:0 リーエン




 「あ、名前を入れてませんでしたね。本名は流石に不味いですから、そうですね。『シン』とでもしておきましょうか」


 シンヤはステータスが閲覧が出来るようになってもお構い無し(マイペース)に進めていく。

 【星力(プラーナ)】のところに在る『夢幻』ってなに? 【所属ギルド】や【所属クラン】ってのなんなの? 【固有スキル】と【職業(クラス)スキル】の違いは? その【職業(クラス)スキル】に在る【幻術】と【幻想召喚】ってどんなの? とか、一切疑問に思わず。本当に事を進めていく。

 しかし後々説明できる部分(機会)が出てくるとも限らないので、今のうちに皆さんの為に、それぞれの事を簡単に説明させていただく。いや決して自分が忘れそうとかではない。

 ……こほん。では先ず【星力(プラーナ)】の『夢幻(むげん)』だが、読んで字の如く『夢』、『幻』のスキルを扱うことが出来る性質を持つ星力(プラーナ)である。

 【所属ギルド】【所属クラン】であるが、ギルドの方はグローリア内の町に存在する各専門職を統括している場所であり。渡界者達の仕事の斡旋などをしている場所でもある。

 主にあるのは『傭兵ギルド』『術士ギルド』『商人ギルド』『農協ギルド』『鍛冶ギルド』『芸術ギルド』等、その場所()に合わせたギルドが存在する。

 クランとは、渡界者同士が相互所帯として集まったものである。そのクランに応じたルールなどが存在している。どちらも入る入らないは個人の自由である。

 【固有スキル】【職業(クラス)スキル】の違いであるが、前者はEXPポイントで習得したスキルであり。他の職業(クラス)へと変更(チェンジ)した時であっても、スキルが消滅しないものである。

 逆に【職業(クラス)スキル】の場合、職業(クラス)変更(チェンジ)した場合、変更(チェンジ)した変更先が前職と類似していない限り、スキルが消滅することがある。

 そして【幻術】【幻想召喚】であるが、こちらは物語に再度登場した時に説明させて頂こう。


 「メインのお仕事である、美弥さんのIDの打ち込みも終わりました。これで全ての準備は整いました。それでは、引き続きお仕事を(ゲーム)始めましょうか」


 ヘッドマウントタイプのVR機器を装着し、グローリアの世界へと降り立つシンヤてあった。
















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