少女と少年
「はぁ…はぁ…お姉ちゃん早く!!」
「分かってる!!」
燃え盛る森。炎が赤色を、木が緑色を想像させるような中、白い髪をした少女が二人走っていた。
息を切らせながら走る二人の後ろにはギシャァァと虫のような化け物が迫ってきていた。
「お姉ちゃんどうしよう?もう追い付かれちゃうよ!!」
声に反応して後ろを見た背の低い方の少女が私に慌てて言った。
「お姉ちゃん…?」
少女は驚いていた。なぜならさっきまで隣で一緒に走っていた私が化け物の前にいるのだから。
「×××逃げて。ここは私が何とかするから。」
そう×××を安心させるように私は言った。
「何言ってるのお姉ちゃん。一緒にあそこに帰るんじゃないの?約束したでしょ!!」
×××は泣きながら叫んでいた。
だが、私にはその言葉に返せる余裕はなかった。
右手に霊力を集中させ、雲のない空のような水色の弓をイメージする。
そして化け物に向かってはなった。
「ん…ここは?」
目を覚めるとそこは、木のいい香りが漂う見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
どこだろう?私は確か…
と、何でここにいるのか考えていたがすぐに止まった。なぜなら
記憶。思い出。そんな当たり前にあるはずの物が少女にはなかったからだ。
何で?どうして?私は誰?ここはどこ?何で分からないの?
そんな疑問に私は持てるすべての力を頭に集中させたその答えは出なかった。
私が困惑していたその時
ガチャっと目の前のドアが開いた。
「あら。目を覚ましたのね。良かったわ。」
ドアから出てきたのは、少しぷっくりした金髪の髪をした女性だった。
誰だろう?多分知らない人だ。
自分の記憶が分からないため知らない人とは限らないが、直感がそう感じていた。
でもどうしよう。この部屋に来たということは私をここに連れてきたのはこの人なんだよね。
もし、悪い人だったらどうしよう。
そう私が考えていると。
「ふふふ、いきなり知らない人が来てごめんなさいね。あなた森の中で倒れていて、ここに運んできて一週間も眠っていたもんだから心配でね。」
「えっ」
どうやら倒れていた所を運んできてもらったようだ。
心配もしてくれてたらしいからこの人は悪い人ではなさそう。
でもどう言うことだろう?一週間も眠ってたの私。
てか、森の中で倒れてたんだ。
日向ぼっこでもしてたのかな?
「まずは私ね。私の名前はリーブよ。次はあなた、名前は何て言うの?」
どうやらこの人はリーブさんって言うらしい。
そういえばさっきまではあまり気にしてなかったけど、リーブさんからいい匂いがしてくる。
ってそんな事気にしてる暇じゃない。
ど、どうしよう?
私は今何も分かんないし、記憶がありませんって言ったら変に思われないかな?
「そ、その…」
「もしかして、分からないの?」
「えっと、すみません。」
私が正直に言おうか迷っていたら、リーブさんから聞いてきた。
もちろん他に選択肢はないので正直に言うことにした。
「そう。記憶がないのは辛いわね。」
「い、いえ。それより私はどうしてここに?」
記憶がないのは不安で、とても辛い。
でも、今そんな事を気にしてても仕方ない。いつか思い出すかもしれないしね。
そういえば私は倒れていたらしいけど、どんな感じだったんだろう?
リーブさんに聞いてみよう。
「あ、あの私が倒れていた時ってどんな感じだったんですか?」
「あぁそうね。その事だったらあの子に聞きましょう。」
そういって彼女は部屋を出て行った。
あの子?誰だろう?
私を連れてきてくれた人かな。
どんな人だろうと想像していると
ガチャっとドアが開き、リーブさんと
そして、彼女と同じ金髪をした少年が入ってきた。
これが私とレイとの最初の出会い。
魔王の復活まであと・・・364日