伝承と予言
ここは、世界で一番の王国『エルカ王国』
そこの中心にある『エルカ城』その王座の間では王様と騎士達
そして、一人の少女がいた。
「王様。予言者をつれて参りました。」
「うむ。ご苦労であった。」
王様は彼女を連れてきた騎士を下げ、予言者と話し出した。
「さて予言者シャールよ、無意味な戦争、突然の災害それを防いでこれたのはお前のお陰だ。感謝する。」
「感謝などとんでもありません。私はたまたま予言をしただけであります。」
そんなシャールの謙虚な様子に王様は笑った。
「ふっ…たまたまだとしてもお前はこの国の、それより多くの命を救ったのだ。本当に感謝している。」
「そんな、感謝なんて本当に…」
王様のその言葉に両手を前に出して慌てていたが、預言者といえど少女。ましてや国の王様に褒められてシャールの顔は嬉しそうだった。
「さて、本題に入る。今回何を見た。戦争か災害か?」
シャールが照れているのもつかの間、王様の顔が真剣な表情になり、シャールに聞いた。
「いえ。今回は戦争でも災害でもありません。」
「なに?ではなんだと言うのだ。」
王様はてっきり戦争が起こるとか、災害が起きるとかだと思っていたので、そのどちらでもないと言われて頭の上にハテナマークを浮かべていた。
しかし、シャールの次の言葉ですぐに真剣な表情になった。
「1年後、魔王が復活します。」
この国にはある1つの伝承があった。
遠い昔、世界は魔王により闇に覆われていた。
魔王の手下である魔物達により、人々はどんどん数を減らしていき絶望の中にあった。
だがある日、光輝く剣を持つ青年が表れた。
彼はその剣で多くの魔物を倒し、人々に希望を与えていった。
しかし、魔王の力は青年を越え、青年を窮地に追い込んだ。
その時、青年の前に一人の少女が巨大な樹から突然現れ、青年に力を与えた。
そしてついに、青年は少女と協力し魔王を討ち果たした。
それから人々は、青年の事を『勇者』と呼び、
巨大な樹を『世界樹』、少女の事を『世界樹の精霊』と呼んだ。
そしてこの国、エルカ王国の紋章は勇者の右手にあった痣をもとに作られた。
と、この国に伝われていた。
そして伝承の最後には
もしも、また世界が闇に覆われることがあっても、必ず勇者と同じ痣を持った者が現れ精霊と協力し、闇を払ってくれるだろう。
そんな作り話のような伝承の登場人物である魔王が復活すると言われても普通は笑われるだけだ。
しかし、今のこの世界はそれを冗談だと笑えなくなっていた。
なぜなら数年前から突如として人々を襲う化け物が現れ、伝承の魔物かもしれないと言われているからである。
「それは本当の事なのか?」
「はい。一年後……魔王が復活します。」
シャールの予言は今まで外れたことがないが、突然のことなので王様も冗談なのではと思ってしまった。
が、シャールの真剣な眼差しをみて、本当の事だと確信した。
「それは防ぐ事はできるのか?」
「いえ。必ず復活すると思われます。」
「しかし、この世界のどこかにいる勇者なら復活を止められるかもしれません。」
「勇者の居場所はもう分かっているのか?」
「すみませんが、勇者の居場所までは…次に予言できるのは1か月後なので力が足りず申し訳ありません。」
1か月後それは魔王の復活と重なる。
予言者は自分の中にある魔力を使い、未来を予言する者。
しかしその魔力の消費は激しく、1年に1回の割合なのである。
その事を知っている王様は王座から立ち上がり、シャールの肩を叩き
「気にするな、あとは私達が勇者を探す。」
「総員直ちにこの世界のどこかにいる勇者を探せ!!」
王様のその声とともに騎士達は動き始め、勇者を探すべく準備をし始めた。
魔王の復活まであと・・・365日