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飛んで火にいる夏の虫  作者: 道端道草
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第一章 夏(3)

次の日、朝からうだるような暑さの中、俺達三人はクーラーの効いたバスに揺られ、海の家に向かった。


茂田さんは既に準備に入っていて、相変わらずアロハシャツにショートパンツで頭にはサングラスを掛けていた。


俺は黒のTシャツにアジアン風の柄が入ったショートパンツ、サンダルを履いて頭にタオル巻き、腰には膝下まである黒のエプロンを巻いた。


早速茂田さんの指示で俺達も準備に取り掛かった。


外にパラソルを挿し、机や椅子を並べたり、店の中の床を掃いたりした。午前中はお客さんが全然来なかった。


俺は掃除が終わってからというものやることが無く、厨房の中でカウンターに肘を付き、外で遊ぶ女性をしばらく眺めていた。


「本当に忙しくなるんですか?」


俺はあまりの暇さに溜め息を吐いた。


「まぁ見てな。今からが本番だから。今はあのナイスバディの姉ちゃん達見て力貯めとけ」


茂田さんはそう言うと、頭に掛けたていたサングラスを目に掛けなおした。


この行動は恐らく、外で遊ぶ女性に視線を悟られない様にしているに違いない。


「茂田さん、そのサングラス貸してください」


「馬鹿野郎! お前には百年早いわ!」


「ちっ!」心の中で舌打ちをし、再び向こう側で遊ぶ女の子に視線を戻した。


女性達は砂浜でビーチバレーをしていて、俺はその中でもひと際スタイルの良い自分好みの女性に視点を合わせた。


走ったり、跳んだりする度、揺れる胸やお尻を見て茂田さんが隣で興奮しているのが分かる。


「癒されるだろ?」「来て良かっただろ?」と俺に執拗に聞いてきた。


俺は何も言わずに頷くと茂田さんは満足そうに俺の背中をポンッと叩いた。


しばらくすると俺がずっと見ていたスタイルの良い女性がこちらに向かって歩いて来る。


「ずっとこっち見てるけど暇なの?」


その女性は、茶髪でフワっと緩やかなパーマの掛かったロングの髪の毛を前から後ろにかき分けながら、ピンクのビキニ姿で俺の前のカウンターに座りニコッと話し掛けてくる。


白く透き通った肌、スラっとした足、胸の間に出来た谷間、俺は目のやり場に困った。


「あっ、えっと、い、今は暇ですけど、もうすぐ忙しくなる予定です」


俺は自分の意に反して、大きくなろうとするあそこを抑えるのに必死で、言葉を詰まらせた。


「そうなんだ。じゃあ暇な君にいちごのかき氷作ってもらおうかな」


その女性は微笑みながら、カウンターに両肘を付き両の掌に自分の顎を置いてこちらを見ている。


俺は早速、注文を頂いたかき氷を作り始める。


氷をセットしカップを用意、機械の電源を入れると氷が勢いよく回り削り取られていく。


俺はそれをこぼさない様にカップの面まで入れ一度止めた後、シロップをかけた。


もう一度電源を入れその上に溢れるように氷を積み上げ、最後にシロップをかけスプーン付きのストローを挿し女性に渡した。


この作業は茂田さんに教わって何度も練習していた俺は、手際よく完成させる事が出来た。


その女性は拍手をしながら受け取ると冷たーい、といいながら口の中にかき氷を運んでいた。


「君、高校生?」


「はい。そうです」


その女性はかき氷を食べ終えるまで、俺にずっと話し掛けてきた。


名前は?どこの高校?彼女はいるの?何でバイトしてるの?とか終始質問攻めだった。


俺は質問される度同じ質問をその女性にした。女性の名前は麗香さん。


近くの学校に通う大学生で、今日は友達と遊びにきたようだ。俺の通っている高校の卒業生でもあり、話は盛り上がった。


十五分ぐらい話しただろうか、時間はもうすぐお昼を迎えようとしていた。


「ご馳走様。また遊びに来るから今度も相手してね」


麗香さんは立ち上がり、俺にそう言うと元いた場所に戻って行った。


俺はペコっと頭を下げると横から俺のお尻を目がけて鋭い蹴りが飛んできた。


「お前何鼻の下伸ばしてんだよ」


茂田さんが呪い殺すような低い声で言った。


俺は茂田さんの言葉に耳を向けず去って行く麗香さんの後ろ姿を眺めていた。

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