第12話 悪い予感・・・
あんな事件があった翌日だというのに、神さまは何事も無かったかのように凛としている。
しかし、今日は1度も目が合わないな・・・
昨日、思わず抱きしめてしまったけれど、嫌われちゃったのかな・・・だとしたらかなりショック・・・
「からたち祭まで残すところあと1ヵ月です。それでは、各自計画に沿って宜しくお願いします。何か問題があればすぐに報告して下さい。では、解散。」
神さまの言葉に実行委員たちがバラバラと散り始める。
その中で1人、教室の隅で話す委員長と神さまをじっと見つめる姿が目に留まった。
その様子は特にどうってこともなかったが、何故だか悪い予感がした・・・
「真、あの子って・・・」
「ああ、委員長に気があるって噂の葉山可南子だろ。確か、智香と同じクラスだぞ。まさか、お前ああいうのタイプ?」
「・・・違うよ。ま、可愛い子だとは思うけどね。」
「確かに。でも、ありゃあ自分が可愛いって分かってるタイプだな。そういえば相川も同じクラスで、あいつら仲悪いって智香が言ってたな。」
「相川・・・似たタイプだから、同属嫌悪?でも、相川は悪気が無いけど、葉山はちょっと毒がありそう・・・」
「そうかも。お前の見る目、結構当たるからなぁ〜。」
もう1度葉山に視線を戻すと、目が合った。葉山は小首をかしげ、ニコッと笑うと頭を下げて教室から出て行った。
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「おう!お帰り〜諒ちん!」
ダイニングで親父の作った飯を頬張りながら俺を出迎えたのは、従妹の矢野 智香。
日に焼けた顔にショートカットが良く似合う、小鹿みたいな女の子だ。
「智香、お前陸上の合宿終わったの?」
「うん。今日、戻ってきた。オジジの飯食いたくて、家に帰る前に寄り道。」
智香は陸上部に所属していて、中学の頃から県内でもトップクラスの短距離走者だったため、高校に入っても期待の大型新人として大活躍中だ。
昔からしょっちゅう互いの家を行ったり来たりしていたので、俺たちは兄弟のように育った。
智香は親父の作る料理を気に入っているらしく、こうやってちょくちょく飯を食いにやって来る。
「智香、お前のクラスに葉山可南子って子いる?」
「ああ、いるよ。ブリブリっとした可愛い子ね。私はどうも合わないけど。」
どうみても、合いそうに無いよな・・・
「バスケ部のマネージャーしてる相川桜と仲悪いって?」
「そうみたいね。タイプ似てるからな〜あの2人。男好きするタイプっていうの?2人とも自分が可愛いってこと知ってるしね。ただ、桜っちは可南子と比べると、まだまだ底が浅い感じはするよね。ま、そこが桜っちの可愛いところだけど。桜っちが王子様を待っているお姫さまだとすると、可南子は王子様を罠にはめる魔性の女・・・ん〜我ながら上手いこと言うな。」
自画自賛しながらパエリヤをつつく智香。
「お前、相川とは仲いいんだな。意外。」
「桜っちは諒ちん狙いだから、私から色々情報仕入れたくてくっついてくるんだよ。」
「俺狙い?!何で俺?真じゃないの?」
「ん〜何でも真兄は手強そうだから、扱いやすそうな諒ちんに絞るって。分かってないよね〜本当にひねくれてんのは諒ちんなのに・・・イテっ!!オジジ!息子の躾ちゃんとしろ!女の子殴ったぞ、今!」
「ああ、ごめんね〜智ちゃん。僕が片親で躾が行き届かないから、諒くんたらひねくれちゃって・・・ああ、天国の真子さんに顔向け出来ない・・・シクシク・・・。」
「ただいま〜って何またホームコメディーやってんの?」
親父の大げさな1人芝居の最中で、真くん帰宅。ナイスタイミング!
「真兄、お帰り!今、諒ちんに殴られたんだよ!それで、オジジの躾について言及してた訳。」
「またお前諒のことからかったんだろ。諒は俺のおもちゃなんだから、横取りすんなよ。」
「独り占めなんてズルーい!諒ちんは智香のペットだぞ!」
おもちゃだのペットだの、俺の扱いって一体何なんだ・・・
「今、諒は恋の病にかかりかけてるから、お手柔らかにしてやれ。」
「ええーーーーーーーーっ!」
「何ですってーーーーーーーっ!」
智香と親父の絶叫・・・何余計なこと言いやがるんだ、真くんよ。
「誰?誰?諒ちんの好きな人って誰????」
「大変だーーー!真子さんに報告しなきゃ!!!」
2人の取調べをやり過ごすのは、至難の業だ・・・
恨むよ・・・真くん・・・目が合うと、真はペロっと舌を出した。
色々と忙しくて(いいわけ・・・)更新が滞ってしまいました・・・スイマセン。
また、ボチボチ更新します・・・スイマセン。