裸の瞬間移動装置
「さぁ、イッツショータイム!」
手品師のように叫びその男は自らつけていた仮面をはがした。
その姿に観客は息をのむ。
顔がなかったからだ。
そして、指を一回パッチンとならすと、服を残して人は消えた。
「お疲れ様です、博士」
遠く離れた家。
そこはマンションの一室であり、普段はただ一人だけが暮らしている。
周りは静かで、誰かがいるという気配はない。
「ああ、ありがとう」
その一人きりで暮らしている女性は、博士と呼ばれた先ほどの手品師のような人物へとタオルを渡す。
服は何も身にまとっていないが、さも当然のように歩いている。
「今日はどうでしたか」
「ああ、上々だ」
博士は、タンスに丁寧にたたまれているパンツや上着、それにズボンを取り出す。
着ながらも、今回の実験についてを振り返った。
瞬間移動装置は、博士が生み出した全ての発明品の中でも最高傑作だ。
その実験のため、手品師ということにして移動実験を繰り返しているわけだ。
但し、問題なのは服を持っていくことができない、あるいは部分的にしか持っていけないということだ。
これさえどうにかなれば、実機として発表することができるだろう。
そう考えて、博士は実験を続けている。
何十枚と言う服を警察から送ってもらいながら。