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死
回転するモノトーンの世界。極限まで引き伸ばされた意識の中で、バイクが火花を上げながらアスファルトを滑って行く。
自分が地を転がっているという事実を無意識に理解する。極限の瞬間。生きるために必要な何かをするための時間。だが、何もできない。
意識だけが極端に加速されているにも関わらず、身体は反応を拒むかのように重い。
回転する景色がバイクを視界の端に追いやり、反対側の光景を映し出す。
地を滑る様に迫る黒い物体。目を見開き、それが何であるのか理解しようと試みる。そしてそれがつい先まで、自分の直ぐ後ろを走っていたトラックの車輪である事に気付く。
――死んだな......俺......
そんな呟きが、頭の中に響いた。
次の瞬間圧縮された時間が弾けるように動き出す。地を引き裂くかの如く響き渡るブレーキ音。視界いっぱいに広がる錆だらけの車体。
全てが一瞬だった。
薄れゆく意識の中で、自分の血がアスファルトに広がって行く。
――沙紀...... 俺は君と同じ場所に行けるかな?......